【第2回】外国人社員が帰国・退職するとき、住民税はどうなる?

退職・帰国シリーズ ②

外国人社員が帰国・退職するとき、住民税はどうなる?

外国人社員が退職・帰国すると、翌年度の住民税を徴収できなくなるリスクがあります。一括徴収のタイミング、普通徴収への切り替え、納税管理人の届出——人事担当者が押さえるべき住民税の実務を整理します。

住民税の処理、退職時期によって対応が変わります

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住民税の基本——「後払い」の仕組みを理解する

住民税は、前年の所得に対して翌年6月〜翌々年5月に課税される「後払い」の税金です。会社員の場合は毎月の給与から天引き(特別徴収)されています。

この「後払い」の仕組みが、外国人社員の退職・帰国時に問題を引き起こします。退職して帰国した社員からは、翌年度の住民税を特別徴収する手段がなくなるためです。

住民税の課税サイクル

2025年1月〜12月の所得 → 2026年6月〜2027年5月に住民税として課税

2026年3月に帰国した社員の場合、1月1日時点では日本に住所があるため2025年所得に対する住民税(2026年6月〜)は課税されますが、すでに出国しているため徴収先がなくなります。

退職月による対応の違い

住民税の一括徴収(残りの住民税をまとめて最終給与から天引きすること)のルールは、退職する月によって異なります

退職時期当年度の残額翌年度の住民税
1月〜4月に退職 最終給与から一括徴収が義務(本人の同意不要)
※5月退職は当年度最終月のため、月次の特別徴収で完結
普通徴収に切り替え、または出国前に一括徴収を推奨
6月〜12月に退職 本人の申出があれば一括徴収可能。申出がなければ普通徴収(本人が自分で納付書で払う方式)へ切り替え 翌年度分は普通徴収。帰国する場合は納税管理人が必要

帰国する外国人社員には一括徴収を強く推奨

6月〜12月退職の場合、法律上は一括徴収が「義務」ではなく「本人の申出」ベースです。しかし、帰国してしまうと普通徴収の納付書が届かない(届いても対応できない)ため、実務上は一括徴収を強く推奨してください。最終給与から天引きすることで、未納リスクを回避できます。

特別徴収の異動届出——退職後の届出義務

社員が退職した場合、企業は「給与所得者異動届出書」を市区町村に提出する義務があります。これは「給与天引きで住民税を納めていた社員が退職しました」と届け出る書類です。

届出のポイント

・提出先:社員が1月1日時点で住所を置いていた市区町村
・提出期限:退職日の属する月の翌月10日まで
・届出内容:一括徴収した場合はその旨を記載、普通徴収に切り替える場合はその旨を記載
・届出を怠ると、会社に特別徴収義務が残り続ける可能性がある

納税管理人——帰国後の住民税に備える

住民税の納税義務は、帰国しても消滅しません。翌年度に課税される住民税(普通徴収分)がある場合、帰国後に納付書を受け取って支払う必要があります。

しかし、海外にいる本人に納付書は届きません。そこで必要になるのが納税管理人です。

納税管理人とは

・本人に代わって納税に関する書類を受け取り、納付手続きを行う人
・日本国内に住所がある個人または法人を選任
・出国前に「納税管理人の届出書」を市区町村に提出
・会社が納税管理人になることも可能(実務上は多いパターン)

なお、所得税にも別途「納税管理人」の届出(届出先は税務署)が必要です。還付申告や準確定申告が発生する場合に備え、出国前に届け出ておきましょう。詳しくはシリーズ⑤「給与計算」で解説しています。

納税管理人が未届の場合のリスク

納税管理人を届け出ずに出国すると、住民税の納付書が届かず、延滞金が加算されていきます。最悪の場合、日本に資産(銀行口座など)が残っていれば差し押さえの対象になることもあります。退職手続きの一環として、必ず本人に案内してください。

よくあるケース別の対応

ケース対応方法
3月末退職・4月帰国 当年度残額(4月・5月分)は一括徴収が義務。翌年度分は出国前に納税管理人を届出。可能であれば翌年度分も概算で前納を検討
9月末退職・10月帰国 当年度残額(10月〜翌5月分)は本人の申出で一括徴収(強く推奨)。翌年度分は納税管理人を届出
12月末退職・1月帰国 当年度残額(1月〜5月分)は最終給与で一括徴収。翌年度分は前年所得に基づき6月に確定。納税管理人が必須
最終給与で一括徴収しきれない
(住民税額>最終給与手取り)
不足分は普通徴収に切り替え。出国前に本人が直接納付するか、納税管理人経由で対応

企業側の実務チェックリスト

確認項目対応内容期限
退職月の確認 1〜5月退職なら一括徴収義務あり。6〜12月なら本人に一括徴収を推奨 退職日確定時
一括徴収額の計算 当年度の未徴収残額を確認し、最終給与から天引き可能か検証 最終給与計算前
給与所得者異動届出書の提出 市区町村に届出。一括徴収/普通徴収切替を明記 退職月の翌月10日
納税管理人の届出案内 本人に「納税管理人の届出書」の提出を案内。会社が引き受ける場合はその旨を協議 出国前
翌年度の住民税の見通し説明 本人に翌年度の住民税が発生する旨を説明。金額の概算を案内 退職前

よくある質問

帰国した外国人社員の住民税が未納になった場合、会社に責任はありますか?

特別徴収義務者である会社が、1月〜5月退職者の一括徴収義務を怠った場合や、異動届出書の提出を怠った場合は、会社側に徴収義務が残る可能性があります。届出と一括徴収を確実に実施してください。

住民税を一括徴収した結果、最終給与の手取りがほぼゼロになります。問題ないですか?

法律上は問題ありませんが、本人への事前説明が重要です。一括徴収により手取りが大幅に減ることを退職前に説明し、納得を得たうえで処理してください。不足分が出る場合は普通徴収との併用も検討します。

会社が納税管理人になった場合、どのような業務が発生しますか?

市区町村から届く納付書の受領と、本人に代わっての納付が主な業務です。立替払いが必要になるため、退職時に本人から預かり金として受領しておくか、帰国後に送金してもらう段取りを決めておきましょう。

退職・帰国シリーズ

社会保険・脱退一時金・給与計算など、退職・帰国時の実務知識をまとめています。

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住民税の一括徴収・納税管理人の対応、判断に迷ったら

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