外国籍社員の確定申告・年末調整|4つの税務リスク【①】

HR外国籍税務シリーズ

外国籍社員の確定申告、「年末調整で終わり」と思っていませんか?

年末調整だけでは対応できないケースは想像以上に多く、放置すると企業側にもリスクが生じます。
HR担当者が社内で一次判断するためのチェックリスト付きで、ポイントをわかりやすく解説します。

01「年末調整はやっている」——でも、こんな不安はありませんか?

RISK 01
居住者区分の判定ミス
非居住者を居住者扱いで源泉徴収すると20.42%の差額追徴。住所判定は滞在実態で確認。
RISK 02
源泉徴収率の取り違え
非居住者の給与は所得税20.42%+復興特別税。年末調整は不要。
RISK 03
年末調整漏れ・誤適用
居住者でも主たる給与かつ年収2,000万円以下の要件あり。海外給与の合算も忘れずに。

外国籍社員が増えるにつれて、以下のような状況が慢性化している企業は少なくありません。

「年末調整をしたから大丈夫……なはず」年末調整は日本法人の給与所得だけを精算する仕組みです。海外親会社からの報酬・RSU・非永住者への送金課税はその範囲外で、気づかないまま放置されているケースがあります。 「RSUがあるらしいけど、処理が正しいか確認できていない」海外本社から付与されるRSU・ストックオプションは、権利確定のタイミングで日本でも課税対象となります。源泉徴収が必要なのに「たぶん本人が申告するはず」で済ませているケースも見られます。 「帰任・退職時に何が必要か、毎回調べ直している」年の途中での出国・帰任には「準確定申告」「住民税一括徴収」「納税管理人の選任」など複数の手続きが絡みます。標準フローがないまま対応していると、見落としが生じやすくなります。 「"Do I need to file a tax return?"——英語で答えられない」外国籍社員本人から確定申告の要否を聞かれても、担当者がその場で答えられない。「税理士に聞いて」と言いたいが、社内に窓口がない。

こうした状況が続くほど、リスクは静かに積み上がります。逆にいえば、対象者ごとに要否を一度整理すれば、これらは構造的に対処できます。

02年末調整では終わらない4つの代表パターン

以下のいずれかに該当する外国籍社員は、年末調整とは別に確定申告が必要になります。複数パターンが重なるケースも珍しくありません。

海外親会社から報酬・RSUを受け取っている

海外グループ会社から直接報酬が支払われる場合、日本の給与明細に載らないため年末調整では処理されません。RSU・ストックオプションも同様で、権利確定・行使・売却のタイミングで課税が生じます。
→ タックス・イコライゼーション完全解説はこちら

非永住者に該当し、海外所得を日本に送金している

日本国籍を持たず過去10年間で日本在住5年以下の「非永住者」は、国外源泉所得のうち日本に送金した分が課税対象です。クレジットカードの海外口座引き落としも「送金」と見なされるケースがあり、注意が必要です。

年の途中で帰任・出国した(予定がある)

年の途中で出国し非居住者となる場合、出国前に「準確定申告」が必要です。帰任時は住民税の一括徴収・脱退一時金の手続きも絡みます。
→ 帰任・退職税務完全ガイドはこちら

