外国人駐在員の帰任・退職税務ガイド【2026年版】
外国人駐在員の帰任・退職税務ガイド【2026年版】
外国人駐在員の帰任・退職時の税務手続きを HR担当者向けに体系的に解説。準確定申告・住民税精算・社会保険・脱退一時金まで網羅。
窓口対応だけでなく実務作業まで、BIG4出身の経験豊富な税理士が直接担当。ヒアリング〜書類作成〜e-Tax申告〜英語でのやり取りまで、まるごとお引き受けします。人事のご負担を最小限に。
外国籍従業員の確定申告 代行サービスを見る ▶01外国人駐在員の帰任・退職税務完全ガイド【2026年版】
駐在員が帰任・退職する際の所得税・住民税・社会保険・退職金課税を網羅的に解説。HR担当者必読のガイドです。
02外国人駐在員の「帰任・退職」税務リスクと手続き完全マニュアル
法的境界線とリスク対策を完全網羅
「帰国した元社員の住民税の督促状が会社に届いた」
「善意で納税管理人を引き受けたら、税務署から何度も電話がかかってきて業務に支障が出た」
外国人駐在員(Expat)の受け入れ時以上に、トラブルが頻発するのが「帰任・帰国時」です。日本を離れる社員にとって、複雑な日本の税制は理解不能であり、会社任せになりがちです。しかし、会社がどこまで面倒を見るべきか、その線引きを誤ると、企業側に金銭的・事務的なリスクが跳ね返ってきます。
本記事では、国際税務の専門家である税理士の視点から、「絶対に会社がやるべき義務」と「外部の専門家へ委任すべき手続き」を明確に区分し解説します。
03外国人駐在員の税務、赴任〜帰任の全体像
外国籍の駐在員を日本に受け入れる場合、税務は「入社手続き」で終わりません。入国してから帰任するまで、フェーズごとに会社が担う義務と、本人が行う手続きが切り替わっていきます。大きな流れは次の4段階です。
本人が行う確定申告の詳細は、あわせて外国人 確定申告 の完全ガイドをご覧ください。
04入国時:居住者か非居住者か──課税範囲が決まる
3つの区分をまず理解する
所得税法は個人を「居住者」と「非居住者」に分け、居住者はさらに「非永住者以外の居住者」と「非永住者」に分けます。合計3区分で、日本で課税される所得の範囲が変わります。
- 居住者:国内に「住所」を有する、または現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人(所法2・所令13〜15)。
- 非永住者:居住者のうち、日本国籍がなく、過去10年以内に国内に住所・居所を有していた期間の合計が5年以下の個人(所法2)。
- 非居住者:居住者以外の個人。
「住所の推定」で赴任初年度は居住者になりやすい
滞在日数が1年未満でも、「継続して1年以上国内に居住することを通常必要とする職業を有する場合」は国内に住所を有すると推定されます(所令14・15)。日本法人と1年以上の雇用・出向契約で赴任してくる駐在員は、入国日から居住者と扱われるのが一般的です。(出典:国税庁 No.2875 居住者と非居住者の区分)
課税範囲マトリクス(区分 × 所得の種類)
| A. 国内源泉所得 | B. 国外源泉所得のうち 国内払い又は国外からの送金 | C. 国外源泉所得のうち 上記B以外(国外払い・送金なし) | |
|---|---|---|---|
| ① 非永住者以外の居住者 (永住的な居住者) | 課税(全世界所得) | 課税 | 課税 |
| ② 非永住者 | 課税 | 課税 (国内払い又は送金分のみ) | 課税されない |
| ③ 非居住者 | 課税 (国内源泉所得のみ) | 課税されない | 課税されない |
※②非永住者は、国外所得のうち「日本で支払われた分」か「日本へ送金された分」だけが課税対象(送金課税の管理が論点)。出典:国税庁 No.2010/No.2873/No.2878
短期滞在者免税(183日ルール)は「租税条約による」もの
「183日以内なら日本で課税されない」は国内法で自動的に免税になるわけではなく、相手国との租税条約に短期滞在者免税の規定がある場合に、その要件を満たしたときに限り給与等が免除される制度です。一般的な3要件(滞在183日以下/報酬の負担者が日本の居住者でない/日本のPEが報酬を負担しない)はありますが、日数のカウント方法(暦年か継続12か月か)など条約ごとに異なるため、必ず該当条約を確認します。(出典:国税庁 質疑応答・No.2883)
租税条約の適用には「届出書」の提出が必要
