外国籍社員の国外扶養親族|扶養控除の要件・38万円送金・必要書類と期限

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外国籍社員の国外扶養親族
——扶養控除の要件・38万円送金・必要書類と期限

母国の家族を扶養に入れたいという申出を受けたとき、人事が確認するのは年齢・書類・期限の3つです。非居住者である扶養親族は令和5年分以後に範囲が絞られ、30歳以上70歳未満は原則として控除対象になりません。本記事では所得税法の条文にさかのぼって、判定の順序と必要書類、そして見落とされやすい提出期限を、人事の実務手順として整理します。

01まず年齢で3つに分かれる

国外に住む家族を扶養に入れられるかどうかは、まず「その親族が何歳か」で決まります。

外国籍の社員から「母国の家族を扶養に入れたい」という申出を受けたとき、人事が最初に確認するのは年齢です。扶養親族とは、居住者と生計を一にする親族等のうち合計所得金額が58万円以下である方をいいます(所得税法2条1項34号)。このうち控除の対象になる「控除対象扶養親族」は、居住者であれば16歳以上であれば足ります(同34号の2イ)。

ところが非居住者である扶養親族については、令和5年分以後の所得税から範囲が絞られました。同34号の2ロは、次の者に限ると定めています。

  • 年齢16歳以上30歳未満の者
  • 年齢70歳以上の者
  • 年齢30歳以上70歳未満の者であって、次のいずれかに該当する者
    • 留学により国内に住所および居所を有しなくなった者
    • 障害者
    • その居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者
非居住者である扶養親族の年齢区分 16歳以上30歳未満・70歳以上は対象、30歳以上70歳未満は3つの例外のみ
図1:非居住者の扶養親族は年齢で3つに分かれ、真ん中だけ扱いが違う

※この絞り込みが令和5年分以後の所得税について適用されることは、国税庁タックスアンサー No.1180(扶養控除)にも明記されています。

0230歳以上70歳未満だけ扱いが違う

実務でつまずくのはここです。外国籍社員が扶養に入れたいと考える家族は、多くの場合母国にいる両親です。ご本人が20代後半から30代であれば、ご両親は50代から60代であることが多く、ちょうど「30歳以上70歳未満」の区分に入ります

この区分は、3つの例外のいずれかに当てはまらない限り控除対象になりません。ご両親が健康で就労しており、留学もしていない場合、残るのは38万円以上の送金だけです。つまり多くのケースで、扶養控除の可否は送金の実績と記録に帰着します。

16歳以上30歳未満なら送金額は問われない

逆に、母国にいる弟妹や子(16歳以上30歳未満)については、38万円という金額の要件はかかりません。ただし生計を一にしていることは扶養親族の要件として必要で、それを明らかにする書類の提出・提示は求められます(後述)。「若い親族なら書類がいらない」という意味ではない点にご注意ください。

0338万円要件の数え方

38万円は「親族1人ごと」に、「その年(暦年)」で、「生活費または教育費に充てるための支払」を数えます。

条文は「その居住者からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を三十八万円以上受けている者」と書かれています(所得税法2条1項34号の2ロ(3))。ここから読み取るべき点は3つです。

  • 親族1人ごとに判定する:条文は支払を受けている親族その人を基準にしています。3人の親族に合計38万円を送っても、1人あたりでは満たしません
  • その年(暦年)で数える:年をまたいだ合計ではありません。12月中の送金も、その年の分として数えます
  • 使いみちが限定されている:生活費または教育費に充てるためのものです。資産の購入資金や事業資金の送金は、この要件の対象ではありません
38万円要件の読み方。親族1人ごと、その年(暦年)で、生活費または教育費に充てるための支払を数える
図2:38万円は「1人ごと・暦年・使いみち」で数える

送金の形を、記録が残る方法にしておく

要件を満たしていても、それを書類で示せなければ控除は受けられません。現金の手渡しや、第三者名義の口座を経由した送金は、「誰が誰に、いくら、何のために支払ったのか」を示しにくくなります。社員本人の口座から親族本人の口座へ、金融機関を通じて送る形にしておくと、年末に慌てずに済みます。

