海外からの送金で税金がかかる?非永住者と非居住者で全く違う「送金と課税」の仕組み
海外からの送金で税金がかかる?非永住者と非居住者で全く違う「送金と課税」の仕組み
「海外のお金を日本に送ると税金がかかるらしい」——この漠然とした不安の答えは、あなたが税法上どの立場に当たるかで正反対になります。日本に住む外国籍社員(非永住者)と、海外に住む人(非居住者・日本人を含む)に分けて、送金と課税の仕組み・実務リスク・対策を整理します。
最終更新日:2026年7月14日
結論から申し上げると、「海外からの送金に税金がかかるか」という問いには、ひとつの答えはありません。日本に住んでいるのか、海外に住んでいるのかで、適用される制度そのものが変わるからです。ここを混同したまま「送金は課税される/されない」と判断してしまうと、思わぬ申告漏れや、逆に不要な心配につながります。
まずは、ご自身(あるいは対象となる社員・ご家族)がどちらに当たるかを確認してください。次の分岐カードが、この記事全体の地図になります。
📋 表形式でも確認する(立場・区分・論点の一覧)
| あなたの立場 | 税務上の区分 | 送金と課税の考え方 | 主に注意する論点 |
|---|---|---|---|
| A.日本に住んでいる外国籍の方(来日おおむね5年以内の駐在員・高度人材など) | 非永住者 (居住者の一種) |
送金によって課税される所得の範囲が広がる制度がある(第1部) | 国外源泉所得の送金分・みなし送金・計算の仕組み |
| B.海外に住んでいる方(日本人を含む・帰任した元社員・海外在住のご家族など) | 非居住者 | 送金そのものは課税されないが、別の実務リスクが3つある(第2部) | 居住者認定・国外送金等調書・贈与認定 |
Aの方は第1部から、Bの方は第2部から読み進めていただいて構いません。ただし、駐在の前後で立場が入れ替わる方も多いため、両方に目を通しておくと安心です。
非永住者に当たる方は、課税範囲の判定と実際の税額試算まで踏み込んだ解説記事もあわせてご覧いただけます。5年ルールの数え方から具体的な計算例まで確認できます。
01立場で全く違う:居住者・非永住者・非居住者の3区分
日本の所得税では、個人を「居住者」「非永住者」「非居住者」の3つに区分し、それぞれ課税される所得の範囲(課税範囲)が異なります。まずこの区分を押さえることが出発点です。
居住者とは、日本国内に「住所」がある人、または現在まで引き続いて1年以上「居所」がある人をいいます(所得税法2条1項3号)。ここでいう住所とは、生活の本拠——つまり暮らしの中心がどこにあるか、という意味で、住民票の有無だけで決まるわけではありません。
非永住者は、その居住者のうち、日本国籍がなく、かつ過去10年以内に日本国内に住所・居所があった期間の合計が5年以下である人を指します(所得税法2条1項4号)。来日から数年の外国籍の駐在員・エンジニアなどの多くが、この非永住者に当たります。いわば「日本に住んではいるが、まだ日本に根を下ろしきっていない外国籍の人」という位置づけです。
非居住者は、居住者以外の人、すなわち生活の本拠が日本にない人です(所得税法2条1項5号)。海外へ帰任した元社員や、海外在住の日本人がこれに当たります。
ポイントは、この3区分によって「海外のお金」への課税の考え方が大きく変わることです。次の第1部では非永住者(日本在住の外国籍の方)を、第2部では非居住者(海外在住の方)を取り上げます。なお、外国籍社員の税務全体の見取り図は企業が見落とす4つの税務リスクで整理しています。
02【第1部】非永住者の課税範囲——国外源泉所得は「送金分」だけ課税
- 海外の所得は「送金した分だけ」課税対象になる仕組み(02)
- クレジットカード・ATM利用も「送金」に含まれうる(03)
- 課税されるのは「送金額」と「その年の国外源泉所得」の少ない方まで(04)
- 口座の分離とタイミング設計——実務の対策3ステップ(05)
非永住者の課税範囲は、次の2つで構成されます(所得税法7条1項2号)。専門的な条文ですが、噛み砕くと難しくありません。
- ①国外源泉所得「以外」の所得(≒国内で生じた所得)の全部——日本での給与や日本国内の不動産収入などは、居住者と同じくすべて課税されます。
- ②国外源泉所得のうち、日本国内で支払われたもの+国外から日本へ送金されたもの——ここが非永住者だけの特別な扱いです。海外で生じた所得(本国の家賃収入・配当など)は、原則そのままでは課税されませんが、日本へ送金するとその送金額の範囲で課税対象に取り込まれます。
