外国籍社員の税務リスク診断ツール|10項目チェックで緊急度を判定

外国籍社員の税務 実務シリーズ

外国籍社員の税務リスク診断ツール|10項目チェックで緊急度を判定

人事・給与・グローバルモビリティ担当者向けに、外国籍社員の税務対応リスクを10項目のチェックで「低・中・高」の3段階に判定する簡易診断ツールです。チェック結果はこのページ内で計算・表示されるのみで、入力内容が送信・保存されることはありません。

最終更新日:2026年7月3日

外国籍社員の税務リスクは「社員の属性」と「社内体制」の2軸で決まります。結論から言えば、以下の10項目のうち該当0〜2個なら年1回の定点確認、3〜5個なら年末調整前(10〜11月)の専門家点検、6個以上なら過去3年分に遡った総点検が必要な状態です。まず現状を数値で把握してください。

01診断ツールの使い方と判定基準

使い方は次の3ステップです。所要時間は3分程度です。

  1. チェック1〜10のうち、自社に当てはまる項目のボックスをタップ(クリック)します。
  2. 「診断する」ボタンを押すと、該当数に応じたリスクレベル(低・中・高)と推奨アクションが表示されます。
  3. 各項目の下段の「該当すると」欄と参照記事で、該当した項目への対応をご確認ください。

判定基準は次のとおりです。

該当数 リスクレベル 推奨アクション
0〜2個 現状維持。毎年9〜10月に再診断し、税制改正を定点確認
3〜5個 10〜11月に①居住者区分の判定 ②租税条約届出 ③RSU課税漏れ の3点をスポット相談で点検(年末調整やり直しの実務上の目途=翌年1月31日・源泉徴収票の交付期限)
6個以上 過去3年分の源泉徴収簿の総点検と標準フローの文書化を顧問契約のもとで実施

チェック結果はお使いのブラウザ内で計算・表示されるのみで、入力内容が当社や第三者に送信・保存されることはありません。匿名のまま何度でも実行できます。

02属性リスク:チェック1〜5

まず、社員の属性に起因するリスクです。1人でも該当する社員がいる項目にチェックを入れてください。

該当すると:過去10年以内の国内居住期間が通算5年を超えると「非永住者」から通常の居住者に切り替わり、国外源泉所得を含む全世界所得が課税対象になります(所得税法2条1項4号)。切替時期の見落としは申告漏れに直結します。→ 詳細は非永住者の課税範囲と送金課税

該当すると:海外親会社から付与されたRSUは権利確定(ベスティング)時に給与所得として課税されますが、国外払いのため源泉徴収の対象外となるのが通常で、年末調整では完結せず本人の確定申告が必要です。→ 詳細はRSU・株式報酬の課税実務

該当すると:国外払い給与は年末調整で精算されず、本人の確定申告が必要になります。会社が案内せず無申告のままだと、無申告加算税(原則15%・税額により最大30%)と延滞税の対象になります。→ 詳細は確定申告・年末調整の4つの税務リスク

該当すると:「親族関係書類」「送金関係書類」の確認が要件です。2023年分以降、30歳以上70歳未満の国外居住親族は、年38万円以上の送金等がない限り原則として扶養控除の対象外になりました。書類不備は年末調整のやり直し要因です。→ 詳細は給与・源泉徴収・年末調整の実務

該当すると:在留期間更新の審査では住民税の課税証明書・納税証明書の提出を求められる場合があり、未納・未申告は審査上の不利益要因になります。→ 詳細はビザ更新と納税証明の関係

03体制リスク:チェック6〜10

次に、社内の運用体制に起因するリスクです。体制リスクは「誤りに気づける仕組みがあるか」の問題であり、放置すると誤りが年々蓄積します。

該当すると:担当者の異動・退職で判定根拠が失われ、誤りが数年単位で温存されます。税務調査の対象期間は実務上3年分が通例ですが、法律上は5年(偽りその他不正の行為がある場合は7年)まで遡って更正され得ます(国税通則法70条)。→ 詳細は外国籍社員の税務体制構築ガイド

該当すると:源泉徴収漏れが税務調査で指摘されると、会社に不納付加算税10%(納税の告知前の自主納付は5%)と延滞税が課されます。本税は会社がいったん立て替え、社員本人から回収する構図になります。→ 詳細は税務コストの会社負担とグロスアップ

該当すると:給与収入2,000万円超の社員は年末調整の対象外で、確定申告が必須です(所得税法190条・121条)。対象者リストを毎年更新しないと、案内漏れが本人の無申告に直結します。→ 詳細は外国籍社員の確定申告 完全ガイド

該当すると:届出書は原則として最初の支払日の前日までに、支払者経由で税務署へ提出する必要があります。未提出の場合は国内法どおりの源泉徴収(非居住者は20.42%)となり、取り戻すには還付請求(様式11)の手間と数か月のタイムラグが生じます。→ 詳細は給与・源泉徴収・年末調整の実務

