非居住者株主が日本法人を設立したときに必要な「外為法事後報告」とは?
非居住者が日本法人の株式を取得して会社を設立・出資する場合、会社法や税法上の手続きに注目が集まりがちですが、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく事後報告の義務が見落とされることが少なくありません。
この手続きは、会社設立の登記完了後や株式取得後に日本銀行への報告が求められるもので、違反した場合には罰則もあります。本記事では、非居住者株主が関わる日本法人の設立・出資における外為法の報告義務について、対象取引、手続きの流れ、期限、そしてリスクを整理します。
外為法は、外国からの投資に関して一定の管理を行っています。非居住者が日本法人の株式を取得する行為は、「対内直接投資等」として外為法の規制対象となります。
具体的には、以下の行為が対象です。
- 非居住者が日本法人の株式を新規に取得(会社設立時の出資を含む)
- 非居住者が既存の日本法人の株式を10%以上取得
- 非居住者が日本法人に対して1億円超の貸付を行う場合
- 日本法人の事業目的の実質的変更に同意する場合
なお、2020年の外為法改正により、安全保障上重要な業種(武器、航空機、原子力、サイバーセキュリティ、電力、通信など)に該当する場合は、事前届出が必要となるケースもあります。指定業種に該当しない一般的な業種であれば、事後報告で足ります。
税理士・行政書士の実務でよく遭遇するのは、以下のようなケースです。
ケース1:海外在住の外国人が日本で会社を設立
中国やシンガポール在住の個人が、日本で株式会社を設立し経営・管理ビザを取得するケース。設立時の出資(株式の引受け)が対内直接投資に該当し、事後報告が必要です。
ケース2:海外法人が日本子会社を設立
米国やヨーロッパの法人が日本に100%子会社を設立するケース。親会社(非居住者法人)が日本法人の株式を全額引き受けるため、事後報告の対象です。
ケース3:非居住者が既存の日本法人に追加出資
第三者割当増資などにより、非居住者が日本法人の株式を追加取得する場合も対象となります。
ケース4:株式譲渡による非居住者への持分移転
日本在住の株主から非居住者へ株式が譲渡され、非居住者の持分が10%以上となる場合、取得者である非居住者に報告義務が生じます。
報告先と方法
事後報告は日本銀行に対して行います。報告書の様式は日本銀行のウェブサイトからダウンロード可能で、オンライン(日銀ネット)または書面で提出できます。
報告期限
取引または行為が行われた日から45日以内に報告する必要があります。会社設立の場合は、設立登記の完了日(法人成立日)が起算点となります。
報告書に記載する主な事項
- 投資者(非居住者)の氏名・住所・国籍
- 投資対象の日本法人の商号・住所・事業内容
- 取得株式数・出資額
- 取得日(登記日など)
- 取得方法(新株引受、株式譲渡など)
- 投資者の持株比率
外為法の報告義務に違反した場合、以下の罰則が適用される可能性があります。
6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(外為法第70条)
実務上、個人の会社設立レベルで直ちに刑事罰が科されるケースは多くありませんが、以下のリスクがあります。
- ビザ更新への悪影響:入管当局は法令遵守状況を審査します。外為法違反があると「適正な事業運営ができていない」と判断され、経営・管理ビザの更新に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 金融機関の審査:銀行口座開設や融資審査の際に、外為法の報告書の提出有無を確認されるケースが増えています。
- M&A・資金調達時の問題:将来的にM&Aやシリーズ投資を受ける際のデューデリジェンスで、過去の報告漏れが発覚すると手続きが停滞する原因になります。
2020年の外為法改正(いわゆる「コア業種規制」の導入)により、安全保障上重要な業種に対する投資は、株式取得前に財務大臣・事業所管大臣への届出が必要です。審査期間は原則30日(延長の場合は最大5か月)です。
ただし、経営に関与しない純投資目的の場合や、一定の免除基準を満たす場合は事前届出が免除されることがあります(免除届出制度)。IT、通信、電力、ガス、鉄道、航空、放送、武器製造などの業種が指定されているため、事業内容が該当するかの確認は必須です。
非居住者が関わる日本法人の設立・出資では、会社法・税法だけでなく外為法上の報告義務を見落とさないことが重要です。特に経営・管理ビザの取得を前提とした会社設立では、ビザ申請と並行して外為法の手続きも進める必要があります。
設立登記完了後45日以内という期限を意識し、登記が完了した段階で速やかに日本銀行への報告書を準備することをお勧めします。
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