04必要な書類と、その期限

期限は「年末調整の作業をする日」ではありません。その年最後に給与等の支払を受ける日の前日までです。

所得税法194条は、国外に居住する親族について次の3つを求めています。

  • 申告書への記載:扶養控除等申告書に、その親族が非居住者である親族である旨等を記載します(同条1項7号)
  • 親族に該当する旨を証する書類:この記載をした居住者は、当該書類を提出または提示しなければなりません(同条5項)。留学に該当することを理由とする場合は、それを証する書類もあわせて必要です
  • 生計を一にすることを明らかにする書類:年末調整で控除を受けようとする場合、その年最後に給与等の支払を受ける日の前日までに生計を一にする事実を記載した申告書を提出し(同条6項)、その事実を明らかにする書類を提出または提示します(同条7項)。38万円要件で判定する場合は、38万円以上であることを明らかにする書類も必要です
呼び名実際に提出・提示するもの根拠
親族関係書類①戸籍の附票の写しその他の国・地方公共団体が発行した書類+旅券(パスポート)の写し、または②外国政府・外国の地方公共団体が発行した書類(その親族の氏名・生年月日・住所または居所の記載があるもの所得税法施行規則47条の2第7項
送金関係書類①金融機関の書類(為替取引で本人からその親族へ支払ったことが分かるもの)②クレジットカード等購入あっせん業者の書類(いわゆる家族カードの利用明細)③電子決済手段等取引業者の書類同規則47条の2第8項
留学を証する書類外国における査証に類する書類の写し、または外国における在留カードに相当する書類の写し同規則47条の2第9項

いずれも外国語で作成されている場合はその翻訳文も必要です(同規則47条の2第7項〜第9項)。

送金が年3回以上なら、送金記録を全部そろえなくてよい

同一の国外居住親族にその年3回以上支払っている場合は、その年のすべての送金関係書類の提出・提示に代えて、①一定事項を記載した明細書②その年の最初と最後の支払に係る送金関係書類を出せば足ります(所得税基本通達120-9)。ただし38万円要件で扶養控除を受ける場合に、最初と最後の支払の合計額が38万円未満のときは、合計額が38万円以上であることが明らかとなる送金関係書類もあわせて必要です。提出・提示しなかった送金関係書類は保管し、税務署長から求められたときに提出します。

年末調整の場面(法194条5項・7項)でも、これらの書類の取扱いは120-7〜120-9に準じます(所基通194〜198共-3)。

実務上いちばん見落とされるのが期限の読み方です。12月の給与で年末調整をする会社であれば、12月の給与支払日の前日が期限になります。「年末調整の計算をする日まで」でも「12月31日まで」でもありません。

国外扶養親族の書類と期限。期限はその年最後に給与等の支払を受ける日の前日まで。所得税法194条1項7号・5項・6項・7項
図3:194条が求める3つの書類と、見落とされやすい期限

05「親族関係書類」は通達が置いた略称

実務では「親族関係書類」「送金関係書類」という呼び名が定着しています。これは所得税基本通達が置いた略称です。120-7が「規則第47条の2第5項又は第7項に規定する書類」を親族関係書類、同120-8が「同条第6項、第8項又は第10項に規定する書類」を送金関係書類と呼んでいます。一方で、所得税法・同法施行令・同法施行規則の条文には、この二語は出てきません(2026年9月6日に施行令施行規則の全文をe-Gov法令検索で検索した結果、いずれも0件)。

つまり法令が求めているのは、あくまで親族に該当する旨を証する書類(194条5項)と生計を一にすることを明らかにする書類(同7項)であって、「親族関係書類」はその中身を指す通達上の呼び名です。呼び名を探すのではなく、この2つの役割を果たす書類が揃っているかで判断してください。

1通で足りなくても、組み合わせで足りる

国によって発行される公的書類の名称は異なるため、「戸籍謄本に相当するものが無い」という相談は珍しくありません。この点について所基通120-7は、国・地方公共団体または外国政府・外国の地方公共団体が発行した2以上の書類によって親族に該当する旨が証明される場合、その2以上の書類が親族関係書類に該当するとしています。出生証明書と婚姻証明書を組み合わせるといった対応が可能です。外国語の書類には翻訳文を添えます。