該当すると:出国までに「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出しない場合、出国時までに準確定申告が必要です。住民税の未徴収分の精算(一括徴収等)や、対象資産1億円以上の社員に対する国外転出時課税(出国税)の該当判定も漏れやすい論点です。国外転出時課税の対象者は、対象資産1億円以上かつ出国前10年以内の国内在住期間が通算5年超の者に限られ(所得税法60条の2)、就労系など入管法別表第一の在留資格で在留した期間は在住期間に算入されないため、外国籍社員は対象外となるケースも多い点も判定の前提として押さえてください。→ 詳細は出国時の税務手続き帰任・退職時の税務

04診断結果

チェックが終わったら、下のボタンを押してください。該当数に応じた判定と推奨アクションがこの場に表示されます。

お使いの環境ではJavaScriptが無効のため、自動判定は動作しません。次の10項目のうち該当する数を数え、下表で判定してください。

  1. 来日からの居住期間が通算5年前後の外国籍社員がいる
  2. RSU・ストックオプションを付与されている社員がいる
  3. 海外本社・海外関係会社から給与・報酬を受け取っている社員がいる
  4. 国外に居住する親族を扶養控除の対象としている社員がいる
  5. 1年以内に在留資格(ビザ)の更新・変更を予定している社員がいる
  6. 外国籍社員の税務対応が特定の担当者に属人化している
  7. 過去のRSU・国外払い給与の源泉徴収処理を検証できていない
  8. 年末調整だけで完結しない社員を把握できていない
  9. 租税条約の適用判定・届出書提出の運用ルールがない
  10. 出国・帰任時の手続きの標準フローがない
該当数 判定 推奨アクション
0〜2個 現状維持。毎年9〜10月に再診断し、税制改正を定点確認
3〜5個 10〜11月に①居住者区分の判定 ②租税条約届出 ③RSU課税漏れ の3点をスポット相談で点検(年末調整やり直しの実務上の目途=翌年1月31日・源泉徴収票の交付期限)
6個以上 過去3年分の源泉徴収簿の総点検と標準フローの文書化を顧問契約のもとで実施

05診断後の進め方

低(0〜2個):年1回の再診断で現状を維持する

現時点で重大なリスクが顕在化している可能性は低い水準です。ただし国外居住親族の扶養控除要件の改正(2023年分〜)のように、外国籍社員に固有の税制改正は続いています。年末調整の準備が始まる前の毎年9〜10月に、本ページでの再診断を推奨します。

中(3〜5個):10〜11月のスポット点検で年末調整に間に合わせる

誤りが見つかった場合の年末調整のやり直しは、源泉徴収票の交付期限である翌年1月31日が実務上の目途です。逆算すると、10〜11月のうちに①居住者・非永住者・非居住者の区分判定、②租税条約の届出の有無、③RSU・国外払い給与の課税漏れ——の3点をスポット相談で点検しておけば、12月の年末調整と翌年2月16日〜3月15日の確定申告期に間に合います。確定申告が必要な社員が見つかった場合は確定申告代行で対応できます。

高(6個以上):過去3年分の総点検と標準フローの文書化

個別論点の手当てだけでは再発します。源泉徴収・年末調整レビューによる過去3年分の源泉徴収簿・扶養控除等申告書の総点検と、入社時の区分判定から出国時の納税管理人届出までを網羅した標準フローの文書化を、顧問契約のもとで進めることを推奨します。外部に依頼すべきかどうかの見極めは「外部専門家に依頼すべき5つのサイン」で解説しています。

本診断は簡易版であり、社員数・給与水準・RSUの規模によって実際のリスク金額は大きく異なります。稟議・社内報告には「該当数・該当項目・推奨アクション」をそのまま転記できます。診断結果を添えてご相談いただければ、初回ヒアリングから具体的な論点整理が可能です。

よくある質問

Q. この診断ツールに入力した内容は送信・保存されますか?

いいえ。チェック結果はお使いのブラウザ内で計算・表示されるのみで、入力内容が当社や第三者に送信・保存されることはありません。匿名のまま何度でも実行できます。

Q. 診断結果が「中(該当3〜5個)」でした。何をすればよいですか?

年末調整前の10〜11月に、①居住者・非永住者・非居住者の区分判定、②租税条約の届出の有無、③RSU・国外払い給与の課税漏れ、の3点をスポット相談で点検することを推奨します。年末調整のやり直しは源泉徴収票の交付期限である翌年1月31日が実務上の目途で、逆算すると10〜11月の点検で12月の年末調整と翌年の確定申告期に間に合います。

Q. 該当が6個以上(高)の場合、どこまで対応が必要ですか?

個別論点の手当てだけでは再発するため、過去3年分の源泉徴収簿・扶養控除等申告書の総点検と、入社時の区分判定から出国時の納税管理人届出までを網羅した標準フローの文書化を、顧問契約のもとで進めることを推奨します。税務調査は実務上3年分が通例ですが、法律上は原則5年(偽りその他不正の行為がある場合は7年)まで遡って更正され得ます。

Q. 就労ビザの外国籍社員も国外転出時課税(出国税)の対象になりますか?

国外転出時課税の対象者は、対象資産1億円以上かつ出国前10年以内の国内在住期間が通算5年超の人に限られ、就労系など入管法別表第一の在留資格で在留した期間は在住期間に算入されません。そのため就労ビザのみで滞在してきた外国籍社員は、対象外となるケースも多くあります。

山口 淳也

この記事の監修

公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表

日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。