RSU・株式報酬の課税と源泉徴収|按分計算・法定調書・チャージバック判定

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RSU・株式報酬の課税と源泉徴収|按分計算・法定調書・チャージバック判定

海外親会社から付与されるRSU・ストックオプションは、権利確定時に給与所得として課税され、チャージバック(費用負担)の有無で日本法人の源泉徴収義務が変わります。課税タイミング・勤務期間按分・法定調書・出国後の20.42%源泉まで、人事・給与担当者向けに体系的に解説します。

最終更新日:2026年9月10日

外国人 確定申告 の完全ガイドで、外国籍社員の確定申告の全体像(必要書類・やり方・居住者判定・期限)をまとめています。あわせてご覧ください。

01RSU・株式報酬とは何か(基礎と全体像)

RSU(Restricted Stock Units:制限付株式ユニット)は、主に海外親会社が日本法人の役員・従業員に対し、将来の自社株式の交付を約束する報酬制度です。外資系企業では外国籍社員・エグゼクティブ層の報酬の中核であり、給与計算・源泉徴収・法定調書のすべてに影響します。

実務の結論は次の3点に集約されます。(1)課税タイミングは権利確定(ベスティング)時、(2)日本法人の源泉徴収義務はチャージバック(費用負担)の有無で判定、(3)源泉徴収の要否にかかわらず法定調書「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」の提出義務がある——以下、この順に解説します。

RSUとSO(ストックオプション)の違い

項目 RSU SO(ストックオプション)
付与時点 株式を受け取る権利を付与 一定価格(行使価格)で株式を購入できる権利を付与
課税タイミング 権利確定(ベスティング)時 権利行使時(税制非適格の場合)
課税所得 給与所得(権利確定時の時価) 給与所得(行使時の時価-行使価格)
日本法人の源泉徴収 チャージバック等の状況により必要 同左

なお、租税特別措置法第29条の2の税制適格ストックオプションは行使時課税が繰り延べられますが、海外親会社が付与するSOは一般に要件を満たさないため、本記事では税制非適格を前提とします。

PSU・ESPP・SAR・RS——RSU以外の株式報酬の見分け方

外資系企業の報酬パッケージにはRSU以外の制度も含まれます。人事・経理がまず確認すべきは「株式で決済されるのか、現金で決済されるのか」と「いつ権利が確定するのか」の2点です。名称は各社で異なるため、判定は付与契約書(Grant Agreement)の決済条項で行います。

制度 内容 課税タイミング(日本の居住者の一般的な取扱い)
PSU(Performance Share Unit:業績連動型株式ユニット) 業績条件の達成を条件に株式を交付 業績条件を満たして権利が確定した時(RSUと同じ考え方)
ESPP(Employee Stock Purchase Plan:従業員株式購入制度) 給与天引き等により自社株を割引価格で購入 株式を取得した時。購入時の時価と払込額の差額が経済的利益となるのが一般的な取扱い
SAR(Stock Appreciation Right) 株価の上昇分を現金等で受け取る権利 権利行使時
ファントムストック 株式を交付せず株価相当額を現金で支給 支給額が確定した時
RS(Restricted Stock:譲渡制限付株式) 譲渡制限の付いた株式そのものを付与 譲渡制限が解除された時

いずれの制度でも、付与から権利確定までの期間のうち日本勤務に対応する部分が国内源泉所得になるという按分の考え方(セクション05)はRSUと共通です。一方で、SAR・ファントムストックのような現金決済型は日本法人が支給者となる例が多く、その場合はチャージバックの有無を論じるまでもなく通常の給与として源泉徴収の対象になります。上表はいずれも一般的な取扱いであり、制度の呼称と実際の決済方法が一致しない例もあるため、最終的な判定は契約書ベースで個別に行ってください。

株式報酬を持つ社員が日本を離れる場合は、出国税(国外転出時課税)との関係も論点になります。詳しくは「RSU・ストックオプションを持ったまま海外移住——出国税と株式報酬の税務」で解説しています。

日本法人の人事担当者がまず改めるべきは、「親会社が付与する報酬だから日本法人は無関係」という認識です。日本勤務期間中に権利確定した部分は日本で給与所得として課税され、状況によっては日本法人自身が源泉徴収義務と法定調書の提出義務を負います。

02日本の課税タイミングと課税所得の計算方法

RSUの課税タイミングは、原則として権利確定時です。付与(グラント)の時点では課税されず、権利確定により株式を取得した時点で、その時価(FMV:Fair Market Value)相当額が給与所得として課税されます。その後の値上がり益は売却時に譲渡所得として本人が申告する領域で、給与計算からは切り離します。