短期滞在者免税や源泉税率の軽減・免除を受けるには、本人が「租税条約に関する届出書」を提出します。提出しなければ国内法どおりの源泉徴収になります。提出は支払者である会社を経由し、期限は最初にその所得の支払を受ける日の前日まで。実務上は人事・経理が窓口を担います。(出典:国税庁 No.2888 租税条約に関する届出書の提出)
05赴任中:会社が担う税務──源泉徴収・グロスアップ・TEQ
居住者への源泉徴収:日本人社員と同じ枠組み
駐在員が居住者に該当する場合、毎月の源泉徴収・年末調整は日本人社員と基本的に同じ枠組みです。国外に居住する親族を扶養に入れる場合は「国外居住親族」の書類要件(親族関係書類・送金関係書類)に留意します。
非居住者への源泉徴収:給与・報酬は原則20.42%
非居住者に該当する場合(短期出張者など)、国内源泉所得となる給与・報酬には原則20.42%(所得税20%+復興特別所得税)の税率で源泉徴収します。年末調整の対象外です。租税条約の短期滞在者免税が使える場合は、前述の届出で免除されます。(出典:国税庁 No.2884/No.2885)
グロスアップとタックスイコライゼーション(実務用語)
海外駐在の給与設計では、本人の税負担を会社が肩代わりする取り扱いがよく使われます(いずれも法令上の正式用語ではなく実務上の呼称)。
- グロスアップ:会社が本人の手取りを保証するため、負担する税金分も含めて課税所得を再計算する手法。会社が負担した税額自体が本人の給与とみなされ、そこにも課税が及ぶため手取りから逆算する循環計算が必要。
- タックスイコライゼーション:駐在で本人の税負担が本国勤務時と変わらないよう調整する仕組み。本国で負担したはずの仮定税(ハイポタックス)を本人給与から控除し、赴任先の実際の税は会社が負担する設計が一般的。
いずれも会社負担分は本人の給与所得を構成するのが原則で、源泉・年調・確定申告に影響します。設計・計算は個別性が高く、税理士の最終確認が必要です。
06帰国時、会社に課される3つの法的義務
まず、会社として避けて通れない法的義務を確認します。これらは社内で完結させる必要があります。
よくある誤解:納税管理人を選任する義務は、会社ではなく本人にあります。条文は「その者は、当該事項を処理させるため…納税管理人を定めなければならない」と書いており、義務を負うのは納税者本人です(国税通則法117条1項)。また同項は「住所及び居所を有せず、若しくは有しないこととなる場合」の両方を対象にしているため、出国後に届け出ることもできます(出国前に済ませたほうが実務は楽です)。納税管理人は本人の納税義務を引き継ぐ人ではなく、申告書の提出など手続を処理する人です。
ただし会社が無関係とは言い切れません。本人が届出をしないとき、税務署長は国内に住所または居所があって処理に便宜を有する者(国内便宜者)に、納税管理人になることを書面で求め、応じないときは特定納税管理人として指定できます(同条3項〜5項)。指定され得る者には「課税標準等の計算の基礎となるべき事実について契約により密接な関係を有する者」が含まれます。だからこそ、本人に出国前の届出を促すことが、会社を守る実務になります。
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出国時年末調整の実施
通常の年末調整とは異なり、1月1日から「出国日」までの給与等で計算します。社会保険料控除などは出国日までに支払った分のみが対象です。 -
住民税の一括徴収(1月~5月退職時は義務)
1月1日~4月30日の帰国者については、5月31日までに支払う給与または退職手当等から住民税の残額を一括徴収することが法律上の義務です(その給与等が残額を超える場合に限ります)。5月退職の場合は、その年度の残額が5月分のみとなるため通常の最終給与から徴収されます。6月1日~12月31日の帰国者は本人からの申出があったときに一括徴収となりますが、後日のトラブル(督促)を防ぐため、本人了承のもと一括徴収を強く推奨します。 -
社会保険の資格喪失手続き
帰国日の翌日(または退職日の翌日)に資格喪失届を提出します。同時に、厚生年金の加入期間が6ヶ月以上ある外国人社員には「脱退一時金」の制度を案内する義務(配慮義務)があります。
住民税は「1月1日に日本に住所があるか」で決まる
人事のご担当者から最も多くいただく質問が、「帰国したあとも住民税がかかるのか」「翌年はどうなるのか」です。答えは、住民税の賦課期日が1月1日である一点に尽きます。
- その年度の住民税は、当該年度の初日の属する年の1月1日(令和8年度なら2026年1月1日)時点で日本に住所がある人に課されます(地方税法第318条。道府県民税は同第39条。納税義務者は同第294条第1項第1号「市町村内に住所を有する個人」)。