給与年収が2,000万円超、または2か所以上から給与を受けている

海外親会社報酬がある社員は「2か所以上から給与」に該当します。年末調整を行っても確定申告が別途必要です。高額報酬の外国籍役員に特に多いパターンです。

03年末調整で完結するのは、条件がすべて揃った場合のみ

以下の全条件を満たす場合のみ、年末調整で所得税の精算が完了します。

給与収入が日本法人のみ

海外グループ会社・海外本社などからの直接報酬がない。

給与年収が2,000万円以下

年収2,000万円超の場合は年末調整後も確定申告が必要。

株式報酬・海外所得がない

RSU・ストックオプションの付与がなく、海外で発生した所得がない。

年の途中での出入国がない

当年中に出国・帰任・海外転出がなく、1年を通じて居住者である。

⚠️ 「今年は不要だった」社員が来年も不要とは限りません

帰任・RSU付与・出向先の変更など、人事イベントが生じるたびに要件が変わります。毎年確認するプロセスを社内に設けることが重要です。

04対象社員ごとに確認——1つでも当てはまったら専門家へ

外国籍社員の確定申告要否を社内で一次判断するためのチェックリストです。以下の項目に1つでも当てはまる社員は、税務専門家への確認をお勧めします。

海外親会社・グループ会社からの報酬がある(または可能性がある)

日本の給与明細に載らない報酬は年末調整の対象外です。

RSU・ストックオプション等の株式報酬が付与されている

権利確定・行使・売却のタイミングで課税が生じます。

日本在住10年以内の非永住者に該当する

海外送金がある場合、国外所得の一部が課税対象になります。

当年中に出国・帰任・海外転出の予定がある(あった)

準確定申告・住民税一括徴収・納税管理人の選任が必要になります。

副業・海外不動産など給与以外の所得がある、または給与年収が2,000万円超

いずれの場合も確定申告が必要です。

05「本人が申告すればいい」では済まない3つのリスク

源泉徴収義務は会社にあります。放置により以下のリスクが企業側に生じます。

リスクの種類放置した場合早期対処した場合
ビザ更新への影響更新審査で納税状況を確認される納税記録が整い審査がスムーズ
準泉徴収漏れの指摘加算税・延滞税が課される可能性適切な源泉処理で税務調査リスク低減
退職・帰任時のトラブル精算が遅延・追加費用が発生事前対処で退職精算がスムーズ

06外注で何が解消されるか

外国籍社員が5名以上、またはRSU・海外報酬がある社員がいる場合、専門家への委託が合理的なケースが多くあります。

HR担当者が楽になること

  • 確定申告要否の一次判断を専門家に委ねられる
  • 英語での本人説明(Tax Briefing)を代行してもらえる
  • 帰任・退職時の手続きリストを毎回調べずに済む
  • 「たぶん合っているはず」という不安がなくなる

会社として守れるもの

  • 源泉処理の誤りによる加算税・延滞税リスクを低減
  • 外国籍社員のビザ更新をスムーズに維持できる
  • 税務調査が入った際に根拠を説明できる体制になる
  • 属人化を排除し担当者交代時のリスクを防ぐ

07まず現状を話すだけでOK——3ステップで完結します

1

初回オンライン相談(30〜60分)

外国籍社員の人数・国籍・RSU付与の有無・帰任予定などをヒアリングします。その場で、確定申告が必要な社員の有無と優先すべき対応をお伝えします。

2

現状診断・対応提案

必要に応じて源泉徴収票・給与計算書等を確認し、リスク箇所と対応の優先順位をまとめた診断レポートをご提出します。

3
申告代行・アドバイザリー

確定申告代行 or 社内体制整備

個別申告代行から、英語によるTax Briefing・社内チェックリストの整備まで、御社のフェーズに合わせたサービスを提供します。

08HR担当者からよく聞かれること

社内に外国籍社員が数名しかいないのですが、相談できますか?+
確定申告の代行だけでなく、HR向けの説明資料も作ってもらえますか?+
はい、対応可能です。社内での説明資料・チェックリストの整備や、外国籍社員本人への英語による Tax Briefing も提供しています。
すでに他の税理士に依頼していますが、並行して相談できますか?+
はい、可能です。申告代行は既存の税理士が担当しながら、要否判定や社内体制の整備のみご依頼いただくケースも多くあります。
RSUの課税処理について、会社側でやるべきことを教えてもらえますか?+
はい。RSUは権利確定時に給与として源泉徴収が必要なケースがほとんどです。付与条件・ベスティングスケジュール・居住状況を確認した上で、適切な源泉処理と申告対応をご提案します。
山口 淳也
この記事の監修

公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表

日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。