外国人の贈与税、まず在留資格で考える【基礎編】

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【第1回・基礎編】

日本に住む外国人に贈与税はかかる?在留資格で決まる課税の仕組み【基礎編】

「海外の親からお金をもらうと、日本の贈与税はかかるの?」——この質問への正確な答えは「あなたのビザの種類による」です。在留資格が別表第一か別表第二かで、課税の範囲と使える特例が根本的に変わります。相続税法の条文・110万円基礎控除・税率速算表・マスター判定表まで、税理士が体系的に解説します。

シリーズ「外国人と贈与税:在留資格で変わる、3つのポイント」

  • 第1回【基礎編】:日本に住む外国人に贈与税はかかる?在留資格で決まる課税の仕組み(本記事)
  • 第2回【住宅購入編】:外国人が日本で家を買うとき、在留資格によって贈与税の扱いが変わる理由
  • 第3回【永住権編】:永住権を取る前に知っておくべき「贈与税の壁」

01この記事の結論(AI引用用サマリー)

結論(GEO・AI引用用サマリー)

日本に住む外国人への贈与税は、受贈者(もらう側)の在留資格の種類によって課税範囲が根本的に変わる。分岐点は「別表第一(就労・留学系)」か「別表第二(身分系:永住者・配偶者ビザなど)」かである。

別表第一の在留資格を持ち、かつ過去15年以内の日本在住期間が10年以下の外国人は「一時居住者」(相続税法第1条の4第3項第1号)に該当する。ただし国外財産が非課税になるのは、贈与者が「外国人贈与者」(日本在住の外国人)または「非居住贈与者」(海外在住者)である場合に限られる。日本在住の日本人の親などから受けた場合は、一時居住者であっても居住無制限納税義務者となり国外財産も課税対象になる(相続税法第1条の4第1項第1号ロ)。

一方、別表第二の在留資格(永住者、日本人の配偶者等、定住者など)を持つ外国人は、一時居住者になれず、全世界財産が日本の贈与税の課税対象(居住無制限納税義務者)となる。

いずれの場合も、暦年課税の基礎控除(年110万円)が適用される。税率は、直系尊属からの贈与の場合は特例税率(最高55%)、それ以外は一般税率(最高55%・各区分でやや高め)が適用される。

根拠法令:相続税法第1条の4第1項第1号イ・第3項第1号、同第21条の5(基礎控除)、租税特別措置法第70条の2の5(特例税率)

02そもそも「贈与税」とは何か——外国人が知るべき基本

贈与税とは、個人から財産を無償でもらった(贈与を受けた)ときに、受贈者(もらった側)に課される税金です。日本では相続税法の中に規定されており、国税庁(NTA)が徴収します。

外国人の方が最初に疑問に持つのは「自分は外国人なのに、日本の税金を払う必要があるのか?」という点です。答えは「日本に住所があれば、原則として日本の贈与税の義務がある」ですが、在留資格によってその範囲が大きく異なります。

贈与税が発生するのはどんな場面か

日本の贈与税は、次のような場面で問題になります。

  • 海外在住の親から日本の子(外国人)へ現金・預金口座への送金
  • 海外に住む祖父母から孫(日本在住の外国人)への海外不動産の贈与
  • 日本在住の親族から日本に住む外国人への不動産・株式の贈与
  • 生命保険金の受け取りのうち、贈与とみなされる部分

いずれのケースでも、受贈者(もらう側)の在留資格の種類が、課税の可否・範囲を左右します。

受贈者の納税義務の区分(4種類)