- 課税の対象は、原則として前年1年間の所得です。したがって年内に出国し、翌年1月1日に日本に住所がなければ、その年の給与等の所得に対する住民税(翌年度分)は課されません。
- 逆に1月2日以降に出国した場合は、その年の1月1日に住所があったため前年分の所得に対する住民税が課されます。出国後に納税通知が発生するため、一括徴収か納税管理人の選任が必要になります。
- なお、日本に住所がなくなっても、1月1日時点で国内に事務所・事業所または家屋敷を有する場合は、その市町村で均等割が課されることがあります(地方税法第294条第1項第2号)。持ち家を残して帰任される場合は自治体にご確認ください。
★ 退職金は「前年の所得」ではありません。会社に特別徴収義務があります。
上の「前年1年間の所得」は給与等についての話です。退職手当等は例外で、所得税法199条により源泉徴収の対象となる退職手当等に係る所得割は、賦課期日の規定にかかわらず、支払を受けるべき日の属する年の1月1日現在の住所所在地で、その年中の退職所得の金額を課税標準として課税されます(地方税法第328条・第50条の2・第50条の3)。税率は市町村民税6%+道府県民税4%の合計10%(同第328条の3・第50条の4)。徴収は特別徴収によらなければならず(同第328条の4)、退職手当等の支払をする会社が支払の際に徴収し、徴収した月の翌月10日までに市町村へ納入する義務を負います(同第328条の5第2項)。
つまり「年内に出国するから住民税は関係ない」は、退職金には当てはまりません。給与からの一括徴収とは別枠の手続きです。
ただし、出国して非居住者となった後に支払われる退職金は、所得税法199条ではなく同212条による源泉徴収となるため、この住民税の分離課税は生じません。支払時点でご本人が居住者か非居住者かで扱いが分かれます。
実務上の落とし穴が、転出届です。住民基本台帳法の適用を受ける方については、その市区町村の住民基本台帳に記録されている者が「住所を有する個人」とされます(地方税法第294条第2項)。出国したにもかかわらず転出届が提出されていないと住民票が残り、1月1日時点の住民として課税されうるため、帰国前のチェックリストに転出届の提出を必ず入れてください。
もっとも、転出届を出せば必ず課税されないというわけではありません。住民基本台帳に記録されていない個人であっても、実際にその市町村内に住所を有する場合には、記録されているものとみなして課税することができます(同第294条第3項。この場合、住民票のある市町村は課税できません=同第4項)。最終的な判断基準は、生活の本拠が実際に国外へ移ったかどうかです。
一括徴収の要否は、事由が発生した月で変わります。特別徴収義務者である会社は、納税義務者がその会社から給与の支払を受けないこととなった場合(退職のほか、無給の休職・死亡など給与の支払が止まる場合を含みます)、原則としてその事由が発生した日の属する月の翌月以降の月割額を徴収・納入する義務を負いません。ただし次の場合は、その年の5月31日(=特別徴収期間の末日)までに支払われるべき給与または退職手当等で未徴収の月割額の全額を超えるものがあるときに限り、その全額を一括徴収し、納入する義務があります(地方税法第321条の5第2項)。
- 賦課年度の初日の属する年の6月1日〜12月31日に発生した場合——総務省令の定めるところにより(給与所得者異動届出書での意思表示)本人から申出があったときに一括徴収します。申出がなければ、残額はご本人が普通徴収で納めます。
- その翌年の1月1日〜4月30日に発生した場合——本人からの申出がなくても一括徴収が義務です。
なお、5月31日までにその給与または退職手当等の全部または一部が支払われないこととなったときは、同日までに実際に支払われた額から徴収することができる額を徴収します(同項括弧書き)。まったく徴収しなくてよいわけではありません。徴収した月割額は、徴収した月の翌月10日までに市町村へ納入します。また、一括徴収の有無にかかわらず給与所得者異動届出書の提出は必要です(同条第3項)。
一括徴収しきれない場合や、出国後に納税通知が発生する場合は、納税管理人の選任で受け取りと納付の窓口を国内に残します。誰を納税管理人にするかで会社側の負担が大きく変わるため、次のセクションで整理します。
▶ 一括徴収と普通徴収の切替、帰国後はいつから課されなくなるのか、納税管理人をいつ選任するかは、外国人社員が帰国・退職するときの住民税で退職月ごとに整理しています。
07「納税管理人」は誰がなるべき?人事担当者の悲劇
