経営・管理ビザ厳格化と外資起業家の戦略ガイド

外国人起業家コラム|ビザ制度

経営・管理ビザ厳格化と
外資起業家の戦略ガイド

在留資格「経営・管理」の審査基準の厳格化に対し、外国人起業家が取るべき戦略を解説します。

読了目安:5分 | 対象:外国人起業家・行政書士 | 監修:Esperanza税理士事務所

改正案の公表と施行時期

2025年8月26日、出入国在留管理庁は外国人起業家向け在留資格「経営・管理」の要件を正式に厳格化する改正案を公表しました。従来500万円で取得できた資本金要件を、なんと3,000万円以上に引き上げるとともに、
経営経験3年以上またはMBA等の経営学修士相当の学位の保有、常勤職員1名以上の雇用、さらに中小企業診断士など専門家による事業計画の確認を求める内容です。改正案はパブリックコメントを経た後、2025年10月中旬の施行を目指しています。

この厳格化は、日本社会における制度と現実の乖離を埋める狙いがあります。現行制度では学歴や職歴、日本語能力を問われず、投資額も旧制度から変わらない500万円に据え置かれてきました。円安や経済成長の影響でこの金額の実質的価値は下がり、“お金で買えるビザ”と揶揄されるほど取得しやすくなっていたのです。その結果、事業の実体が乏しいまま家族を呼び寄せるケースや、ビザ目的で移住するためだけに申請する例が増え、日本語教育など公的負担が増加したとも指摘されています。

加えて、近年は大阪の民泊問題北海道での無許可伐採など、経営・管理ビザ取得者による不適切な事例が報じられ、制度全体への風当たりが強まっています。また、経営管理ビザの取得をあっせんする“ビザブローカー”の増加も確認されており、ビジネス目的ではなく移住目的での申請が多くなっていると行政書士も危惧しています。

厳格化の要点:何がどう変わるのか

今回の改正案で変わるポイントを整理すると、以下のとおりです。

  • 資本金要件の大幅引き上げ:従来の500万円から6倍の3,000万円へ。実体のある事業展開を前提とした資本力を求められます。
  • 経営経験または学歴:経営経験3年以上、またはMBA等の経営学修士相当の学位取得者に限定。
  • 常勤職員の雇用:最低1名の常勤従業員を雇用し、社長一人のペーパーカンパニーを排除。
  • 事業計画の第三者確認:中小企業診断士などの専門家が事業計画の実現性を確認。

この改正により、現在約4万人いる「経営・管理」ビザ保持者のうち、新基準を満たすのはわずか4%以下とされ、多くの保持者が次回更新時に対応策を迫られる見通しです。

なぜここまで厳しくするのか:背景にある課題

制度改正の背景には、前述のような制度と実態の乖離だけでなく、公的負担の増加社会的批判の高まりといった複合的な要因があります。特に、500万円という低い資本金要件は、円安や景気変動によって相対的に負担が軽くなり、移住目的で申請する人たちの“抜け道”になっていました。また、経営管理ビザ保持者は家族帯同できるため、日本語教育や社会保障への負担が増すことが懸念され、本来ビジネスを支援するはずの制度が社会課題の一因になっていたと言えます。

さらに、ビザ保持者による違法な民泊運営不法伐採などが相次ぎ、制度の信用度が下がったことも無視できません。国内外からのネガティブな報道が増えた結果、経営管理ビザ全体に対する監視の目が厳しくなり、入国管理当局も制度の見直しを進めざるを得なくなったのです。

外国人起業家へのインパクト:どのような人が影響を受けるのか

今回の厳格化は、これから日本でビジネスを始める外国人起業家だけでなく、すでに経営管理ビザを取得している人にも大きな影響を及ぼします。改正後は資本金3,000万円常勤職員の雇用が必須条件となるため、飲食店や小売店などの小規模ビジネスや、社長一人で事業を回していた企業は対応が難しくなるでしょう。逆に、一定の資本力と人材を備えた企業にとっては競合が減ることで市場参入が有利に働く可能性があります。

特に、IT・貿易・不動産のように資本集約度が低く人員も少ない分野では、これまで一人経営で申請していた起業家が多かったと行政書士も指摘しています。今回の改正では常勤職員の雇用が義務付けられるため、こうしたビジネスモデルの見直しや、日本人または就労制限のない在留資格を持つ人材の採用が不可欠になります。

資本金3,000万円時代の資金調達戦略

資本金の大幅引き上げに対応するには、個人資産だけでなく外部資金の活用が現実的です。以下のような手段を検討しましょう。

  • 投資家やベンチャーキャピタルとの提携:資本金を確保しつつ経営経験の不足を補うことができます。
  • 共同経営・パートナーシップ:日本で事業実績のある企業や経営経験者と共同で会社を設立し、資金負担を分散。
  • 地方自治体や国のスタートアップ支援制度:特区やスタートアップビザ制度の活用で支援や資金援助を受けられます。
  • 段階的な資本増資:初年度に一定額を投入し、成長に応じて増資する計画を提示することで一度に3,000万円を調達する負担を軽減。