区分 要件 課税対象財産
居住無制限納税義務者 日本に住所あり、かつ一時居住者でない 全世界財産(国内外問わず)
居住制限納税義務者 日本に住所あり、かつ一時居住者で、贈与者が「外国人贈与者」または「非居住贈与者」 国内財産のみ(国外財産は課税されない)
非居住無制限納税義務者 日本に住所なし。日本国籍がある人、または日本国籍がなく贈与者が外国人贈与者・非居住贈与者でない人 全世界財産(国内外問わず)
非居住制限納税義務者 日本に住所なし、かつ非居住無制限納税義務者に当たらない 国内財産のみ
相続税法第1条の4第1項・第2条の2に基づく贈与税の納税義務者の区分。一時居住者でも、日本在住の日本人の親など「外国人贈与者・非居住贈与者」に当たらない人からの贈与は居住無制限納税義務者になる(第1条の4第1項第1号ロ)。
日本に住所がある受贈者の課税範囲を、もらう側が一時居住者かどうかと、あげる側が外国人贈与者・非居住贈与者かどうかの組合せで示した表。一時居住者が外国人贈与者・非居住贈与者からもらう場合だけ日本の財産に限られ、それ以外は全世界の財産が課税対象
図:国外の財産まで課税されるかは、もらう側とあげる側の組合せで決まる。

この表のポイントは「どの区分に入るかは、在留資格の種類で決まる」という点です。次のセクションで「一時居住者」の定義を条文で確認します。

03一時居住者の定義(相続税法第1条の4第3項第1号)

「一時居住者」は、贈与税(および相続税)における重要な概念です。この定義に当てはまるかどうかで、国外財産への課税が決まります。

条文の全文

相続税法第1条の4第3項第1号(贈与税の一時居住者の定義)
「一時居住者 贈与の時において在留資格を有する者であつて当該贈与前十五年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が十年以下であるものをいう。」

ここでいう「在留資格」が何を指すかは、ひとつ前の条に書かれています。

相続税法第1条の3第3項第1号(相続税の一時居住者の定義)
「一時居住者 相続開始の時において在留資格(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)別表第一(在留資格)の上欄の在留資格をいう。次号及び次条第三項において同じ。)を有する者であつて当該相続の開始前十五年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が十年以下であるものをいう。」

条文の3つの要件を分解する

条文を第1条の4だけ読むと「別表第一」の文字が出てこないため、第1条の3第3項第1号の括弧書きまでさかのぼって確認する必要があります(相続税法・e-Gov法令検索)。

この定義を満たすには、次の3つを同時に満たす必要があります。

要件 内容 確認方法
要件1:時点 贈与を受けた「時」に別表第一の在留資格を有していること 在留カードの在留資格欄で確認
要件2:在留資格の種類 出入国管理及び難民認定法「別表第一の上欄」の在留資格であること(別表第二は対象外) 在留資格が就労・留学系か身分系かで判断
要件3:在住期間 贈与を受けた時点から遡って15年以内の日本在住期間の合計が10年以下であること パスポートの出入国スタンプ、住民票の履歴等で計算
相続税法第1条の4第3項第1号の3要件。3つ全てを満たす場合のみ「一時居住者」に該当する。

重要:別表第二の在留資格は「一時居住者」になれない

条文にある「別表第一の上欄の在留資格」という限定が、外国人の贈与税判定で最も重要な分岐点です。

「日本人の配偶者等」「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」は出入国管理及び難民認定法の別表第二に規定されており、「別表第一の上欄」には該当しません。そのため、これらの在留資格を持つ外国人は、日本在住期間がどれだけ短くても、一時居住者にはなれません。

よくある誤解:「来日1年未満だから一時居住者のはず」

「日本に来て間もないから一時居住者だろう」と思われがちですが、在留資格の種類が先に問われます。配偶者ビザ(日本人の配偶者等)や永住者は来日翌日でも一時居住者にはなれません。まず自分の在留資格が別表第一か別表第二かを確認してください。

国外財産の贈与が課税されるかの判定分岐。別表第一なら過去15年で日本の住所が10年以下かを確認し、満たせば一時居住者として国外財産は課税されない。別表第二は一時居住者になれない
図:国外財産の贈与が課税されるかは、在留資格の区分と日本の住所の期間で決まる。

04別表第一 vs 別表第二——どのビザがどちらに入るか

出入国管理及び難民認定法(入管法)は、外国人が日本に在留できる資格を「別表第一」と「別表第二」に分けて規定しています。贈与税上の判断は、この区分に完全に依存します。