帰国後も日本で税務手続き(確定申告や納税)が必要な場合、「納税管理人」を選任して税務署へ届け出る必要があります。 よくある質問が「日本に残る同僚や、人事部の担当者が名前を貸してもいいですか」というものです。
🚫 人事担当者や友人が納税管理人になるリスク
- 税務調査の窓口になる:もし申告漏れがあった場合、税務署からの連絡は全て納税管理人に行きます。平日昼間に何度も対応を迫られます。
- 納税の立替リスク:本人が送金を忘れたり遅れたりした場合、納税管理人が一時的に立て替えざるを得ない状況になり、金銭トラブルに発展します。
- 還付金の管理責任:還付金を受け取る場合、納税管理人の口座に入金されます。それを海外送金する手間と手数料、着金確認の責任が発生します。
こうしたリスクを回避するため、大企業では「納税管理人は会社関係者ではなく、外部の税理士法人を指定する」というルールを設けるケースが増えています。
08確定申告が必要な5つのケース(義務と権利)
| ケース | 申告義務 or 還付の権利 | 期限 |
|---|---|---|
| 給与以外の所得が20万円超 | 義務:副業・投資・不動産収入など | 出国前 or 翌年3月15日(管理人経由) |
| 退職所得を一時金で受領 | 義務:退職所得申告書未提出時 | 退職翌年3月15日 |
| 非居住者期間に国内不動産収入 | 義務:20.42%源泉済でも申告で精算可 | 翌年3月15日 |
| 住宅ローン控除を受けていた | 権利:未控除分の還付申告 | 出国前申告で還付 |
| 医療費控除・寄附金控除等 | 権利:年内の支出分を清算 | 出国前 or 管理人経由 |
年末調整で終わらず、確定申告が必要になるのは以下のケースです。特に「義務」のケースを放置すると、無申告加算税などのペナルティ対象となります。
| 区分 | 具体的なケース | 重要度 |
|---|---|---|
| 申告義務あり (しないと脱税) |
給与収入が2,000万円を超える | ★★★★★ |
| 不動産所得がある (持ち家を賃貸に出して帰国する場合など) |
★★★★★ | |
| ストックオプション(SO)の行使 (日本勤務期間分は課税対象) |
★★★★☆ | |
| 申告推奨 (すると得する) |
脱退一時金の源泉税還付 (20.42%が戻ってくる) |
★★★★★ |
| 医療費控除・寄付金控除 (高額な医療費がかかった年など) |
★★★☆☆ |
▶ 健康保険・厚生年金の資格喪失届、任意継続の可否、帰国後の被扶養者の扱いは、帰国・退職時の社会保険の手続きにまとめています。
09【重要】脱退一時金の「還付」で社員の手取りを増やす
ここが、外部の専門家へ依頼する大きなメリットといえます。 帰国した外国人は、支払った厚生年金の一部を「脱退一時金」として受け取れますが、支給時に20.42%の所得税が源泉徴収(天引き)されてしまいます。
💰 確定申告(還付申告)により源泉徴収税額の還付が可能
この天引きされた税金は、税務署に「退職所得の確定申告」を行うことで、その多くを還付金として取り戻すことができます。 しかし、この手続きは「日本国内に居住する納税管理人」を通さなければ行えません。本人が海外から直接行うことは不可能です。
手取り額:約79万円(約20万円が税金で引かれる)
⇒ 納税管理人を通じて申告すれば、この約20万円が還付されます
会社として「専門家に納税管理人を依頼すれば、還付金手続きもセットで行われる」と案内することは、社員に対する手厚い福利厚生となります。
▶ 脱退一時金は請求できる期間と加入月数の数え方で受給額が変わります。脱退一時金の6ヶ月要件と2つの落とし穴もあわせてご確認ください。
10会社を守る!帰国後賞与・退職金の源泉徴収
| 支給時点・項目 | 居住者期間に発生 | 非居住者期間に発生 |
|---|---|---|
| 給与(出国前最終分) | 通常の源泉徴収(所得税表) | — |
| 帰国後の賞与 | 該当期間分は通常源泉 | 20.42%源泉分離(日本での勤務期間按分) |
| 退職一時金 | 退職所得申告書あり:分離課税優遇 退職所得申告書なし:20.42% 源泉(所法201条3項の20%+復興特別所得税) | 20.42% × 国内勤務期間按分 |
| ストックオプション・RSU | 給与所得として通常源泉 | 付与時〜vesting までの国内勤務期間で按分課税 |
経理・税務部が最も警戒すべき事項です。 帰国日以降に支払われる金銭は「非居住者に対する支払い」となり、国内の源泉徴収ルールとは全く異なるルールが適用されます。
