外国籍社員の確定申告費用は誰が負担するのか|会社負担の3つの型と給与課税

人事・経理のための費用設計

外国籍社員の確定申告費用は、誰が負担するのか

会社で費用を持ちたい——そう考えた瞬間に、給与課税・源泉徴収・支払調書・取引先登録という4つの論点が同時に立ち上がります。3つの型を並べて、どこで何が起きるのかを整理します。

01結論:3つの型と、それぞれに起きること

外国籍社員の確定申告を外部に依頼するとき、人事のご担当者が社内で最初に受ける質問はほぼ決まっています。「その費用、社員に自腹を切らせるのか」です。ここで止まると、どれだけ内容に納得していても稟議が進みません。

費用負担の形は、実務上3つに整理できます。どれを選ぶかで、従業員への課税・会社の源泉徴収義務・支払調書・取引先登録のすべてが変わります。

論点型①
本人が自己負担
型②
本人契約+課税手当
型③
会社が直接契約
従業員への給与課税なしあり(手当として明示)あり(経済的利益)
会社の源泉徴収義務(税理士報酬)なしなしあり
支払調書の作成不要不要必要になる場合あり
取引先登録・与信審査不要不要必要
会社の実負担ゼロ手当額+社会保険料の会社負担分報酬額
本人の手取りへの影響減る設計次第で維持できる課税分だけ減る
確定申告費用の負担の3つの型。型①本人自己負担、型②本人契約+課税手当(推奨)、型③会社が直接契約で、給与課税・源泉徴収・支払調書・取引先登録の扱いが変わる
図1:3つの型――誰と誰が契約し、どこで課税が起きるか

結論を先に書きます。会社として費用をご負担になりたい場合は、型②をお勧めしています。給与として通常の処理フローに乗るため、型③で発生する論点がいずれも立ち上がりません。ご本人にご負担いただける場合は、型①が最も簡素です。

02型①|ご本人が自己負担する

ご本人が税理士と契約し、ご本人が報酬を支払う形です。会社は対象者をご紹介いただくだけで、経理処理も税務処理も発生しません。

会社に源泉徴収義務は生じない

税理士報酬のうち、給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるものは源泉徴収の対象から外れます(所得税法第204条第2項第2号)。つまり給与を払う立場にないご本人が支払う限り、源泉徴収の必要がありません。国税庁は「会社員等である給与所得者が確定申告等のために税理士に報酬を支払っても、源泉徴収をする必要はありません」と明記しています(国税庁タックスアンサー No.2502)。ご本人が支払う限り、会社にも本人にも源泉徴収の事務は発生しません。

ただし、本人は費用を控除できない

ここは先に共有しておくべき点です。給与所得者の特定支出控除の対象は、通勤費・職務上の旅費・転居費・研修費・資格取得費・帰宅旅費・勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等)の7類型に限られており、確定申告のための税理士報酬は含まれていません(所得税法第57条の2第2項。国税庁タックスアンサー No.1415)。つまり、収入が給与所得等に限られ必要経費を認められる所得がない方の場合、ご本人が負担した費用は税務上どこにも吸収されません。(不動産所得・事業所得・業務に係る雑所得がある方は、それらの所得に対応する部分を必要経費に算入できます。所得税法37条1項)この点を伏せたまま型①を勧めると、後で不満が出ます。

03型②|本人契約+会社が課税手当として上乗せする

契約と請求はご本人と税理士の間で完結させ、会社は費用相当額を課税対象の手当として給与に上乗せしてご支給いただく形です。当事務所が実務でお勧めしているのはこの型です。

なぜこの形が明快なのか

手当は給与として処理されるため、毎月の源泉徴収と年末調整という既に回っているフローにそのまま乗ります。会社が税理士報酬を直接お支払いになる場合に生じる論点——税理士報酬からの源泉徴収、支払調書、新規取引先としての登録——が、いずれも発生しません。

会計処理も特別なことはありません。給与手当として計上し、通常の給与と同じく源泉徴収と社会保険料の計算対象に含めるだけです。当事務所が御社の取引先になることもないため、購買部門や与信審査を通す必要もありません。