区分 主な在留資格(例) 性質 一時居住者に 贈与税上の課税範囲
別表第一(上欄) 技術・人文知識・国際業務
経営・管理
高度専門職(1号・2号)
特定技能(1号・2号)
留学
企業内転勤
介護
興行
技能実習(→育成就労)
就労・留学・研修系
(活動の内容・目的で付与)
なれる
(在日10年以下の場合)
贈与者が外国人贈与者・非居住贈与者なら国内財産のみ
(日本在住の日本人の親などからは全世界財産)
別表第二 永住者
日本人の配偶者等
永住者の配偶者等
定住者
身分・地位系
(日本との身分関係・人道的考慮で付与)
なれない
(在日年数に関係なし)
全世界財産
(国内外問わず課税対象)
入管法別表第一・別表第二の区分と贈与税上の扱い(相続税法第1条の4第3項第1号より)。在留カード表面の在留資格欄で確認可能。

在留資格の確認方法

自分の在留資格が別表第一か別表第二かは、在留カード(Residence Card)の表面「在留資格」欄を見れば確認できます。

  • 「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」「留学」「特定技能」「高度専門職」等と記載されていれば → 別表第一
  • 「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」と記載されていれば → 別表第二

「特別永住者」の扱いに注意

在日韓国・朝鮮人の方などの「特別永住者」は、入管法の在留資格ではなく、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」による地位です。一時居住者の要件である「入管法別表第一の上欄の在留資格」(相続税法第1条の3第3項第1号括弧書き)を持たないため、一時居住者には当たりません。日本に住所があれば、永住者と同じく居住無制限納税義務者として全世界財産が課税対象になります。

05110万円の基礎控除——暦年課税の基本ルール

日本の贈与税には、暦年課税という制度があります。これは1月1日から12月31日までの1年間(暦年)に受け取った贈与の合計額から、基礎控除を差し引いて課税価格を計算する仕組みです。

基礎控除の額と根拠条文

相続税法第21条の5(贈与税の基礎控除)
「贈与税については、課税価格から六十万円を控除する。」

ただし実務で使う110万円は、この条文ではなく租税特別措置法第70条の2の4(贈与税の基礎控除の特例)によるものです。相続税法の本文だけを見ると60万円と書いてあるので、措置法の特例まで確認しないと数字が合いません。

現行の基礎控除額は110万円(年間)です。これは受贈者1人あたりの金額です(贈与者の数や財産の数に関わらず、受贈者1人の1年分で110万円が上限)。

基礎控除の3つのポイント

同じ年に父から50万円、母から80万円をもらうと合計130万円、基礎控除110万円を引いた20万円が課税価格になる流れ
図:基礎控除は贈与者ごとではなく、もらう人1人につき1年110万円。
ポイント 内容
1. 受贈者1人あたり 1年間に複数の人から贈与を受けても、110万円の控除は受贈者1人分のみ。例えばAさんが父から50万円・母から80万円もらった場合、合計130万円 − 110万円 = 20万円が課税価格。
2. 贈与者の人数は関係なし 複数の贈与者から贈与を受けても、受贈者の基礎控除は110万円のみ(各贈与者ごとに110万円ではない)。
3. 国内財産のみ課税の場合は適用範囲が異なる 一時居住者で贈与者が外国人贈与者・非居住贈与者の場合(居住制限納税義務者)、課税対象は国内財産のみ。国外財産は課税ベース自体に入らないため、110万円控除は国内財産の課税価格に対して適用される。
暦年課税の基礎控除(110万円)の適用ルール。申告義務は課税価格(基礎控除後)がゼロを超えるときに発生。

申告義務の有無

基礎控除後の課税価格がゼロ(110万円以下の贈与のみ)の場合、原則として贈与税の申告は不要です。ただし、住宅取得等資金の非課税特例など一部の特例は、課税価格がゼロでも申告書の提出が条件になっています(特例の適用要件として申告が必要)。