① 帰国後に支払う賞与(ボーナス)
対象期間に日本勤務期間(居住者期間)が含まれている場合、その全額(または按分額)に対して一律20.42%の源泉徴収が必要です。
※通常の「賞与の源泉徴収税額表」は使いません。年末調整もしません。
② 退職金
非居住者になってから退職金を受け取る場合も、原則20.42%の課税です。ただし、「退職所得の選択課税」という制度を使えば、居住者と同様の有利な計算(退職所得控除の適用)を行い、税額を抑える(還付を受ける)ことが可能です。これにも確定申告が必要です。
▶ 最終給与を翌月に払う場合や月末退職の場合、源泉徴収の区分が変わります。退職時の給与計算——翌月払い・月末退職・非居住者源泉の実務で計算例を示しています。
112026年10月1日から在留手続の手数料が上がる
帰任と入れ替わりで後任を迎える会社にとって、2026年度でいちばん影響が大きい制度変更は税制ではなく在留手続の手数料です。出入国在留管理庁の公表によれば、2026年10月1日から改正入管法施行令(第25条第1項)が施行され、在留資格の変更・在留期間の更新の手数料が「許可される在留期間の長さ」に応じた額に変わり、永住許可の手数料も引き上げられます。ビザ費用を会社負担にしている場合は、帰任・再赴任のコスト試算を作り直す必要があります。
| 手続 | 改定前(〜2026年9月30日受付) | 改定後(2026年10月1日以後の申請) |
|---|---|---|
| 在留資格の変更 在留期間の更新 | 窓口 6,000円 オンライン 5,500円 | 許可される在留期間で変わります(窓口/オンライン) 3月以下 10,000/10,000円 3月超6月以下 18,000/15,000円 6月超1年未満 25,000/21,000円 1年 33,000/27,000円 1年超3年未満 48,000/42,000円 3年以上5年未満 64,000/56,000円 5年以上 75,000/65,000円 |
| 永住許可 | 窓口 10,000円 | 200,000円 |
金額は出入国在留管理庁のリーフレット(2026年9月発行・PDF)に掲載されているものです。経済的困難その他特別の理由がある場合の減額・免除の定めもあります(改正入管法施行令第25条第2項)。
人事が今やること
① 2026年内に更新期限が来る在留カードを洗い出し、9月30日までに申請できるものは前倒しする。② ビザ費用を会社負担にしている規程がある場合、上限額の見直しと予算の積み増しを検討する。③ 手数料は「許可された在留期間」で決まるため、3年・5年の許可が出た場合の金額も含めて社内説明を用意しておく。
主な根拠資料
- 居住者・非居住者の区分と課税範囲——所得税法 第2条・第7条・第161条(e-Gov法令検索)/所得税法施行令 第14条・第15条(住所の推定)(同)/No.2875 居住者と非居住者の区分(国税庁)/No.2873 非居住者等に対する課税のしくみ(同)/No.2878 国内源泉所得の範囲(同)
- 退職手当等の源泉徴収と非居住者の選択課税——所得税法 第201条第3項・第171条・第173条(e-Gov法令検索)——退職所得の受給に関する申告書を出していないときは支払額の20%(復興特別所得税を加えて20.42%)/No.2732 退職手当等に対する源泉徴収(国税庁)/No.1420 退職金を受け取ったとき(同)
- 国外転出時課税(出国税)の2要件——所得税法 第60条の2第5項(e-Gov法令検索)/所得税法施行令 第170条第3項第1号(同)——居住期間の計算から入管法別表第一の在留資格で在留していた期間を除く/No.1478 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例(国税庁)
- 租税条約の届出——No.2888 租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)(国税庁)
- 2026年10月1日からの在留許可手数料——令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について(出入国在留管理庁)/同 リーフレット(2026年9月発行・PDF)
本記事の条文番号・金額は2026年9月6日にe-Gov法令検索・国税庁・出入国在留管理庁の公表資料で確認しました。国外転出時課税の判定は在留資格の変遷によって結論が変わります。個別の判定は事実関係の確認が必要です。
12実務担当者のためのQ&A(銀行、引越し代など)