本人の手取りを減らしたくない場合

手当は課税されるため、費用と同額を支給しただけでは、ご本人の手取りは税・社会保険料の分だけ不足します。手取りベースで費用相当額を届けたい場合は、税負担分を織り込んで支給額を逆算するグロスアップが必要です。計算の考え方と具体例はグロスアップ計算の実例で解説しています。駐在員の手取り保証(タックスイコライゼーション)を導入されている企業では、既に同じ計算を回しているはずです。

04型③|会社が税理士と直接契約する

会社が税理士と契約し、会社が報酬を支払う形です。一見すると最も自然に見えますが、実務上は最も論点が多くなります。

従業員への課税は、結局なくならない

確定申告書の作成・提出は納税者ご本人の義務です。その義務を果たすための費用を会社が負担すれば、ご本人は経済的利益を受けたことになります(所得税基本通達36-15(5):「買掛金その他の債務の免除を受けた場合におけるその免除を受けた金額又は自己の債務を他人が負担した場合における当該負担した金額に相当する利益」)。契約名義を会社にしても、従業員への給与課税はなくなりません。契約名義がご本人で会社が支払う場合は同通達36-15(5)(自己の債務を他人が負担した場合の利益)に、会社が契約当事者でご本人が無償で役務を受ける場合は同36-15(4)(用役の無償提供による利益)に、それぞれ当たるためです。むしろ型②と違って手当として明示されないため、社内で処理が漏れやすくなります。

源泉徴収と納付の事務が増える

個人の税理士に報酬を支払う場合、会社には源泉徴収義務があります。税額は支払金額100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分が20.42%です(本則は所得税法第205条第1号の100分の10・100分の20で、これに復興特別所得税2.1%を上乗せした率です。国税庁タックスアンサー No.2798)。納付期限は原則として支払った月の翌月10日で、納期の特例の適用を受けている場合は1月から6月までの支払分が7月10日、7月から12月までの支払分が翌年1月20日となります。なお、税理士法人に支払う場合は源泉徴収の対象になりません。ただし源泉徴収の要否と支払調書の要否は別問題で、法人への支払で源泉徴収の対象とならないものについても、提出範囲に該当すれば支払調書の提出が必要です(国税庁タックスアンサー No.7431)。

支払調書の作成が毎年発生する

税理士等に対する報酬は、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が5万円を超える場合に、報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の提出範囲に入ります(所得税法第225条第1項第3号と同法施行規則第84条第2項第4号。規則は「同一人に対するその年中の……支払金額が5万円以下である場合」を提出不要としており、その裏返しです。国税庁タックスアンサー No.7431)。対象者が数名でも、この事務は毎年回ってきます。

型③で会社に増える3つの事務。源泉徴収(100万円以下10.21%・超20.42%・翌月10日納付)、支払調書(同一人5万円超)、取引先登録と与信審査
図2:型③を選ぶと、会社に毎年3つの事務が増える

そして、取引先登録と与信審査を通す必要がある

会社が発注者になる以上、税理士事務所は御社の取引先になります。大手企業では新規取引先の登録・与信審査・購買システムへの登録が必要になり、これが理由で導入そのものが止まることがあります。内容にご納得いただいていても、調達の審査基準は別の物差しで動くためです。

05やってはいけない処理

ご本人が立て替えた税理士報酬を、経費精算で払い戻して会社の支払手数料等として処理する形は、お勧めしていません。

  • ご本人の個人的費用を会社が負担している点は変わらないため、給与課税の論点は残ります。それにもかかわらず給与として処理されないため、源泉徴収が漏れます。
  • 会社の帳簿上は費用として計上されますが、ご本人の個人的費用である以上、消費税の取扱いについても慎重な検討が必要になります。