経営経験・学歴要件への対応

  • 経験者を役員に迎える:経営経験豊富な人材を役員に加え、その実績で要件を満たす。
  • MBAや経営学修士の取得:知識面と要件を同時にクリア。
  • 他の在留資格からのステップアップ:技術・人文知識・国際業務などで経験を積み、その後「経営・管理」へ変更。

常勤職員の雇用と人材マネジメント

採用にあたっては、日本人や日本で就労制限のない在留資格を持つ人材を選ぶ必要があります。採用後は労働契約・社会保険加入など法令順守が前提であり、給与水準や労務管理の仕組みづくりが重要になります。

人材確保が難しい場合はハローワークや職業紹介会社、自治体の支援プログラムを利用しましょう。さらに外国人ならではのネットワークや言語スキルを活かしてグローバル人材を確保する方法も有効です。

事業計画の第三者確認:ビジネスの実現性を証明する

改正後は、中小企業診断士などの専門家による事業計画の確認が求められます。マーケット分析・財務計画・組織体制・リスク管理など、事業の実現可能性を客観的に評価し、外部視点を取り入れることでリスクを早期発見し改善策を講じることができます。

既存保持者への影響と経過措置

新要件を既に満たしている保持者はわずか4%以下に過ぎず、多くの既存事業者が資本金増資従業員雇用など追加措置を取る必要があります。入管当局は配慮を示していますが、具体的な内容は今後の運用で決まるため、早めの準備が不可欠です。

国際比較と日本市場の魅力

資本金3,000万円というハードルは高いものの、米国のE-2ビザや英国の投資家ビザと比べれば突出した額ではありません。安定した法制度大きな市場規模高度な技術力を背景に、日本は依然として外国人起業家にとって魅力的な市場です。厳格化による参入障壁の高さは、逆に本気の起業家にとってチャンスとなり得ます。

2026年入管法改正——追加の変更点と実務への影響

2026年3月に閣議決定された入管法改正案は、経営・管理ビザの起業家にも大きな影響を与えます。資本金要件の厳格化に加え、以下の変更点も押さえておく必要があります。

在留資格手数料の大幅引き上げ

在留資格変更・在留期間更新の手数料上限が10万円に設定されます。経営・管理ビザの更新は通常1年ごとに必要であり、この手数料増加は事業運営コストに直接影響します。起業家は事業計画の中にビザ関連費用として組み込む必要があります。

JESTA(電子渡航認証制度)の導入

2029年3月末までに、JESTA(Japan Electronic System for Travel Authorization)が導入されます。ビザ免除対象国からの短期渡航者に事前審査が義務付けられ、日本の入国管理体制全体が電子化・厳格化されます。海外からビジネスパートナーを招く際にも影響する可能性があるため、起業家は把握しておくべきです。

育成就労制度の創設(2027年4月施行)

技能実習制度が発展的に解消され、2027年4月から育成就労制度が施行されます。外国人を雇用する起業家にとって、採用できる在留資格の選択肢や手続きが変わるため、人材戦略の見直しが求められます。育成就労制度では日本語能力要件が新設され、本人意向による転籍も一定条件で認められるようになります。

永住許可手数料の引き上げ

将来的に永住権取得を目指す起業家にとって、永住許可手数料の上限が30万円に引き上げられることも重要です。長期的な在留計画の中でコスト見通しを立てておく必要があります。

まとめ:厳格化をチャンスに変えるために

経営・管理ビザの厳格化は、資本金・経験・雇用・事業計画のすべてで負担を強いる一方、本気の起業家にとっては日本での信頼性を高め、競争を有利にする契機でもあります。資金調達・人材確保・事業計画のブラッシュアップを進めることで、厳格化をチャンスに変えることが可能です。

日本の入管制度は今後も社会情勢や国際環境の変化に応じて見直される可能性があります。最新情報を常にチェックし、専門家の支援を得ながら、制度改正を追い風に変える戦略を練りましょう。

【2026年最新】入管法改正案の追加インパクト

2026年3月、政府は入管法改正案を閣議決定し、経営管理ビザの保持者にも影響する重要な変更が加わりました。

JESTA(電子渡航認証制度)の創設

日本版ESTA「JESTA(Japan Electronic System for Travel Authorization)」が2028年度中に導入予定です。ビザ免除国からの入国者にも事前のオンライン認証が必須となり、経営管理ビザで活動する起業家のビジネスパートナーや取引先の来日スケジュールにも影響する可能性があります。

在留手続き手数料の大幅引き上げ

手数料上限が1982年以来の大幅改定で、現行1万円から最大30万円に引き上げられます。

手続き現行改正後(検討中)
永住許可8,000円約20万円
在留期間更新(5年)4,000円約7万円
在留期間更新(1年)4,000円約1万円
在留資格変更4,000円約3〜5万円

経営管理ビザを毎年更新する場合、年間の手数料負担が増加します。長期の在留コスト試算にはこの改定を織り込む必要があります。なお、経済的困難がある場合等には減額・免除の規定も設けられる予定です。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」の厳格化

2026年4月より、「技人国」ビザの審査も厳格化されました。他の在留資格での不正が発覚した場合、当該企業は5年間の受入禁止となる措置が導入されています。経営管理ビザで従業員を「技人国」で雇用している企業は、コンプライアンス体制の見直しが急務です。

2026年5月時点の情報に基づく。最新情報は出入国在留管理庁の公式サイトでご確認ください。

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