士業が押さえるべき論点:母国からの仕送りは非課税になるのか?課税リスクの判断基準

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士業が押さえるべき論点:母国からの仕送りは非課税になるのか?課税リスクの判断基準

母国からの仕送りは非課税になるのか。送金課税の判断基準を士業向けに体系化。

送金にまつわる課税は、本人が非永住者に当たるかどうかでも大きく変わります。あわせて非永住者の課税範囲と送金課税(5年ルール)もご確認ください。

01仕送りは課税対象になるのか?基本原則を確認

仕送りパターン非課税か判定の決め手
必要な都度受け取る生活費・教育費非課税扶養義務者相互間の贈与で通常必要と認められるもの(相法21の3①二)
数年分をまとめた一括送金要注意必要な都度直接充てたとはいえず非課税外(相基通21の3-5)
不動産購入資金(数千万円)贈与税対象用途が生活費・教育費を超える
結婚・出産・就学の祝金非課税社会通念上相当と認められる範囲内(相基通21の3-10)
事業資金として送金贈与税対象生活費ではない
⚠ 国外送金等調書の網:100万円超の送金・受領については、金融機関が「国外送金等調書」を税務署に提出します(国外送金等調書法4条1項、同法施行令8条1項)。受領した本人に調書の提出義務はありません。これとは別に、その年12月31日時点で5,000万円を超える国外財産を有する居住者(非永住者を除く)は、翌年6月30日までに国外財産調書を提出します(同法5条1項)。日本の口座で受け取った送金は国内財産なので、受領そのものが国外財産調書の対象になるわけではありません。
POINT 01
居住者区分が起点
非永住者は国外源泉所得のうち国内で支払われたものと国外から送金されたものが課税対象(所法7条1項2号)。非永住者以外の居住者は全世界所得課税(同項1号)。
POINT 02
仕送りの定義
親族からの贈与か、本人の国外所得かで扱いが全く異なる。立証責任は受領者側に。
POINT 03
証憑の重要性
送金者・送金日・金額・趣旨を記録。後日税務調査で問題化しやすい論点。
在日外国人が、母国に住む親や親族から生活費や学費のための仕送りを受けることは珍しくありません。このような送金については、原則として贈与税や所得税の課税対象外とされます。 根拠は相続税法第21条の3第1項第2号です(同項第1号は法人からの贈与に関する規定です)。条文は次のとおりです: 「次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。……二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」 非課税となるのは、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産に限られます(相続税法基本通達21の3-5)。生活費・教育費の名目で受け取っても、預貯金にした場合や株式・家屋の買入代金に充てた場合は、通常必要と認められるもの以外として取り扱われます(同通達)。
母国からの仕送りが贈与税・所得税の課税対象になるかの判定フローチャート
図:仕送りの課税判定。扶養義務者からの生活費・教育費で社会通念上相当なら非課税。用途逸脱・高額一括は課税リスク。

02非課税とならないおそれのあるケース

NG 01
名義上の家族への送金
実態のない「親」や「兄弟」名義の口座への送金。戸籍・家族関係証明がないと贈与・所得課税のリスク。
NG 02
事業資金・投資資金として使用
「生活費」名目で送金しながら、現地で不動産購入・事業投資に充当。所得認定リスク。
NG 03
高額・不規則な送金
必要な都度ではない一括送金(数年分をまとめて贈与する等)は贈与税の課税対象になり得る(相基通21の3-5)。
NG 04
送金原資が不明確
本人の所得・貯蓄から説明できない金額の送金。マネーロンダリング疑義で税務調査の引き金に。
以下のようなケースでは、税務署が贈与税または所得税の課税対象とみなす可能性があります。

① 高額かつ一時的な送金

数年分の生活費をまとめて一括で送金された場合は、生活費として必要な都度取得したとはいえず、非課税扱いが否認されることがあります。国税不服審判所令和元年9月24日裁決は、月額約327,240円の施設利用料に対して入居前に多額の金銭を一括で贈与した事案について、「必要な都度取得されたとはいえず」相続税法21条の3第1項2号の非課税財産に当たらないと判断しています。