会社としてご負担になる場合は、課税対象の手当として給与に含めて処理する型②が最も誤りが起きにくい形です。

本人が立て替えた税理士報酬を経費精算で払い戻す形の問題。給与課税の論点は残るのに給与処理でないため源泉徴収が漏れる
図3:立替え+経費精算という形が抱える問題

06判断のためのチェックリスト

  • 費用をご本人に負担いただけるか。負担いただけるなら型①が最も簡素です。
  • 会社で持つ場合、ご本人の手取りを減らさない設計にするか。減らさないならグロスアップの計算が必要です。
  • 手当として給与に含める処理を、給与計算の締めまでに反映できるか。
  • 対象者が複数いる場合、支給時期を揃えられるか。
  • 型③を選ぶ場合、新規取引先の登録・与信審査に要する期間を、申告期限から逆算できているか。

対象者の区分や人数によって最適な形は変わります。具体的な設計は個別にご説明しますので、まずは対象人数と支給の形をお知らせください。

主な根拠資料

本記事の条文・通達番号は2026年9月6日にe-Gov法令検索と国税庁の公表資料で確認しました。給与課税に当たるかどうかは契約名義ではなく実質的な負担者で判定されます。実際の設計は対象者の区分・人数によって変わるため、個別にご確認ください。

07よくある質問

会社が税理士報酬を負担すると、必ず従業員に課税されるのですか?

確定申告は納税者ご本人の義務であり、その費用はご本人が負担すべきものです。これを会社が負担した場合、負担額はご本人の給与(経済的利益)として課税されるのが原則です(所得税基本通達36-15(5))。判定は契約の名義ではなく、費用を実質的に誰が負担したかで行われるため、契約名義だけをご本人にしても結論は変わりません。

結局どの型がよいのですか?

会社としてご負担になりたい場合は、型②(ご本人と税理士が契約し、会社は費用相当額を課税対象の手当として給与に上乗せする)をお勧めしています。給与として通常の源泉徴収・年末調整のフローに乗るため、会社が税理士報酬を直接お支払いになる場合に生じる論点(源泉徴収・支払調書・取引先登録)がいずれも発生しません。ご本人にご負担いただける場合は型①が最も簡素です。

従業員が自分で払った税理士報酬は、確定申告で控除できますか?

できません。給与所得者の特定支出控除の対象は、通勤費・職務上の旅費・転居費・研修費・資格取得費・帰宅旅費・勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等)の7類型に限られており、確定申告のための税理士報酬は含まれていません(国税庁タックスアンサー No.1415)。この点は、費用負担を設計するうえで先に押さえておく必要があります。

会社が税理士と直接契約した場合、源泉徴収は必要ですか?

個人の税理士に報酬を支払う場合は必要です。支払金額100万円以下の部分は10.21%、100万円を超える部分は20.42%で計算します(国税庁タックスアンサー No.2798)。納付期限は原則として支払った月の翌月10日です。なお、税理士法人に支払う場合は源泉徴収の対象になりません。ただし源泉徴収の要否と支払調書の要否は別問題で、法人への支払で源泉徴収の対象とならないものについても、提出範囲に該当すれば支払調書の提出が必要です(国税庁タックスアンサー No.7431)。

支払調書の提出は必要ですか?

税理士等に対する報酬については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が5万円を超える場合に、報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の提出範囲に入ります(国税庁タックスアンサー No.7431)。会社が直接お支払いになる型③では、この事務が毎年発生します。

従業員が立て替えた分を、経費精算で払い戻す形にできますか?

お勧めしていません。ご本人の個人的費用を会社が負担する点は変わらないため給与課税の論点が残る一方、会社の帳簿上は支払手数料等として処理されることになり、給与課税の漏れと消費税の取扱いの誤りを同時に生みやすい形です。会社としてご負担になる場合は、課税対象の手当として給与に含めて処理する型②が明快です。

本記事は2026年9月6日時点の法令等に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務アドバイスを構成するものではありません。実際の処理は事実関係により結論が変わりますので、個別にご相談ください。

FOR HR / 費用負担の型を決める前に

どの型を採るかで、給与課税・源泉徴収・法定調書の扱いがそれぞれ変わります。当事務所はご本人との直接契約を基本としており、貴社の経理・源泉処理を増やさずに外国籍社員の確定申告を完結できます。まずは対象人数と在留区分をお聞かせください。

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※企業様側の取引先登録・与信審査は不要(従業員様との直接契約方式に対応)
山口 淳也
この記事の監修

公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表

日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。