言い換えると、非永住者にとって「送金」は、海外の所得を日本の課税ネットに引き込むスイッチのような役割を持ちます。居住者(永住者相当)は世界中の所得がすべて課税対象、非居住者は国内源泉所得のみ——その中間にあるのが非永住者だと理解すると分かりやすいでしょう。課税範囲を所得の種類ごとに整理すると次のとおりです。
| 所得の種類 | 居住者(永住者) | 非永住者 | 非居住者 |
|---|---|---|---|
| 国内源泉所得(日本での給与・国内不動産収入など) | 全額課税 | 全額課税 | 国内源泉分のみ課税 |
| 国外源泉所得のうち国内で支払われたもの | 全額課税 | 課税 | 課税されない |
| 国外源泉所得のうち日本へ送金されたもの | 全額課税 | 送金額の範囲で課税 | 課税されない |
| 国外源泉所得のうち送金しなかったもの | 全額課税 | 課税されない | 課税されない |
この表の非永住者の列を見ると、海外の所得は「日本に持ち込まなければ(送金しなければ)当年は課税されない」一方で、「送金すればその分が課税対象になる」という構造がはっきりします。判定の基礎となる5年ルールの数え方や税額試算は非永住者の課税範囲と送金課税で詳しく解説しています。
03「送金」の範囲は想像より広い——クレジットカード・ATMも対象に
非永住者の課税で最も見落とされやすいのが、ここでいう「送金」が銀行振込だけを指すわけではないという点です。国税庁の通達(所得税基本通達7-6)では、送金には通貨を日本へ持ち込むことのほか、国内での借入れや立替払いを、国外の資産で決済する行為なども含まれると整理されています。
この考え方に照らすと、実務では次のような行為も「送金(またはそれに準ずるもの)」として扱われうる、と整理されるのが一般的です。知らないうちに該当しているケースが少なくありません。
※「みなし送金」は法令上の正式名称ではありません。所得税の取扱いでは、通常の送金のほか「送金に準ずる行為」(所得税基本通達7-6)も送金として扱われるため、本記事では便宜上これらを「みなし送金」と呼びます。
- 海外口座を引落し先とするクレジットカードの日本国内での利用——日本での買い物を海外の預金で決済しているため、実質的に海外資金を日本に持ち込んだのと同じと見られる場合があります。
- 日本のATMで海外口座から現金を引き出す行為
- 海外口座に紐づくデビットカードの国内利用
- 海外の資産を担保・原資とした国内での借入れやその返済
いずれも「日本の銀行口座への振込」ではないため送金という意識が持ちにくく、そのまま申告から漏れやすい部分です。もっとも、これらが常に課税対象になるわけではなく、その年に課税の対象となる国外源泉所得があることが前提になります(次章で詳述)。まずは「送金=銀行振込だけではない」という感覚を持っておくことが、リスク回避の第一歩です。
04いくら課税される?——「送金額」と「その年の国外源泉所得」の少ない方
では、送金があると具体的にいくら課税されるのでしょうか。ここでよくある誤解が「送金した金額まるごとに課税される」というものですが、そうではありません。おおまかには、その年に送金した金額と、その年の(まだ課税されていない)国外源泉所得の額を比べ、少ない方までが課税対象になる、と整理できます(所得税法施行令17条の考え方)。
具体例①:その年に国外で配当100万円を受け取り、日本へ300万円を送金した場合
比べるのは「送金300万円」と「その年の国外源泉所得100万円」。少ない方は100万円ですから、課税対象に取り込まれる国外源泉所得は100万円までです。300万円送ったからといって300万円が課税されるわけではありません。差額の200万円は、過去の蓄えなど当年の所得ではない部分と整理されます。
具体例②:その年は海外で所得がまったく発生しなかった年に、300万円を送金した場合
比べる相手である「その年の国外源泉所得」がゼロですから、送金があっても課税は生じません。純粋に過去の貯金(元本)を動かしただけ、という整理になります。
来日3年目・英国籍のAさん(非永住者)。母国イギリスに賃貸用の住宅があり、毎年家賃収入が発生しています。日本での生活費は、イギリスの銀行が発行したクレジットカードで支払っており、「日本の口座には振り込んでいない=送金していない」「使っているのは自分の資産だけ」という認識でした。
しかし、家賃収入があった年のカード利用は「みなし送金」に当たり、その年の国外源泉所得(家賃収入)の範囲で課税対象になりました。本人にとっては「銀行送金もしていないのに、なぜ課税されるのか」という想定外の結果です。
送金の“手段”ではなく、その年に国外源泉所得があったことが分かれ目になった典型例といえます。