課税所得の計算式

課税所得 = 権利確定時の株式時価(FMV)× 権利確定株数 × 日本勤務期間の按分率

給与実務で必ず問われる3つの論点

  • どの年分・どの月に含めるか — 権利確定日の属する年分の給与所得です。源泉徴収が必要なケースでは、権利確定日の属する月の給与として税額計算に組み込みます。
  • FMVはどの時点の価格か — どの時点の価格をFMVとするかは、権利確定日の終値、前日終値など、プランごとに定められています。親会社のプラン規程で確認します。
  • 外貨建ての場合の換算レート — 外貨建取引の円換算は、その取引を計上すべき日の電信売買相場の仲値(TTM=対顧客直物電信売相場と対顧客直物電信買相場の仲値)によるのが原則です(所得税法第57条の3第1項、所得税基本通達57の3-2本文)。同通達ただし書が電信買相場等の選択を認めているのは不動産所得・事業所得・山林所得・雑所得の金額の計算に限られ、給与所得であるRSUには及びません。継続適用が問題になるのは、電信売買相場の仲値をどの金融機関のものによるかという場面です。原則としてその者の主たる取引金融機関のものによりますが、合理的なものを継続して使用している場合はこれが認められます(同通達(注)1)。参照する金融機関を社内で統一し、継続適用してください。
RSU課税のタイムライン:付与時は課税なし、権利確定(Vesting)時に給与所得として課税、売却時は値上がり益が譲渡所得として課税される
図:RSUの課税タイミング — 課税の主役はVesting時の給与所得課税

03按分計算シミュレーション:具体例で理解する

按分の原則(なぜ・どの期間で按分するのか)は後述「05 勤務期間按分の原則」で整理しますが、まず数値例で計算の流れを確認します。

ケース設定

  • 付与日:2024年1月1日 / 権利確定日:2026年12月31日(3年クリフ、月数按分)
  • 権利確定株数:300株 / 権利確定日のFMV:200ドル / 換算レート:150円/ドル(権利確定日のTTM)
  • 勤務状況:付与日から2025年12月31日までは米国勤務(24ヶ月)、2026年1月1日に来日し日本勤務(12ヶ月)。合計36ヶ月

計算ステップ

ステップ 計算 金額
① 権利確定時の経済的利益(米ドル) 300株 × 200ドル 60,000ドル
② 円換算 60,000ドル × 150円 9,000,000円
③ 日本勤務按分率 12ヶ月 ÷ 36ヶ月 33.33%
④ 日本勤務対応分(国内源泉所得) 9,000,000円 × 33.33% 3,000,000円

ポイント:付与日から権利確定日までの期間のうち、日本で勤務した期間の割合(本例では33.33%)に対応する部分が、日本での勤務に基因する給与所得(国内源泉所得)になります。

この計算例の前提:対象社員が「非永住者」であること

「日本での課税対象は300万円のみ」という結論が成り立つのは、対象社員が居住者のうち非永住者(日本国籍がなく、過去10年以内の国内居住期間の合計が5年以下の社員)であり、かつ国外源泉部分(600万円)について国内での支払・国内への送金がない場合です。次の2点に留意してください。

  • 非永住者でも送金課税に注意 — 国外源泉所得にあたる600万円部分も、権利確定した年に本人が国外から日本へ送金を行うと、その範囲で日本の課税対象に取り込まれます。居住形態の判定と送金課税の仕組みは非居住者・非永住者の課税ルールで詳説しています。
  • 非永住者以外の居住者なら全額課税 — 来日から5年超が経過している場合などは900万円全額が日本の課税対象となり、米国側の課税とは外国税額控除で二重課税を調整します。
RSU按分計算の数値例:Vesting期間36ヶ月のうち日本勤務12ヶ月分(33.33%)に相当する300万円が日本の課税対象となる計算の流れ
図:按分計算の流れ(本文ケースの数値例)

04日本法人の源泉徴収義務とチャージバック判定

結論:チャージバック(日本法人によるRSU費用の負担)は、日本法人が源泉徴収義務を負うかどうかを考える出発点になります。ただし、費用負担があるという一事で決まるものではありません。所得税法上、給与等の源泉徴収義務は「居住者に対し国内において給与等の支払をする者」に課されるところ(所得税法第183条)、海外親会社が国外で直接交付する経済的利益は、形式上は日本法人による「支払」に当たらないためです。