Q. 帰国する社員が保有する銀行口座はどうすればいいですか?
帰国後も日本の銀行口座を維持できる場合はありますが、多くの金融機関では非居住者の口座を制限・解約の対象とすることがあります。未払給与や還付金の受取、住民税の納付などが帰国後に残るケースが多いため、口座を残す場合は「非居住者口座」への切替の可否を各金融機関に確認し、あわせて納税管理人を選任して受取・納付を代行できる体制を整えておくと安全です。
Q. 「出国税(国外転出時課税)」の対象かどうかの判定基準は?
判定は2つの要件をどちらも満たすかで行います。①国外転出の時に有価証券等(未行使のストックオプションやRSUを含む場合があります)が1億円以上あること、②国外転出の日前10年以内に国内に住所・居所を有していた期間の合計が5年を超えることです(所得税法60条の2第5項)。どちらか一方でも外れれば対象になりません。
外国籍の駐在員にとって決定的なのは②です。この期間の計算からは、所得税法施行令170条3項1号により入管法別表第一の在留資格で在留していた期間が除かれます。「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「経営・管理」「高度専門職」などはすべて別表第一なので、就労系の在留資格だけで滞在してきた駐在員は、保有資産がいくらであっても原則として国外転出時課税の対象外です。
注意が要るのは、在留中に永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者(別表第二)へ在留資格を変更している場合で、その期間は5年のカウントに入ります。日本人配偶者がいる方、永住許可を取った方は個別に判定してください(制度の全体像は国税庁 No.1478)。
Q. 帰国後にストックオプションを行使した場合の税金は?
帰国後(非居住者期間)に行使した場合でも、権利付与から権利確定までの期間のうち「日本勤務期間」に対応する利益は、日本の国内源泉所得として課税されます。企業側には20.42%の源泉徴収義務が発生するケースが多く、計算が非常に複雑です。この計算および申告についても当法人にて代行可能です。
Q. 外国人駐在員が帰任(出国)するとき、確定申告は必要ですか?
年の途中で帰国・出国する場合、その年の1月1日から出国日までの所得について、原則として出国のときまでに確定申告(いわゆる準確定申告)を行うか、納税管理人を選任したうえで翌年の通常の申告期限までに申告します。給与以外の所得がある方、2か所以上から給与を受けている方、脱退一時金の還付を受ける方などは申告が必要です。手続きは複雑なため、出国前に納税管理人の選任まで含めて準備しておくことをおすすめします。
Q. 帰国した外国人社員は、日本の所得税の還付を受けられますか?
要件を満たせば還付を受けられます。代表例は、退職に伴う「脱退一時金」から源泉徴収された所得税です。脱退一時金の支払時には20.42%が源泉徴収されますが、納税管理人を選任して確定申告(還付申告)を行うことで、本来の税額との差額の還付を受けられる場合があります。また、年の途中で出国した年の給与についても、年間の所得に基づく再計算で還付が生じることがあります。いずれも納税管理人の選任が前提となる点にご注意ください。
関連シリーズ:海外在住家族の税務
海外在住の家族が直面する税務問題を、具体的な事例で解説しています。
▶ ①住民票を残したままのリスク
▶ ②出国税・相続税リスク
▶ ③不動産購入資金の贈与税
▶ ④低利貸付・共有名義・段階的贈与
▶ ⑤婚前契約と特有財産
- 出国予定の3ヶ月前に税務オンボーディング納税管理人選定/住民税徴収方法決定/確定申告必要性のチェック。早期着手で本人と会社のキャッシュフロー最適化。
- 退職金・賞与の源泉徴収を事前計算居住者期間と非居住者期間の按分根拠を勤務地ログで残す。退職所得申告書の提出を本人に促す。
- 脱退一時金の還付スキーム案内厚年加入6ヶ月以上の外国人は対象。納税管理人経由で20.42%還付を実現できる。
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▶ あわせて読みたい:出国時の年末調整を含め、外国人社員の年末調整の実務は令和8年分の改正を踏まえて別途まとめています。
▶ あわせて読みたい:帰任者が海外親会社の株式報酬を持っている場合の課税時期は外国親会社の株式報酬と確定申告、租税条約の限度税率と届出は租税条約早見表で確認できます。
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▶ 出国日までに何を終わらせるか、届出の期限と順序は納税管理人の届出と出国時の手続きで手順としてまとめています。
▶ 来日前・赴任前の段階で決めておくべき事項は赴任前に準備すべきことで解説しています。

公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表
日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。
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