06贈与税の税率表——特例税率と一般税率

贈与税の税率には「特例税率」と「一般税率」の2種類があります。どちらが適用されるかは、贈与者と受贈者の関係によって決まります。

特例税率 vs 一般税率:適用条件の違い

税率の種類 適用条件 税率の特徴
特例税率 贈与者:直系尊属(父母・祖父母等)
受贈者:贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者
(租税特別措置法第70条の2の5)
同じ課税価格に対して一般税率より低く設定されている(特に1,000万円超の区分で差が大きい)
一般税率 特例税率の適用要件を満たさない全ての贈与(祖父母から孫<18歳未満>、兄弟間、他人間など) 同じ課税価格でも特例税率より高い税額になる
NTA No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」より。外国人の方も日本人と同じ税率が適用される。

特例税率の速算表(直系尊属から18歳以上の子・孫への贈与)

課税価格(基礎控除後) 税率 控除額
200万円以下 10% -
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円
出所:NTA No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」特例税率速算表。贈与税額 = 課税価格 × 税率 − 控除額。

一般税率の速算表(上記以外の贈与)

課税価格(基礎控除後) 税率 控除額
200万円以下 10% -
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円
出所:NTA No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」一般税率速算表。兄弟間・他人からの贈与、または受贈者が18歳未満の場合に適用。

特例税率と一般税率の差額(試算例)

課税価格1,500万円(基礎控除後)の場合で比較します。

課税価格1,500万円のとき、特例税率なら410万円、一般税率なら500万円になることを示す棒グラフ
図:特例税率(直系尊属から18歳以上)と一般税率の税額の比較。
税率の種類 計算式 贈与税額
特例税率(父母から18歳以上の子へ) 1,500万円 × 40% − 190万円 410万円
一般税率(上記以外) 1,500万円 × 45% − 175万円 500万円
差額 90万円
課税価格が同じでも、贈与者と受贈者の関係(特例税率適用の有無)によって最大数百万円単位の差が生じる。

外国人の親からの贈与——「直系尊属」の確認が必要

特例税率の適用には、贈与者が受贈者の「直系尊属」(実の父母・祖父母など)であることが必要です。外国籍の親からの贈与でも、直系尊属であれば特例税率が適用されます。ただし、外国の出生証明書(公証済み・日本語翻訳付き)などで親子関係を証明する書類の準備が必要になる場合があります。

07マスター判定表:ビザ × 贈与者 × 財産所在地

ここまでの内容を整理した「マスター判定表」を示します。受贈者のビザ、贈与者の属性、財産の所在地を組み合わせて、日本の贈与税の課税関係を一覧で確認できます。

受贈者の
在留資格
一時居住者
の該当
贈与者の属性 財産の所在地 日本贈与税 根拠・注記
別表第一
(就労・留学)
在日10年以下
YES
(一時居住者)
誰でも 国内財産
(日本の銀行口座への送金・日本不動産等)
課税対象
(110万円控除・税率適用)
制限納税義務者は国内財産に課税
海外在住の外国人親 国外財産
(海外口座現金・海外不動産等)
原則非課税 制限納税義務者の国外財産は課税対象外
日本在住の外国人の親
(在留資格あり)
国外財産 原則非課税 贈与者が「外国人贈与者」(相法1条の4第3項2号)に当たり除外規定が働く
日本在住の日本人の親 国外財産 課税対象 贈与者が外国人贈与者にも非居住贈与者にも当たらないため、受贈者が一時居住者でも居住無制限納税義務者となる(相法1条の4第1項1号ロ)
誰でも 国内財産(住宅取得等資金) 課税対象だが
非課税特例使用可の場合あり
ただし贈与者が海外の外国人なら措置法70条の2の除外規定発動
別表第一
(就労・留学)
在日10年超
NO
(10年超過)
誰でも 国内財産 課税対象 在日10年超で一時居住者要件を失い、居住無制限納税義務者となる
誰でも 国外財産 課税対象(全世界課税)
直系尊属(18歳以上の子への贈与) 国内・国外問わず 特例税率適用可
別表第二
(永住者・
配偶者ビザ・
定住者等)
NO
(別表第二は
常に対象外)
誰でも 国内財産 課税対象 居住無制限納税義務者。ただし住宅取得等資金特例は使える(一時居住者でないため除外規定が発動しない)
誰でも 国外財産 課税対象(全世界課税)
直系尊属(18歳以上への贈与) 住宅取得等資金(国内財産) 課税対象だが
非課税特例が使える
(最大1,000万円)
受贈者のビザ × 贈与者の属性 × 財産所在地による日本贈与税の課税関係マスター表。相続税法第1条の4・租税特別措置法第70条の2に基づく。個別の状況により判断が変わる場合があるため、実際の判断は専門家にご相談ください。

