RSU・株式報酬の課税と源泉徴収|HR担当者の実務ガイド【HR外国籍税務③】
RSU・株式報酬の課税と源泉徴収|HR担当者の実務ガイド【HR外国籍税務③】
外国籍社員のRSU・SOの課税と源泉徴収。海外親会社からの株式報酬の取扱いをHR実務向けに体系化。
01RSU・株式報酬とは何か(HR向け基礎知識)
RSU(Restricted Stock Units:制限付株式ユニット)は、海外グループ企業が従業員に将来の株式を約束する報酬制度です。外資系・グローバル企業において、特に外国籍社員やエグゼクティブへの報酬として広く使われています。
RSUとSO(ストックオプション)の違い
| 項目 | RSU | SO(ストックオプション) |
|---|---|---|
| 付与時点 | 株式を受け取る権利を付与 | 一定価格で購入できる権利を付与 |
| 課税タイミング | Vesting(権利確定)時 | 行使時 |
| 課税所得 | 給与所得(FMV) | 給与所得(FMV-行使価格) |
| HRの源泉徴収 | 必要(一定要件下) | 必要(一定要件下) |
日本法人のHR担当者が特に注意すべきは、「親会社が付与するから日本法人は無関係」という認識が誤りである点です。日本勤務中にベスティングした分については、日本法人に源泉徴収義務が生じる可能性があります。
02日本の課税タイミングと課税所得の計算方法
RSUの課税タイミングは、原則として「Vesting時(権利確定時)」です。この時点で株式の時価(FMV)に相当する金額が給与所得として課税されます。
課税所得の計算式
HRが現場で直面しやすい疑問
- Q. 今期の給与所得に含めるべきか? → Vesting日が属する月の給与に含めるのが原則。
- Q. FMVはどの時点の価格を用いるか? → Vesting日の終値を採用するのが一般的。
- Q. ドル建ての場合の換算レートは? → Vesting日のトップ(TTB or TTM)。
03按分計算シミュレーション:具体例で理解する
RSUの按分計算がどのように行われるか、具体的な数値例で確認しましょう。
ケース設定
- 付与日:2024年1月1日 / Vesting日:2026年12月31日(3年間クリフ、月次按分)
- Vesting株数:300株 / Vesting日のFMV:200ドル / レート:150円/ドル
- 勤務状況:付与日〜2025年12月31日は米国勤務、24ヶ月、以降は日本勤務、12ヶ月(合計36ヶ月)
計算ステップ
| ステップ | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| ① Vesting時課税所得(米ドル表示) | 300株 × 200ドル | 60,000ドル |
| ② 円換算 | 60,000ドル × 150円 | 9,000,000円 |
| ③ 日本勤務按分率 | 12ヶ月 ÷ 36ヶ月 | 33.33% |
| ④ 日本での課税対象額 | 9,000,000円 × 33.33% | 3,000,000円 |
ポイント: 付与日からVesting日までの期間のうち、日本で勤務した期間の割合に応じて日本の課税対象額を計算します。
04会社(HR)の源泉徴収義務はどこまでか
これが実務で最も混乱しやすいポイントです。RSUが親会社から直接付与・管理されている場合でも、日本法人に源泉徴収義務が発生する場合があります。
判断のフレームワーク
国税庁の通達(令和4年改正対応)における基本的な考え方は以下の通りです。
| ケース | チャージバック | 日本法人の源泉徴収 |
|---|---|---|
| A: 日本法人が親会社にRSU費用を負担 | あり | 必要(給与と同様に扱う) |
| B: 親会社が負担、チャージバックなし | なし | 原則不要(個人で確定申告) |
| C: Bだが日本法人が付与・管理に関与 | なし | 実質的に源泉徴収が必要なケースあり |
ポイント: 「親会社が付与だから関係ない」と考えるのは危険。チャージバックの有無と、日本法人の関与度を見て判断する必要があります。
05勤務期間按分:外国籍社員特有の論点
外国籍社員や赴任者の場合、付与日からVesting日までの期間に、日本と他国をめぐる勤務期間が含まれることがあります。
按分計算の原則
| 区分 | 日本での課税 |
|---|---|
| 付与~Vesting期間中の日本勤務期間分 | 全額課税対象 |
| 付与~Vesting期間中の外国勤務期間分 | 居住形態・送金課税の可否で課税判定 |
HRが把握しておくべき按分の落とし穴
- 勤務日数ベースか月数ベースかで金額が変わる → 社内で統一ルールを決めておく。
- 休職中の期間をどう扱うか → 原則として休職中も勤務期間に含める。
- 複数の外国を勤務したケース → 他国との二重課税リスクと外国税額控除の可否を確認。
06HR担当者のための実務チェックリスト
以下の項目で「NO・不明」が1つでもある場合、現在の対応に漏れがある可能性があります。
- 外国籍社員全員についてRSU・株式報酬の付与状況を把握している
- ベスティング予定日・株数・付与時の勤務国記録が管理できている
- 日本法人がチャージバックを受けているか否かを確認している
- 勤務期間按分の計算方法が社内で統一されている
- ベスティング時の課税所得をPayrollに連携するフローがある
- 年末調整でRSU分の所得を正しく組み込んでいる
- 売却時の譲渡所得について社員に確定申告が必要であることを案内している
- 他国での二重課税リスク(外国税額控除の適用可否)を確認している
07まとめ:HR担当者が今すぐ確認すべき3つのこと
- 付与情報の親会社連携 — Vesting日・行使日・FMV・株数を四半期で取得する仕組みを構築。
- 課税タイミングの見直し — Vesting時に給与課税として計上、RSU分を年末調整・源泉徴収に反映。
- 社員への情報提供 — RSUの課税ルールと確定申告の必要性を事前に社員にアナウンスしておく。

公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表
日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。