判定のフレームワーク

条文から直接導けるのは、所得税法第183条第1項が源泉徴収義務者を「居住者に対し国内において給与等の支払をする者」に限っていること、および非居住者について国外払いを国内払いとみなす同法第212条第2項のような規定が居住者には置かれていないことです。下表のケースBの結論は、この限りで条文に基づきます。

では、どういうときに日本法人が「支払をする者」になるのか。この点について国税庁が公表している質疑応答事例が一つあります。親会社が発行する新株予約権を子会社の役員に付与した事案で、国税庁は次のように述べています(質疑応答事例(源泉所得税)「役員退職金制度の廃止に伴い親会社から発行される新株予約権の課税関係」)。

照会の場合、子会社は、単に新株予約権の発行に係る費用負担をするだけでなく、役員に対してその退任後にストックオプションに係る経済的利益を与えることを目的として、新株予約権に関する報酬を株主総会で決議するとともに、債務引受契約等を通じ、A社から新株予約権が発行され、その権利行使によって株式が交付されることとなっています。これらのことからすると、新株予約権に係る経済的利益(権利行使益)については、子会社からその役員に与えられた給付に当たり、A社は子会社の指図に基づき株式の交付を行っているにすぎず、子会社が権利行使益(退職所得)について、その支払者として源泉徴収義務を負うことになります。

読み取るべきは「費用負担だけでは足りない」という書きぶりです。この事例で子会社が支払者と認定されたのは、費用負担に加えて、報酬としての株主総会決議があり、債務引受契約を通じて子会社の債務として組み立てられていたからです。したがって、チャージバックの有無は判定の中心ではあっても、それ単独で結論が決まる基準ではありません。グループ間契約の内容、付与の決議がどこでされたか、日本法人が付与・管理にどこまで関与しているかをあわせて見る必要があります。なお、この事例は外国親会社の事案ではなく、また対象は新株予約権です。外国親会社のRSUについて、チャージバックの有無で源泉徴収義務が決まるという一般的な基準を国税庁が示したものは、当方で検索した範囲では確認できませんでした。

ケース チャージバック 日本法人の源泉徴収
A: 日本法人が親会社にRSU費用を負担 あり 必要(実質的な給与の支払者として扱われる)
B: 親会社が全額負担、チャージバックなし なし 原則不要(本人が確定申告)
C: Bだが日本法人が付与・管理事務に実質的に関与 なし 支払者と同視され源泉徴収が必要と判断されるリスクあり(個別判定)

海外親会社から付与されたストックオプションの利益は給与所得に該当すると最高裁が判断しており(平成17年1月25日判決)、RSUの経済的利益も同様に給与所得として取り扱うのが確立した課税実務です。

チャージバックの有無は、経理部門および親会社とのグループ間費用負担契約(Intercompany Agreement)で確認します。チャージバックにより日本法人が費用負担する場合の会社側コスト設計(グロスアップ計算・手取保証)は税金を会社負担とする場合の実務で解説しています。また、ケースBで源泉徴収が不要な場合でも、RSU部分は年末調整で精算されない給与所得となるため、原則として本人による確定申告が必要です。社員への案内のしかたは年末調整と確定申告の関係を参照してください。

自社がケースA〜Cのいずれに該当し、対応に漏れがないかは、外国籍社員税務リスク診断ツール(無料・約3分)で確認できます。

日本法人の源泉徴収義務の判断フローチャート:チャージバックの有無と日本法人の関与度によりケースA(源泉徴収必要)・ケースB(原則不要)・ケースC(個別判定)に分岐する
図:日本法人の源泉徴収義務 判断フロー(チャージバック × 関与度)

05勤務期間按分の原則:外国籍社員特有の論点

給与所得の内外判定は役務提供地主義が原則です。勤務が行われた場所が日本国内なら国内源泉所得、国外なら国外源泉所得となり(所得税法第161条第1項第12号イ)、RSUのように複数年の勤務に対応する報酬は、付与日から権利確定日までの期間を勤務地ごとに按分します。

按分計算の原則

区分 日本での課税
付与~権利確定期間中の日本勤務期間分 国内源泉所得として課税対象
付与~権利確定期間中の国外勤務期間分 居住形態(非永住者・非居住者)と送金の有無で課税判定