「送ったのは働いて貯めた昔の預金(元本)だから課税されないはず」と考える方が多いのですが、これは要注意です。税務上は、その年に国外源泉所得がある場合、送金はまずその所得に充てられたものとして扱われます。つまり「元本のつもりの送金」でも、同じ年に海外で配当や家賃収入があれば、その所得の範囲で課税対象に取り込まれます。送金の名目ではなく、その年に国外源泉所得があるかどうかが分かれ目です。
なお、国内居住の合計が過去10年で5年を超えた時点で非永住者から外れ、課税範囲は全世界所得(世界中のすべての所得)に切り替わります。この節目の前後で、送金の意味合いが大きく変わる点にも注意が必要です。
05非永住者ができる送金の対策——口座の分離とタイミング設計
非永住者の送金課税は、仕組みを知っていれば過度に恐れる必要はありません。ポイントは「どの資金を」「いつ」動かすかを設計することです。実務でよく採られる対策を3つのステップで整理します。
来日前の資産と来日後の所得で口座を分ける
来日前から持っていた預金(過去の蓄え=いわゆるクリーンな元本)を入れておく口座と、来日後に海外で生じる給与・配当・家賃などを受け取る口座を分けておきます。送金の原資がどちらかを説明しやすくなり、「その年の国外源泉所得ではない」ことの整理が容易になります。
送金のタイミングを、国外源泉所得の少ない年に寄せる
まとまった資金を日本へ移す必要がある場合、海外での配当・売却益などが発生していない年に送金すれば、課税対象に取り込まれる国外源泉所得を抑えられます。逆に、海外で大きな所得が出た年の送金は課税範囲が広がりやすいため、時期の分散を検討します。
カード・ATM利用も「送金」に含めて記録する
前章のとおり、海外口座に紐づくクレジットカードやATM引き出しも送金に準じて扱われうるため、これらの利用額も含めて年間の実質的な送金額を把握しておきます。人事・グローバルモビリティのご担当者は、赴任者への案内資料にこの点を一言加えておくと、後年の申告トラブルを防げます。
これらは「節税テクニック」ではなく、制度どおりに正しく整理するための備えです。判断に迷う場合は、送金の前に課税範囲を確認しておくと安全です。
ここまでは日本に住む非永住者の話でした。海外在住(非居住者)の話に進む前に、関連テーマもご確認ください。
なお、送金への課税とは別に、在留が長くなり非永住者でなくなった方は、その年12月31日時点で国外財産の合計額が5,000万円を超える場合、翌年6月30日までに「国外財産調書」の提出義務が生じます(非永住者の間は対象外です)。
06【第2部】非居住者の送金——制度上は非課税、しかし実務リスクが3つ
- 送金そのものには課税されない理由(06)
- それでも残る3つの実務リスク——居住者認定・国外送金等調書・贈与認定(06)
- 記録の整備と名目の明確化——非居住者の対策3ステップ(07)
ここからは海外に住んでいる方(非居住者)の話です。日本人・外国籍を問いません。まず前提として、非居住者には、非永住者のような「送金による課税」の制度は適用されません。非居住者が課税されるのは日本国内で生じた所得(国内源泉所得)だけで、海外で生じた所得や、海外から日本の家族・自分の口座へ送るお金そのものに、日本の所得税が直接かかることはありません。
「では海外在住なら送金は完全に無関係か」というと、そうとも言い切れません。送金という行為が、制度上の課税とは別のかたちで税務リスクの入口になることがあります。実務でよく問題になるのは次の3つです。
リスク①:居住者と認定される状況証拠になる
そもそも「非居住者だ」という前提が崩れると、話は根本から変わります。日本の居住者・非居住者は住民票ではなく生活の本拠が実際にどこにあるかで判定され、滞在日数・家族の居所・資産・職業などを総合して判断されます。ここで、日本の口座へ定期的に送金し、その資金を日本での生活費や住居費に使っているという事実は、「生活の本拠はやはり日本にあるのでは」という認定を後押しする材料になりえます。もし居住者と認定されれば、非居住者のつもりでいた期間の全世界所得が課税対象となり、影響は非常に大きくなります。
リスク②:国外送金等調書で税務署に把握される
金融機関は、1回100万円を超える海外送金・海外からの受金について、「国外送金等調書」を税務署へ提出する義務があります(国外送金等調書法)。つまり100万円を超える送金は、こちらが申告するかどうかにかかわらず、税務署へ自動的に情報が渡っています。これ自体が課税を意味するわけではありませんが、申告すべき国内源泉所得があるのに無申告の人に対して、税務署から「お尋ね」文書が届く入口になりやすい点に注意が必要です。「海外だから見えないだろう」は通用しません。
