中国で働くための就労許可とビザ — A/B/C区分・Zビザ・居留許可と駐在員の優遇【連載③】

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中国進出 | 連載③

中国で働くための就労許可とビザ — A/B/C区分・Zビザ・居留許可と駐在員の優遇

会社の器(連載②)ができたら、次はです。日本人が中国で合法的に働くには、就労許可 → 就労ビザ(Zビザ)→ 就労類居留許可という三段階の手続きが必要で、ここには「入国後15日」「入国後30日」など、混同しやすい期限が並びます。本稿では手続きの全体像に加え、駐在員(出向者)の社会保険・個人所得税の優遇という、コストに直結する論点まで解説します。

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01外国人を雇うための必須条件

外国人が中国で就労許可を得るための基本条件は、次のとおりです。

  • 満18歳以上で健康であること
  • 無犯罪であること
  • 中国国内に確定した雇用先があること
  • 当該業務に必要な専門技能または相応の知識水準を有すること
外国人を雇うための4つの必須条件
図:外国人を雇うための4つの必須条件

実務上、一般的なビジネスパーソンの目安は「学士以上の学位+2年以上の関連職歴」。これが次に述べるB類(専門人材)の入口になります。

02A/B/C区分とポイント制

中国の外国人就労許可は、「高端を奨励し、一般を制御し、低端を制限する」という方針のもと、申請者をA・B・Cの3区分に分類します。判定にはポイント制(計点積分制)が併用されます。

外国人就労許可のA/B/C区分
図:外国人就労許可のA/B/C区分(高度人材A・専門人材B・その他C|評価スコアと給与の目安)
  • ポイントは年収・学歴・出身校・職歴・年齢・中国語能力・勤務地などで加点されます
  • 客観要件(学位・職歴・給与水準)を満たせば、点数に達しなくても該当区分に分類される場合があります
  • 給与水準による該当もあり、前年度の現地社会平均賃金の4倍以上でB類、6倍以上でA類の入口になります

多くの日本人駐在員はB類に該当します。自社のポジション・給与・学歴職歴がどの区分に当てはまるかは、申請前に必ず確認すべきポイントです。

年齢の上限に注意

見落としやすいのが年齢です。B類は原則として60歳(法定退職年齢が基準)が上限で、シニア人材の派遣可否に直結します。A類(高度人材)は年齢・学歴・職歴の制限を受けませんが、ポイント制で評価する場合は年齢が高いほど不利になります。

2026年の厳格化:コロナ期に各地で運用されていた60歳超の更新の黙認的な緩和が、2026年に入り北京・上海など主要都市で見直され、60歳超の就労許可の更新は原則として認められにくくなっています。60歳を超えて就労を続けるには、実質的にA類該当性(副総経理級や特殊技能者など)が問われます。運用には地域差があり流動的なため、シニア駐在員の起用は最新の取扱いを個別に確認したうえで計画してください。

03手続きフロー —「15日」と「30日」を間違えない

最も誤解が多いのがこの部分です。就労許可証(カード)の申請は入国後15日以内、居留許可の申請は入国後30日以内で、別の手続き・別の期限です。

就労手続きのタイムライン(入国後の15日と30日)
図:就労許可の手続きフロー — 入国後15日と30日

流れを整理すると、次のようになります。

  • ① 雇用先(中国)が「外国人来華工作許可通知」をオンライン申請
  • ② 本人が在日中国大使館・総領事館でZビザ(就労ビザ)を取得
  • ③ 入国
  • ④ 入国後【15日以内】… 外国人工作許可証を申請(2024年12月以降、許可情報は社会保障カード/電子社会保障カードへ順次統合)。あわせて健康診断(体検)も済ませる
  • ⑤ 入国後【30日以内】… 公安出入国管理局で「就労類居留許可」を申請(審査は受理からおおむね7〜15営業日。当局運用により変動)
  • 居留許可の有効期間は、契約期間・パスポート有効期限などのうち最も短い時点に合わせられます。上海では1年・2年・3年・4年・5年期の区分があり、職務・企業区分・保有する工作許可証の有効期に連動します(例:地区総部の一般工作人員は3年期、部門管理人員は4年期、A類の高度人材や認定された高層次人材は5年期)。一般的な駐在員は1年期から始まることが多いです
  • 更新(延期)は、有効期限満了の30日前までに申請します

必要書類

  • 学歴・学位証明(→ アポスティーユ)
  • 無犯罪証明(→ アポスティーユ。発行から一定期間内のもの)
  • 職歴・経歴証明、雇用契約
  • 健康診断証明(日本の健診結果はそのまま使えないのが一般的で、入国後に中国国内の指定機関(出入境検験検疫機関)で受け直す運用。受診予約・結果待ちで時間がかかり、「入国後15日以内」の枠を圧迫しやすいボトルネックなので、入国後すぐに予約するのが鉄則)
  • パスポート、写真、雇用先の各種資格証明 ほか
就労手続きの主な必要書類
図:就労手続きの主な必要書類とアポスティーユ

連載②で述べたとおり、学歴・無犯罪などの公文書は2023年11月7日以降、中国大使館の領事認証が不要になり、外務省のアポスティーユで足ります(領事認証を前提とする情報は現在は当てはまりません)。

実務メモ:転職・社内異動のとき。勤務先や職位が変わった場合は、工作許可証の「新規」ではなく「変更」手続きを行い、居留許可も連動して更新します。期限管理(15日/30日/更新30日前)に加え、異動・転籍が発生したら速やかに変更手続きを行うことが、無許可就労状態を避けるうえで重要です。