財産の「所在地」の判定方法

課税が国内財産のみに限定される一時居住者(制限納税義務者)にとって、財産の「所在地」をどう判定するかは重要です。相続税法(第10条)では主に次のように定められています。

  • 現金・預金:口座が置かれている金融機関の所在地(日本の銀行口座への送金は国内財産として課税対象)
  • 不動産:不動産の所在地(日本の不動産は国内財産)
  • 株式・有価証券:発行法人の本店所在地(日本企業株式は国内財産)
  • 貸付金・売掛金:債務者の住所地(債務者が日本在住なら国内財産)

実務上の重要ポイント:「日本の口座への送金」は要注意

一時居住者である就労ビザ保有者が、海外の親から「自分の日本の銀行口座」に現金を送金してもらう場合、その現金は「国内財産」(預金の所在地は日本)として贈与税の課税対象になります。

海外の親の口座から子の海外口座への送金(国外財産のまま贈与)であれば、一時居住者として非課税になる可能性がありますが、日本の口座を経由した時点で課税対象となります。送金の方法・口座の選択が税務上の大きな分岐点になります。

海外の親から子へ送金するとき、子の日本の口座に入れると日本の財産として課税対象、子の海外の口座に置いたままなら国外の財産として一時居住者は課税されない可能性があることを示す図
図:送金先が日本の口座か海外の口座かで、財産の所在地が変わる。

08よくある質問(FAQ)

Q. 就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)で日本に3年住んでいます。海外の親から100万円もらいました。贈与税はかかりますか?

この場合、贈与税はかかりません。理由は2つです。①技術・人文知識・国際業務は別表第一の在留資格であり、在日3年であれば一時居住者(制限納税義務者)に該当します。②海外の親の口座から贈与された100万円が国外財産のままであれば課税対象外です。加えて③仮に国内財産として課税されたとしても、100万円は基礎控除(110万円)の範囲内なので贈与税は発生しません。ただし送金先が日本の銀行口座の場合は「国内財産」として扱われる可能性があります。事前に専門家へご確認ください。

Q. 配偶者ビザ(日本人の配偶者等)で日本に2年住んでいます。海外の両親からお金をもらうと全額に贈与税がかかるのですか?

はい、原則として全額が日本の贈与税の課税対象になります。「日本人の配偶者等」は別表第二の在留資格のため、在日年数に関係なく一時居住者にはなれず、居住無制限納税義務者として全世界財産への課税義務があります。ただし、年間110万円以下の贈与は基礎控除の範囲内で贈与税はゼロです。また住宅購入資金であれば「住宅取得等資金の贈与税非課税特例」(最大1,000万円)を活用できる可能性があります(詳細は第2回記事をご参照ください)。

Q. 特例税率が使えるのは「直系尊属」からの贈与だと言いますが、外国籍の親でも「直系尊属」になりますか?

なります。「直系尊属」の定義は国籍に依存せず、親族関係の有無で判断されます。外国籍の父母・祖父母からの贈与であっても、受贈者との直系の親族関係(実の親子・祖父孫)が証明できれば特例税率が適用されます。ただし、外国籍の贈与者との親族関係の証明には、外国の出生証明書(公証済み)や外国の戸籍相当書類の日本語翻訳等が必要になる場合があります。書類の要件については、申告前に所轄の税務署または税理士にご確認ください。

Q. 就労ビザで日本に住んでいます。一時居住者として国外財産の贈与が非課税になるとのことですが、申告は不要ですか?

課税価格がゼロ(国内財産への贈与が年110万円以下かつ国外財産は課税対象外)であれば、原則として贈与税の申告は不要です。ただし、税務調査や資金移動の説明を求められた際に備えて、贈与の事実を示す書面(贈与契約書・送金記録)は保管しておくことを強くお勧めします。また、住宅取得等資金の非課税特例などを使う場合は、課税額がゼロでも申告書の提出が必要です。