按分の落とし穴

  • 日数ベースか月数ベースか — いずれも合理的であれば認められ得ますが金額が変わるため、社内で統一ルールを定め全グラントに継続適用します。
  • 休職・産休育休期間の扱い — 雇用関係が継続している限り原則として按分期間に含めます。プラン上、権利確定の進行が停止する設計もあるため規程を確認します。
  • 3ヶ国以上をまたぐケース — 国ごとに源泉地を切り分けたうえで、各国の課税・租税条約・外国税額控除の適用関係を確認します。
  • グラント単位の管理 — 按分率は付与単位で異なるため、同一社員でも付与年次ごとに別個に計算します。
  • 内国法人の役員は特例に注意 — 内国法人の役員として国外で行う勤務に基因する報酬は、国外勤務分も国内源泉所得とされる特例があります(所得税法第161条第1項第12号イのかっこ書き、所得税法施行令第285条第1項第1号)。ただし同号は「当該役員としての勤務を行う者が同時にその内国法人の使用人として常時勤務を行う場合の当該役員としての勤務を除く」としており、海外支店の長として常時その支店に勤務するような役員はこの特例の対象外です(所得税基本通達161-42)。この場合は使用人と同じく役務提供地で按分します。役員へのRSUは使用人と同じ按分計算ができない場合があるため、まずこの除外に当たるかを確認します。

06法定調書と源泉所得税の納付期限

源泉徴収の要否にかかわらず、人事・経理が落としてはならない手続が法定調書の提出です。

「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」

  • 提出義務者 — 外国親会社等の国内子会社・国内支店等。条文は「発行済株式(議決権のあるものに限る。)……の総数若しくは総額の百分の五十以上の数若しくは金額の株式(議決権のあるものに限る。)若しくは出資を直接若しくは間接に保有する関係その他の政令で定める関係にある内国法人」と定めています(所得税法第228条の3の2第1項)。持株比率は議決権のある株式で見る点に注意してください
  • 対象 — 役員・使用人が外国親会社等から受けたRSU・ストックオプション等の経済的利益(チャージバックの有無を問いません)
  • 提出期限経済的利益の供与等を受けた年の翌年3月31日までに所轄税務署へ提出(出国後の権利確定など、供与等を受けた者が非居住者である分は翌年4月30日)

この調書には経済的利益の供与等を受けた役員等の氏名等が記載され、個人単位で所轄税務署に提出されます(所得税法第228条の3の2)。つまり税務署は、海外株式報酬の供与状況を個人単位で把握できる状態にあります。「調書は提出しているのに社員には確定申告の案内をしていない」という状態は、お尋ね文書や税務調査の典型的な入口です。調書提出と社員への申告案内はセットで運用してください。

源泉徴収が必要な場合の納付期限:翌月10日

チャージバックあり等で源泉徴収が必要と判定された場合、経済的利益を供与した月(権利確定月)の翌月10日までに源泉所得税を納付します(所得税法第183条第1項)。なお出国後に非居住者となった社員に対する分で、株式の交付が国外で行われるものは、所得税法第212条第2項により納付期限が翌月末日となります(07を参照してください)。納付漏れには原則10%(税務署からの告知前に自主納付した場合は5%)の不納付加算税と延滞税が課されます。海外親会社からのデータ連携が給与計算の締めに間に合わないと納付遅延に直結するため、権利確定日から数営業日以内にデータを取得するフローを固定化してください。

07出国後に権利確定した場合:20.42%の源泉徴収

日本勤務を終えて帰任・転出した社員のRSUが、出国後(非居住者となった後)に権利確定するケースは実務で頻出します。結論:日本勤務期間に対応する按分額は国内源泉所得として日本で課税され、税率は20.42%(復興特別所得税を含む)です

  • 課税対象 — 付与から権利確定までの期間のうち日本勤務期間に対応する按分額が国内源泉所得となります(按分の考え方は05と同じです)。
  • 日本法人に源泉徴収義務がある場合 — チャージバックあり等で日本法人が支払者として扱われる場合、非居住者に対する給与として20.42%の税率で源泉徴収します。納付期限は、国内において支払をする場合は徴収した日の属する月の翌月10日ですが(所得税法第212条第1項)、その支払が国外において行われ、かつ支払をする者が国内に事務所等を有するときは「翌月末日まで」に読み替えられます(同条第2項)。国税庁の質疑応答事例「ストックオプションに係る国内源泉所得の範囲」も、米国法人の日本支店の事例について同項により「その翌月末日までに納付しなければなりません」としています。海外親会社が国外で株式を交付する形態は後者に当たるのが通常ですので、居住者分(06の翌月10日)と書き分けて管理してください。累進税率・年末調整の対象ではなく一律の分離課税です。
  • 源泉徴収されない場合 — 国外払いのみでチャージバックがない場合は、本人が所得税法第172条に基づく申告(いわゆる172条申告)により、翌年3月15日まで(同日前に国内に居所を有しないこととなる場合には、その有しないこととなる日まで)に20.42%相当の税額を自ら申告・納付する義務があります(所得税法第172条第1項・第3項)。出国後は本人任せになりやすく、申告漏れの多発地帯です。

