経営・管理ビザの「事業性評価書」とは|事業計画の専門家確認が義務化【2025年10月改正】
経営・管理ビザの「事業性評価書」とは|事業計画の専門家確認が義務化【2025年10月改正】
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2025年10月の改正で、経営・管理ビザは「事業計画を専門家が確認する」ことが義務になりました。新しく、情報がまだ少ない制度です。本記事は税理士・公認会計士の実務目線で、何が義務化され/何が評価され/何がまだ決まっていないのかを、誇張も省略もなく整理します。
🧭 3行でわかる結論
① 事業計画の「専門家確認(評価)」が任意→義務に(2025/10/16)。
② 評価の物差しは具体性・合理性・実現可能性の3つ。“それっぽい計画書”は通りません。
③ 確認の様式など細部は今後のガイドライン待ち=最新情報の確認が必須。
01何が変わったか――「任意」から「義務」へ
2025年10月16日に施行された上陸基準省令の改正により、経営・管理ビザの申請で提出する事業計画について、専門家による確認(評価)が「任意」から「義務」に変わりました。
具体的には、その事業計画に具体性・合理性が認められ、かつ実現可能であることを、経営に関する専門的知識を有する者――公認会計士・税理士・中小企業診断士のいずれか――が確認し、その内容を記した書面を申請に添付することが求められます。
🎯 なぜ義務化されたのか
虚偽や過大な収支計画による“名目だけの会社設立”を防ぎ、事業の実体と実現性を担保するためです。資本金3,000万円などの数値要件と並ぶ、今回の改正の柱のひとつに位置づけられています。
02改正で同時に新設された要件――特に「常勤職員」は就労ビザだと対象外
事業計画の専門家確認は、2025年10月16日の改正で新設された複数の要件の一つにすぎません。同じ改正で、資本金・雇用・日本語などのハードルも一気に上がりました。専門家確認だけ整えても、他の要件で落ちては意味がありません。まず全体像を押さえます(いずれも入管庁の改正内容より)。
| 要件 | 改正後の基準 |
|---|---|
| 資本金 | 3,000万円以上(払込資本金または出資総額のみ。資本準備金・剰余金や、従業員給与・事務所維持費との合算は不可) |
| 常勤職員 | 1名以上を雇用(資本金とANDの必須要件。旧「500万円 or 常勤2名」の選択制は廃止) |
| 日本語 | 申請者または常勤職員のいずれかがB2相当以上(JLPT N2、BJT400点以上、日本の大学等卒業 ほか) |
| 経歴・学歴 | 事業の経営・管理について3年以上の経験、または関連分野の修士・専門職・博士の学位 |
| 事業計画 | 専門家(中小企業診断士・公認会計士・税理士)の確認(=本記事のテーマ) |
| 事業所 | 独立した事業所の確保(自宅兼用・バーチャルオフィスは原則不可) |
このなかで、いちばん見落とされやすく危ないのが「常勤職員1名」の“中身”です。
常勤職員は「就労ビザの外国人」では要件を満たせません。入管庁は、雇用要件にカウントできる常勤職員を、日本人・特別永住者・別表第二の在留資格者(永住者/日本人の配偶者等/永住者の配偶者等/定住者)に限ると明記しています。技術・人文知識・国際業務などの就労ビザ(別表第一)の外国人は、何人雇っても雇用要件の頭数には入りません。
入管庁が示す具体例は次のとおりです。
| 満たす例 | 満たさない例 |
|---|---|
| 日本人または特別永住者を1名以上、常勤職員として雇用 | 就労ビザ(別表第一)の外国人だけを雇用(日本語の立証があっても不可) |
| 別表第二の外国人1名(日本語能力の立証あり)を雇用 | 別表第二の常勤職員のみだが、日本語能力の立証がない |
| 別表第二の外国人1名(立証なし)+就労ビザの外国人1名(日本語の立証あり)を雇用 | ― |
ややこしいのは、「日本語要件でいう常勤職員」には就労ビザ(別表第一)の外国人も含まれる点です。つまり雇用の“頭数”には就労ビザの人は入らないが、“日本語能力を満たす人”としてなら就労ビザの人もカウントできるという二段構え。ここを取り違えると要件判定を誤ります。
なお「常勤職員」と認められる目安は、週5日以上かつ年217日以上の勤務、週30時間以上、6か月継続勤務で全労働日の8割以上出勤し10日以上の年次有給が付与されること、雇用保険の被保険者であること、です。派遣・請負・在籍出向の人は、その事業所の常勤職員とはみなされません。
専門家確認は「誰でもいい」わけではありません。事業計画を確認できるのは、施行日時点で中小企業診断士・公認会計士・税理士に限られます。海外の資格(米国公認会計士など)は対象外。さらに、申請者の会社の役員や従業員は客観性の観点から評価者になれず、外部顧問の公認会計士・税理士であれば差し支えありません。当事務所は外部の公認会計士・税理士として、この確認を担えます。
03専門家は何を評価するのか――3つの物差し
評価の物差しは、次の3つです。この3点を満たしていれば問題ない、とされています。それぞれ“何を見るか”を具体例で示します。
① 具体性 ― 誰に・何を・どう売るのかが具体的か。
例:「日本企業向けにECサイト構築を月3社受注」のように対象と数が描けているか(×「IT事業を幅広く展開」)。