② 投資・資産購入などの用途

送金されたお金で不動産を購入したり、証券投資に使うなど、生活費とは無関係の使い方をしていると、贈与税の課税対象となります(相基通21の3-5)。なお、個人からの贈与により取得したものに所得税は課されません(所法9条1項17号)ので、一時所得として所得税がかかるわけではありません。実質的にご本人が稼得した所得であれば、④のとおり所得税の対象です(所法12条)。

③ 送金者が親族でない場合

扶養義務者(配偶者及び民法877条に規定する親族。相法1条の2第1号)以外からの送金は、たとえ生活費名目でも非課税対象外です。恋人・友人などからの援助は、基本的に贈与と見なされます。法人(企業)からの贈与は贈与税ではなく所得税の対象です(相法21の3①一、国税庁タックスアンサーNo.4405)。

④ 実質的に報酬・所得とみなされる場合

本人が働いた報酬を家族名義で受け取り、それを仕送りと称して日本へ移動させている場合、実質的には本人の所得として所得税課税の対象になります(実質所得者課税の原則。所法12条)。

03税務署が確認するポイント

確認ポイント非課税の根拠課税リスクのサイン
受取人の確認直系血族・配偶者・兄弟姉妹(親族関係証明あり)他人名義・実態不明な口座
金額の妥当性被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲(相基通21の3-6)実際の需要に対応していない支出
送金の頻度定期的・規則的(月次等)不規則・大口一括送金
使途生活費・医療費・教育費事業投資・不動産購入
送金原資本人の給与・事業所得から明確原資不明・現金引出後の送金
送金元国側の制度日本の贈与税の非課税判定は相法21の3①二の要件だけで決まる送金元国の贈与税・相続税は別途その国の専門家に確認が必要
  • 送金者との関係(家族・親族・扶養義務の有無)
  • 送金の目的と実際の使用用途(家賃・学費・生活費か?)
  • 送金の頻度・金額(常識的か?生活実態と合っているか?)
  • 送金記録(銀行・送金アプリの明細)
  • 家族関係証明書(出生証明・戸籍など)
これらが不十分または疑義がある場合、税務調査の対象となる可能性があります。

04国外送金等調書とマネロン対策の視点

📋 国外送金等調書制度(内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律4条1項、同法施行令8条1項):金融機関は100万円超の国外送金等を「国外送金等調書」として税務署に提出します。要否は1回の国外送金等ごとに判定され、当方が同法4条、同法施行令8条、同法施行規則10条・11条を確認した範囲では、複数の取引を合算して判定する規定は見当たりません。国外送金等をする者は告知書に個人番号(マイナンバー)を記載して提出します(同法3条1項)。
項目内容
報告閾値100万円超(1回の国外送金等ごと。法4条1項・施行令8条1項)
報告対象(受領の場合)受領者の氏名・個人番号/住所(本人口座の場合は口座の種類・番号)/受領金額/受領年月日/相手方の氏名/相手国名等(法4条1項2号、施行規則10条2項)。送金原因が記載事項となるのは日本から出す国外送金の場合(法4条1項1号、施行規則10条1項5号)
提出義務者銀行・長期信用銀行・信用金庫・労働金庫・信用協同組合等、貯金の受入れができる農協・漁協等、日本銀行・農林中央金庫・商工組合中央金庫・日本政策投資銀行・国際協力銀行、資金移動業者(法2条3号、施行令2条各号)
提出時期送金月の翌月末
マネロン視点FATF基準により金融機関のKYC・AML義務強化
分割送金の扱い調書の要否は1回の国外送金等ごとに判定(法4条1項・施行令8条1項)。合算して判定する規定は法・政省令に見当たらない
海外から100万円超の送金を受けた場合、銀行や送金事業者は「国外送金等調書」を国税庁へ提出します(本人の申告とは別に、税務署側で把握されます)。 このため、たとえ非課税であっても、「知られていないだろう」は通用しません。出所・用途を説明できる証拠の保管が重要です。