また、出国時には住民税の精算、納税管理人の選任、国外転出時課税(出国税)の対象判定といった手続が別途発生します。国外転出時課税は、有価証券等の価額の合計額が1億円未満である居住者、または国外転出をする日前10年以内に国内に住所若しくは居所を有していた期間として政令で定める期間の合計が5年以下である居住者には適用されません(所得税法第60条の2第5項)。つまり「1億円以上」と「政令で定める期間の合計が5年超」の両方を満たす場合にだけ課税されます。しかもこの「政令で定める期間」からは出入国管理及び難民認定法別表第一の在留資格(技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、高度専門職、経営・管理、留学など)をもって在留していた期間が除かれるため(所得税法施行令第170条第3項第1号)、就労系の在留資格だけで在留してきた外国籍社員は、保有額にかかわらず原則として国外転出時課税の対象になりません。ただし別表第二(永住者・永住者の配偶者等・日本人の配偶者等・定住者)へ在留資格を変更した後の期間は除かれないため、その場合は対象になり得ます。なお未権利確定のRSUは一般に国外転出時課税の対象資産に含まれないと整理されていますが、権利確定済みで保有する株式は対象資産に含まれます。出国前後の手続の全体像は社員が日本を離れるときの税務手続で時系列に整理しています。

08実務チェックリスト

以下の項目で「NO・不明」が1つでもある場合、現在の対応に漏れがある可能性があります。

  • 外国籍社員を含む全社員のRSU・株式報酬の付与状況(付与日・株数・権利確定スケジュール)を一覧で把握している
  • 権利確定日・FMV・換算レート(TTM)のデータを親会社から定期的に取得するフローがある
  • 日本法人がチャージバックを受けているか、グループ間費用負担契約で確認している
  • 勤務期間按分の計算方法(日数か月数か)が社内で統一され、グラント単位で計算している
  • 源泉徴収が必要なケースで、権利確定月の翌月10日の納付に間に合う給与処理フローがある
  • 外国親会社等調書を翌年3月31日までに提出する体制がある
  • 源泉徴収されないRSUについて、社員に確定申告の必要性を毎年案内している
  • 出国者・帰任者の出国後の権利確定を追跡し、20.42%源泉または172条申告の要否を判定している
  • 非永住者の送金課税・外国税額控除など個人側の論点を専門家に確認できる窓口がある

09まとめ:今すぐ確認すべき3つのこと

RSU・株式報酬の実務は、「権利確定時に課税」「チャージバックで源泉判定」「調書は翌年3月31日・源泉納付は翌月10日」の3本柱で設計すれば大きく外しません。今すぐ着手すべきアクションは次の3つです。

  1. 付与情報の親会社連携 — 権利確定日・権利確定株数・FMV・チャージバックの有無を四半期ごとに取得する仕組みを構築する。
  2. 課税・源泉・調書の3点セット対応 — 権利確定時に給与所得として計上し、源泉徴収の要否を判定(必要なら翌月10日納付)、法定調書を翌年3月31日までに提出する。
  3. 社員への情報提供 — 課税ルールと確定申告の必要性を権利確定前にアナウンスし、出国予定者には出国後の課税関係(20.42%源泉・172条申告)まで説明する。

外国籍社員の税務全体の設計(給与計算・年末調整・確定申告・入出国対応)は外国籍社員の確定申告 完全ガイドで体系的に確認できます。

よくある質問

Q. RSU(譲渡制限付株式ユニット)はいつ課税されますか?

原則として権利確定(ベスティング)時に給与所得として課税されます。付与(グラント)時点では課税されず、権利確定により株式を取得した時点の時価(FMV)が課税所得になります。その後の値上がり益は、売却時に譲渡所得として本人が申告します。