② 合理性 ― 前提や数字に筋が通っているか。
例:売上の伸びに対して人件費や仕入も連動しているか。利益が出る構造になっているか。
③ 実現可能性 ― その資本・人員・経験で本当に実行できるか。
例:資本金3,000万円・常勤職員1名・経営者の経験と、計画の規模が釣り合っているか。
💡 入管が見ている視点
入管は「この人は日本で事業を続けられるのか」という“未来の姿”を見ています。その判断の根拠になるのが、事業計画のロジックの強さです。
04評価の対象となる事業計画書(10項目)
評価の前提となる事業計画書には、一般に次の要素が盛り込まれます。大きく「事業の中身」と「数字の計画」に分けて押さえると整理しやすくなります。
■ 事業の中身
- 01事業の概要
- 02経営理念
- 03サービスの内容
- 04顧客のターゲット
- 05商品・品目
- 06価格設定
- 07集客の方法
- 08販売先・仕入先
■ 数字の計画
- 09損益計画書(1期分〜5期分)
- 10人員(雇用)計画
🔗 他の新要件との整合がカギ
とくに⑨損益計画と⑩人員計画は、改正で加わった「資本金3,000万円以上」「常勤職員1名以上」と矛盾しないように作る必要があります。数値が他の要件とちぐはぐだと、実現可能性が問われます。
05「事業性評価書」とは――文書化して添付する書面
専門家が確認した内容を文書化したものが、いわゆる「事業性評価書(評価書)」です。改正で追加されたのは、専門家による「事業計画の実現可能性の評価」であり、それを書面化して申請に添付する建て付けです。
誤解しやすい2点を整理します。
・事業計画書の“作成者”には制限がありません。申請人本人が作っても、専門家に依頼してもかまいません。義務化されたのは“作成”ではなく“専門家による評価(確認)”です。
・評価書は「専門家がこの計画を妥当と確認した」ことを示すものであり、許可そのものを保証するものではありません。最終的な審査は入管が行います。
06「通る計画書」にする条件――チェックリスト
評価で問われる3つの物差し(具体性・合理性・実現可能性)を、実務上のチェックポイントに落とすと次のようになります。
- 売上は「客数 × 単価 × 頻度」など根拠のある式で積み上げているか
- 売上の伸びに合わせて仕入・人件費・固定費も連動しているか
- 資本金3,000万円の使途と出所(原資)が説明できるか
- 黒字化の時期と、それまでの運転資金が示されているか
- 常勤職員1名以上・事業所・日本語など他の新要件と計画が整合しているか
弱い例:「初年度売上3,000万円(根拠なし)、人件費は据え置き、利益率40%」
強い例:「月10社 × 平均25万円 × 12ヶ月=3,000万円。受注増に応じ2期目に1名増員、原価・外注費を計上し営業利益率12%」
07まだ未確定な点――評価文書の様式は自由――最新の運用
ここは特に押さえておきたい点です。専門家が「具体的にどのような様式・方法で確認するのか」の細部は、本記事執筆時点では完全には固まっていません。もっとも、改正に関するガイドラインと詳細なQ&A(令和8年6月更新)はすでに公表され、評価者の資格・評価の対象・実務運用の多くは明確化されています。残るのは評価文書そのものの形式で、定められた様式はなく自由様式での作成が前提です。
評価書のフォーマットや記載事項、求められる確認の深さといった実務運用はこれから定着していく部分があります。
⚠️ 必ず最新の公的情報を
制度が新しく運用が流動的なため、申請にあたっては出入国在留管理庁の最新情報を必ず確認してください。本記事は執筆時点で判明している内容に基づく整理です。
08実務:いつ・どう専門家に依頼するか
評価をスムーズに受けるコツは、完成した計画を後から「確認だけ」頼むのではなく、計画段階から専門家に関与してもらうことです。数字に矛盾があると、評価の段階で大幅な作り直しになりがちです。
依頼の前に、次を整理しておくと打ち合わせが早く進みます。
・事業の概要 ・申請(取得/変更/更新)の目的 ・現時点の計画内容 ・専門家に期待する役割 ・希望する期限
09まとめ
2025年10月の改正で、経営・管理ビザは「事業計画を専門家が評価し、その書面を添付する」ことが義務になりました。評価の軸は具体性・合理性・実現可能性。数字に根拠と整合があり、他の新要件(資本金・人員・事業所)と噛み合っていることが、通る計画書の条件です。様式など細部は今後のガイドライン待ちのため、最新情報の確認を忘れずに。
▶ エスペランザにご相談ください
当グループは、改正で必須となった事業計画の評価に対応できる公認会計士・税理士です。BIG4出身の専門家が、計画段階の数値づくりから評価・会社設立・設立後の税務顧問まで一貫して支援します。在留資格(ビザ)申請/外国人起業家支援/お問い合わせ
📝 本記事について
2025年10月16日施行の改正に基づく、執筆時点での整理です。様式・運用の詳細は今後変わり得ます。改正全体(資本金3,000万円・日本語要件・経過措置など)の解説はこちら。
公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表
日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。