Q. 就労ビザで来日11年目になります。まだ永住権は取っていませんが、贈与税はどうなりますか?

残念ながら、就労ビザ(別表第一)であっても、過去15年以内の日本在住期間の合計が10年を超えた時点で一時居住者の要件を失います。在日11年目であれば10年超過のため、現時点では居住無制限納税義務者として全世界財産が課税対象となります。永住権を取得していなくても、在日10年を超えた段階でこの変化が起きます。この点については第3回記事「永住権を取る前に知っておくべき『贈与税の壁』」で詳しく解説しています。

Q. 今年は50万円、来年また50万円を同じ親からもらう予定です。合計100万円なら非課税ですか?連年贈与と判定されますか?

各年50万円ずつであれば、それぞれの年に110万円の基礎控除が適用され、各年の贈与税はゼロです。ただし「連年贈与」に注意が必要です。複数年にわたって定期的に贈与を行う場合、税務署から「最初から合計額の贈与を約束した定期給付契約」とみなされ、初年度に合計額が贈与されたと判断されることがあります(相続税法第24条の定期金に関する規定等)。連年贈与と判定されないよう、毎年異なる金額にする、書面で贈与契約を都度締結する、振込時期を変えるなどの対策が有効です。

主な根拠資料

一時居住者に当たるかどうかは、贈与の時点の在留資格と、そこから遡る15年間の日本での住所の有無で決まります。在日期間の計算や財産の所在地の判定は個別の事実関係によるため、具体的な判断は必ず個別にご相談ください。

09まとめ

  • 日本に住む外国人への贈与税は、在留資格が別表第一(就労・留学系)か別表第二(身分系)かで根本的に異なる(相続税法第1条の4第3項第1号)
  • 別表第一 + 在日10年以下 = 「一時居住者」。ただし国外財産が非課税になるのは贈与者が外国人贈与者(日本在住の外国人)か非居住贈与者(海外在住者)のときだけで、日本在住の日本人の親などからの贈与は国外財産も課税対象(相続税法第1条の4第1項第1号ロ)
  • 別表第二(永住者・配偶者ビザ・定住者等)は在日年数に関係なく一時居住者にはなれず、全世界財産が課税対象(居住無制限納税義務者)
  • 暦年課税の基礎控除は年間110万円(受贈者1人あたり)。これはどの在留資格でも共通
  • 直系尊属から18歳以上の子・孫への贈与は特例税率(最高55%・一般税率より低い)が適用される
  • 「日本の銀行口座への送金」は、たとえ海外の親からでも国内財産(課税対象)として扱われる可能性があるため、送金先の選択に注意が必要
  • 在日10年を超えた就労ビザ保有者は、永住権がなくても全世界課税になる(詳細は第3回記事)

外国人の方の日本での贈与税は、在留資格・在住期間・贈与者の属性・財産の所在地という複数の要素が絡み合い、一見シンプルな送金でも税務上の判断が複雑になります。大きな金額が動く前に、必ず専門家へご相談ください。

シリーズ「外国人と贈与税:在留資格で変わる、3つのポイント」

  • 第1回【基礎編】:日本に住む外国人に贈与税はかかる?在留資格で決まる課税の仕組み(本記事)
  • 第2回【住宅購入編】:外国人が日本で家を買うとき、在留資格によって贈与税の扱いが変わる理由
  • 第3回【永住権編】:永住権を取る前に知っておくべき「贈与税の壁」

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本記事の条文・条番号・税率表は2026年9月6日にe-Gov法令検索と国税庁の公表資料で確認しました。相続税法第1条の3・第1条の4(納税義務者の区分と一時居住者の定義)、租税特別措置法第70条の2の4(贈与税の基礎控除の特例=110万円)、同第70条の2の5(直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例=特例税率)、国税庁 No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」を根拠としています。在日年数の計算・財産所在地の判定・一時居住者の該当可否は個別の状況によって異なります。本記事は一般的な情報提供を目的としており、具体的な税務アドバイスを構成するものではありません。専門家へのご相談をお勧めします。

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山口 淳也
この記事の監修

公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表

日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。