Q. 海外親会社が付与したRSUでも、日本法人に源泉徴収義務がありますか?

チャージバック(日本法人によるRSU費用の負担)の有無で変わります。日本法人が費用を負担している場合は実質的な支払者として源泉徴収が必要となり、負担がなければ原則として不要で本人の確定申告に委ねられます。ただしチャージバックがなくても、日本法人が付与・管理事務に実質的に関与している場合は源泉徴収が必要と判断されるリスクがあり、個別の判定が必要です。

Q. 駐在期間の途中で来日した社員のRSUは、どのように按分計算しますか?

付与日から権利確定日までの期間のうち、日本で勤務した期間に対応する部分が日本の給与所得(国内源泉所得)になります。たとえば全36か月のうち日本勤務が12か月であれば約33.3%が対象です。日数ベース・月数ベースのいずれも合理的であれば認められますが、社内で統一し全付与に継続適用します。なお内国法人の役員として国外で行う勤務に対応する報酬は国内源泉所得とされる特例があり(所得税法第161条第1項第12号イ、所得税法施行令第285条第1項第1号)、使用人と同じ按分ができない場合があります。ただし、その役員が同時にその内国法人の使用人として常時勤務を行っている場合(海外支店の長として常時その支店に勤務するような場合)は、この特例の対象外です。

Q. 源泉徴収されないRSUでも、社員は確定申告が必要ですか?

必要になるのが原則です。チャージバックがなく源泉徴収されないRSUでも、権利確定分は年末調整で精算されない給与所得となるため、本人が確定申告します。会社側は源泉徴収の要否にかかわらず「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」を翌年3月31日(非居住者分は4月30日)までに提出する義務があり、調書提出と社員への申告案内はセットで運用します。

Q. PSUやESPPは、RSUと課税の扱いが違いますか?

基本の考え方は共通です。PSUは業績条件が付いたRSUと理解してよく、条件を満たして権利が確定した時点の時価が給与所得になります。ESPPは割引価格で株式を購入する制度で、購入時の時価と実際の払込額との差額が経済的利益として給与所得に含まれるのが一般的な取扱いです。一方、SARやファントムストックのように現金で決済され株式を取得しない制度は、権利行使時・支給確定時に給与として課税され、日本法人が支給者であれば通常の給与と同様に源泉徴収します。いずれも制度設計により扱いが変わるため、付与契約書の決済条項での確認が必要です。

Q. RSUのvesting(ベスティング=権利確定)で、日本法人は何をすればよいですか?

海外親会社(海外本社)から付与されたRSU・ストックオプションは、vesting=権利確定の時点で給与所得として課税されます。日本法人の源泉徴収義務があるかどうかは、チャージバック(費用負担)の有無で変わります。まず権利確定の情報を把握し、チャージバックの有無を確認したうえで、源泉徴収の要否と按分計算を判定する——という順序になります。

Q. 株式報酬の法定調書は、いつまでに出しますか?チャージバックが無くても必要ですか?

「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」を、経済的利益の供与等を受けた年の翌年3月31日までに所轄税務署へ提出します(出国後の権利確定など、供与等を受けた方が非居住者である分は翌年4月30日)。対象は役員・使用人が外国親会社等から受けたRSU・ストックオプション等の経済的利益で、チャージバックの有無を問いません。なお源泉徴収が必要と判定された場合の納付期限は、居住者分は翌月10日です。出国後に非居住者となった方への分で株式の交付が国外で行われるものは、所得税法第212条第2項により翌月末日となります。

Q. 調書を出していれば、社員への確定申告の案内は不要ですか?

不要とは言えません。この調書には経済的利益の供与等を受けた役員等の氏名等が記載され、個人単位で所轄税務署に提出されます(所得税法第228条の3の2)。つまり税務署は、海外株式報酬の供与状況を個人単位で把握できる状態にあります。「調書は提出しているのに社員には確定申告の案内をしていない」という状態は、お尋ね文書や税務調査の典型的な入口です。調書提出と社員への申告案内はセットで運用してください。

▶ あわせて読みたい:海外の親会社から直接付与される株式報酬は国内で源泉徴収されないため、ご本人の確定申告が必要になります。識別と課税時期は外国親会社の株式報酬と確定申告で整理しています。

▶ 過去のRSUの申告に漏れや誤りがあった可能性がある場合は、外国籍従業員の税務レビューで遡れる期間と是正の手順をご確認ください。

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主な根拠資料

本記事は2026年9月時点の法令等に基づいています。個別の取扱いはプラン文書の内容および事実関係により異なります。

山口 淳也

この記事の監修

公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表

日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。