05非課税を保つための実務対応

PRACT 01
送金理由の明文化
送金時に「生活費仕送り」「医療費」等を明記。銀行送金依頼書のメモ欄を活用。
PRACT 02
家族関係証明書の常備
戸籍謄本・住民票・在留カードコピー。受取人との関係性を客観的に証明。
PRACT 03
送金履歴の年次整理
毎年末に総額・頻度・理由を整理した送金台帳作成。税務調査時の即答資料として有用。
  • 送金目的の明確化:生活費・教育費などに限定
  • 金額・頻度:法定の金額基準はなく、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲かどうかで判定される(相基通21の3-6)
  • 送金者との関係を証明:家族関係書類の翻訳付き保管
  • 送金記録の保管:贈与税の更正・決定等は申告期限から6年(偽りその他不正の行為があれば7年)まで可能なため(相法37条1項・4項)、最低6年、できれば7年の保管を推奨
  • 用途メモの作成:学費・家賃・食費など用途を明記

06実務上の証拠書類の整備

税務調査で仕送りの非課税性を主張するには、以下の書類を整備しておくことが重要です。

  • 送金記録:銀行の海外送金明細書(送金元・金額・日付・受取人が明記されたもの)
  • 使途の証明:家賃の領収書、学費の納付書、医療費の領収書など
  • 親族関係の証明:戸籍謄本や出生証明書の翻訳(送金者との続柄を証明)
  • 扶養の実態:被扶養者の収入状況を示す書類(非課税証明書等)

07送金額の目安と「社会通念上相当」の判断基準

法律には具体的な金額基準はありませんが、実務上は以下のポイントで「相当性」が判断されます。

  • 受取人の生活水準・所在地の物価に照らして妥当な金額か
  • 送金頻度が生活費としての実態に合っているか(毎月の定額送金は合理性が高い)
  • 受取人に他の収入源がある場合、仕送りが「必要」といえるか

金額そのものに法定の基準はなく、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲かどうかで判定されます(相続税法基本通達21の3-6)。扶養者の資力が大きければ同額でも通常必要と認められ得る一方、実際の需要に対応しない支出は金額が小さくても非課税から外れます。したがって、安全圏として金額帯を示すことはできません。

08まとめ:非課税とするには"実態"が全て

海外からの仕送りは原則非課税ですが、その判断は「送金者との関係」「目的」「使途」「金額」の実態によって左右されます。 税理士や行政書士は、外国人クライアントに対し、証明資料の整備・税務上の判断・誤解回避の観点から助言する役割が期待されています。

09よくある質問(FAQ)

Q. 外国人が母国から送金を受けた場合、贈与税は課税されますか?

送金の目的によって判断が分かれます。扶養義務者からの生活費・教育費として通常必要と認められる範囲であれば贈与税は非課税ですが、不動産購入資金や事業資金など生活費の範囲を超える送金は贈与税の課税対象となり得ます。100万円超の送金は「国外送金等調書」として金融機関から税務署へ報告されるため、用途と金額の整合性を記録しておくことが重要です。

Q. 仕送りを投資に回した場合はどうなりますか?

生活費・教育費として受け取った資金を株式投資や不動産購入に充てた場合、贈与税の課税対象となります。「生活費として通常必要と認められるもの」に限定されます。

Q. 海外送金は税務署に把握されますか?

はい。100万円超の海外送金・受領は金融機関から税務署へ「国外送金等調書」として報告されます。把握されていないと考えるのは危険です。

Q. 親ではなく兄弟からの仕送りも非課税ですか?

兄弟姉妹は民法877条1項により互いに扶養をする義務があり、相続税法1条の2第1号の「扶養義務者」に当たります。したがって親からの仕送りと同じく、生活費・教育費として必要な都度直接これらの用に充てられ、通常必要と認められる範囲であれば非課税です(相基通21の3-5、21の3-6)。実務上は、親族関係と使途を示す資料の整備が重要になります。

ACTION | 仕送りで詰まないために押さえる3つ
  1. 用途と金額の整合性管理生活費・学費・医療費の範囲内に収める。事業資金等は別契約(贈与契約書等)で明確化。
  2. 送金履歴・領収書の保存銀行記録・送金理由・現地での使途を6年(不正があれば7年)遡れる状態に。相法37条1項・4項の期間制限に対応。
  3. 大型送金前の事前確認数年分をまとめる一括送金は事前に税理士へ相談。贈与契約と都度の仕送りの線引きを明確に。

主な根拠資料

本記事は2026年9月時点の法令・通達等に基づいています。個別の取扱いは事実関係により異なりますので、実務では上記の一次情報をご確認ください。

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山口 淳也
この記事の監修

公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表

日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。