06人事の進め方——10月に動く

  • 10月:対象になりそうな社員に案内を出す。親族の氏名・生年月日(年齢区分の判定に必要)と、送金の方法を確認する
  • 10〜11月:親族関係を示す公的書類と翻訳文を取り寄せてもらう。母国での発行に数週間かかる国があるため、ここが最も時間を要する
  • 11月:送金記録を1人ごとに集計する。30歳以上70歳未満の親族については38万円に達しているかを確認し、不足する場合は年内に手当てするか、対象から外す判断をする
  • 12月給与支払日の前日まで:申告書と書類を揃える(194条6項・7項)

年齢区分の判定は生年月日が要ります。「両親を扶養に入れたい」という申出を受けた時点で年齢を確認しておけば、30歳以上70歳未満に当たる場合に、送金の実績づくりを年内に間に合わせられます。11月に確認してから動くと、間に合わないことがあります。

国外扶養親族の年末調整に向けた段取り。10月に案内、10〜11月に公的書類と翻訳文、11月に送金記録の集計、12月給与支払日の前日までに書類を揃える
図4:10月から動く――公的書類の取り寄せが最も時間を要する

主な根拠資料

本記事の条文・通達番号は2026年9月6日にe-Gov法令検索と国税庁の公表資料で確認しました。扶養親族に当たるかどうかはその年12月31日の現況で判定します。国ごとに発行される公的書類が異なるため、実際の書類の当てはめは個別にご確認ください。

07よくある質問(FAQ)

母国にいる40代の父母を扶養に入れたいと言われました。認められますか。

そのままでは認められません。非居住者である扶養親族のうち30歳以上70歳未満の方は、①留学により国内に住所および居所を有しなくなった、②障害者である、③その年に生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている、のいずれかに当てはまる場合に限って控除対象扶養親族になります(所得税法2条1項34号の2ロ)。ご両親が40代であれば、実務上は③の送金要件を満たすかどうかで判断することになります。

38万円は、扶養に入れる親族の人数分をまとめて判定してよいですか。

いいえ。条文は「その居住者からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を三十八万円以上受けている者」と、支払を受けている親族その人を基準に書かれています。したがって親族1人ごとに38万円以上かどうかを判定します。3人に合計38万円を送金しても、1人あたりでは満たしません。

書類はいつまでに集めればよいですか。

年末調整で控除を受けようとする場合は、その年最後に給与等の支払を受ける日の前日までに、生計を一にする事実を記載した申告書を提出する必要があります(所得税法194条6項)。12月の給与で年末調整をする会社であれば、12月の給与支払日の前日が期限です。「年末調整の作業をする日まで」ではないので、送金記録の取り寄せに時間がかかることを見込んで、10月中には案内を出しておくのが安全です。

「親族関係書類」「送金関係書類」という書類は、法律で決まっているのですか。

この呼び名は所得税法・同法施行令・同法施行規則には出てきません。所得税基本通達120-7・120-8が、施行規則の定める書類を指す略称として置いたものです。法律が求めているのは、親族に該当する旨を証する書類(所得税法194条5項)と、生計を一にすることを明らかにする書類(同7項)です。呼び名ではなく、この2つが揃っているかどうかで判断してください。

扶養親族になるための所得の要件はいくらですか。

扶養親族は、居住者と生計を一にする親族等のうち合計所得金額が58万円以下である方をいいます(所得税法2条1項34号)。国外に居住している親族についても、この所得要件は同じように当てはまります。

【参照】所得税法(e-Gov法令検索)2条1項34号・34号の2、194条/国税庁タックスアンサー No.1180 扶養控除。本記事は一般的な解説であり、個別の判断は事実関係により異なります。

🏢 年末調整の前に、対象者の切り分けから

国外扶養親族の年齢区分の判定、送金記録の集計、書類の要否まで。確定申告が必要になる社員の切り分けとあわせて、BIG4出身の税理士が引き取ります。人事の作業はご紹介と完了確認だけです。

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山口 淳也
この記事の監修

公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表

日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。