リスク③:家族名義の口座への送金が贈与とみなされる
海外から日本にいる家族名義の口座へ送金するケースでは、贈与税の論点が生じます。個人からの贈与は年間110万円までは基礎控除で非課税ですが、これを超える送金は贈与と認定され、受け取った側に贈与税がかかることがあります。生活費や教育費として必要な都度渡すお金は原則非課税ですが、まとまった金額を一度に家族口座へ送ると、名目があいまいなまま贈与とみなされるリスクが高まります。
07非居住者ができる対策——記録の整備と名目の明確化
非居住者の対策は、「課税を避けるテクニック」ではなく、あとで説明を求められたときに事実を示せるように整えておくことが中心です。
資金の出所と使途を記録しておく
いつ・いくら・何のために送金したかを記録し、原資が自分の給与や貯蓄であること、使途が生活費・住宅ローン返済などであることを示せるようにしておきます。国外送金等調書と照らして「お尋ね」が来た場合も、記録があれば落ち着いて対応できます。
家族への送金は名目を明確にする
家族口座への送金は、生活費・教育費など贈与に当たらない趣旨を明確にし、必要な都度・必要な額を送る形にします。まとまった資金移動が必要な場合は、贈与税の基礎控除(年110万円)や特例の適用可否を事前に確認します。
居住性に不安がある場合は事前に診断する
日本と海外を頻繁に行き来している、日本に家族や住居を残しているといった場合は、そもそも非居住者と言い切れるかを事前に確認しておくのが安全です。帰任・出国のタイミングの手続きは出国・帰任時の税務手続きもあわせてご覧ください。
08【早見表】非永住者 vs 非居住者——送金と課税の違い
ここまでの内容を、非永住者と非居住者で対比して整理します。同じ「海外からの送金」でも、注意すべき点がまったく異なることが分かります。
| 観点 | 非永住者(日本在住の外国籍の方) | 非居住者(海外在住の方) |
|---|---|---|
| 根拠となる制度 | 送金課税(所得税法7条1項2号) | 送金課税の制度は適用なし(国内源泉所得のみ課税) |
| 送金自体への課税 | その年の国外源泉所得の範囲で課税されうる | 送金そのものへの課税はなし |
| リスクの性質 | 申告漏れ(送金分の計上漏れ・みなし送金の見落とし) | 居住者認定・国外送金等調書・贈与認定という間接的リスク |
| 閾値・目安 | その年の国外源泉所得の有無/在留5年の節目 | 1回100万円超の送金は調書提出/贈与は年110万円超 |
| 主な対策 | 口座の分離・送金タイミングの設計・カード利用の記録 | 資金の出所と使途の記録・家族送金の名目明確化・居住性の事前確認 |
共通して言えるのは、「海外だから日本の税務署には分からない」という前提はもはや成り立たないということです。国外送金等調書や各国間の情報交換により、海外の資金の動きは把握されうる時代になっています。だからこそ、恐れて動けなくなるのではなく、仕組みを理解して正しく整理しておくことが大切です。
09よくある質問
10まとめ
「海外からの送金に税金がかかるか」という問いの答えは、立場によって正反対です。日本に住む非永住者は、海外の所得を日本へ送金するとその年の国外源泉所得の範囲で課税対象に取り込まれ、しかもクレジットカードやATM利用まで「送金」に含まれうる点が落とし穴です。一方、海外に住む非居住者は送金自体に課税はないものの、居住者認定・国外送金等調書・贈与認定という3つの実務リスクが控えています。
いずれも、知らずに該当しているケースが多い一方で、仕組みを理解して口座や記録を整えておけば、過度に恐れる必要はありません。ご自身やご家族、あるいは自社の外国籍社員がどの立場に当たるかを一度整理し、送金の前に課税範囲を確認しておくことが、最も確実なリスク回避になります。
「自分は非永住者・非居住者のどちらか」「この送金は課税されるのか」「居住性の判定は大丈夫か」——判断に迷う点を、国際税務に精通したBIG4出身の経験豊富な税理士が直接レビューします。人事・グローバルモビリティのご担当者からのご相談も承ります。送金の前の事前診断で、後年の申告トラブルを未然に防ぎましょう。
※本記事は2026年7月時点の法令・通達等に基づく一般的な解説であり、個別の課税関係は具体的な事実により異なります。実際のご判断にあたっては、税理士等の専門家に個別にご確認ください。
公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表
日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。