出張ベースの「グレー就労」は高リスク

「就労許可を取らずに、出張(M/Fビザ等)で実質的に働かせる」運用は、日系企業でも見られますが、明確に違法で罰則も重いものです(出入境管理法)。

  • 本人:不法就労は5,000〜2万元の罰金、情状が重ければ5〜15日の拘留・強制送還
  • 雇用企業:不法に雇用した1人につき1万元(上限10万元)の罰金、違法所得は没収

短期でも、技術指導など対価を伴う実質的な役務を中国国内で提供するなら就労許可が必要、と考えておくのが安全です。

就労許可なしのグレー就労の罰則
図:グレー就労(不法就労)の罰則

04家族帯同

配偶者や18歳未満の子を帯同する場合の手続きは、本人の就労手続きと同時に申請することで簡素化できます。

  • 家族はS1ビザ(180日超の長期滞在)で入国し、入国後30日以内に「私人事務類居留許可」を申請
  • 親族関係を示す結婚証・出生証明などが必要(日本発行の戸籍・婚姻関係書類はアポスティーユ対応)
  • 本人の居留許可の有効期間に、家族の許可を合わせるのが上海の一般的運用
家族帯同の手続き
図:家族帯同の手続き(S1ビザと私人事務類居留許可)

05駐在員(出向者)の社会保険 —「年金」は最大5年免除できる

ここからが、コストに直結する重要論点です。中国で就労する外国人は、本来5種類の社会保険(養老・医療・失業・労災・生育)への加入義務を負います。しかし日中社会保障協定(2019年9月1日発効)により、日本から派遣される駐在員は負担を軽減できます。

駐在員の社会保険(日中社会保障協定)
図:日中社会保障協定による社会保険の免除範囲
  • 免除を受けるには、日本年金機構が発行する「適用証明書(Certificate of Coverage)」を取得し、中国側に提示します
  • 派遣が5年を超える見込みの場合は、両国当局の合意により延長が可能です
  • 申請は就労開始予定日のおおむね6か月前から可能です

ポイントは「免除されるのは年金だけ」ということです。医療・失業・労災・生育は中国で加入が続くため、「社保が全部免除される」という誤解で資金計画を立てないよう注意してください。

06駐在員の個人所得税 — 手当の非課税は2027年末まで

駐在員の個人所得税にも、知っておくべき優遇があります。

外国籍個人の手当(津補貼)の非課税措置

外国籍個人は、住宅手当・子女教育費・語学訓練費・帰省費などの合理的な手当について、実費精算等を条件に個人所得税が非課税となります。

  • 根拠は財政部・税務総局公告 2023年第29号で、適用期限は2027年12月31日まで延長されています
  • ただし、「専項附加扣除(特別追加控除)」との選択適用で、両方を同時に受けることはできません(一度選んだら同一納税年度内は変更不可)。どちらが有利かは個人の支出構成によります
外国籍個人の手当非課税と専項附加扣除の選択適用
図:手当の非課税 か 専項附加扣除 か — どちらか一方を選ぶ

居住者判定(183日ルールと6年ルール)

  • 1納税年度(暦年)内の中国滞在が累計183日以上になる年は、税務上の居住者となり、原則として全世界所得が課税対象になります
  • ただし「6年ルール」(個人所得税法実施条例第4条等)により、中国に住所のない個人は、直前6年のいずれかの年で「滞在183日未満」または「1回の出国が連続30日超」があり、かつ主管税務機関へ届出をすれば、当年の国外源泉かつ国外で支払われる所得は中国で免税になります
  • 起算は2019年のため、2018年以前はカウントされません。結果として、無住所の駐在員が全世界課税の対象になり得るのは最短でも2025年度からで、それまでは国外源泉・国外払いの所得は事実上免税でした
駐在員の居住者判定(183日ルールと6年ルール)
図:駐在員の居住者判定 — 183日ルールと6年ルール

トーンの注意:これは「法令の範囲内で、駐在の期間・滞在日数を踏まえて課税範囲を把握する」という話です。出国日数の作為的な操作には否認リスクもあり、また中国に生活基盤を移すと「無住所」の前提自体が崩れます。実態に即した設計が前提です。

駐在員の手取り・本社負担コストは、社保協定の活用 × 手当の設計 × 居住者判定の組み合わせで変わります。赴任の条件設計(給与の支払地・建て付け、手当の種類、赴任期間)は、税務の観点を入れて事前に組むのが得策です。なお給与をどちらの国で支払うか(国外払いか)は、6年ルールの免税範囲に直結する論点です。

07次回(連載④)

人の手当てができたら、最後は会社を回すフェーズ——会計・税務・監査の常識です。次回は中国会計基準(CAS)と日本本社連結の差、代理記帳の月次サイクル、発票(Fapiao)、年度監査、補助金を解説します。

ビザと税務は「赴任前」に組むほど効果が出ます。駐在員の社保協定の適用、手当の非課税設計、ビザ区分の判定は、赴任の条件設計と一体で考えるべき論点です。ESPERANZA CONSULTING GROUPは、ビザ実務(行政書士)と国際税務(会計士・税理士)を同じチームで扱えるため、人事と税務を分断せずに設計できます。

本記事は2026年6月時点の情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の法務・税務助言ではありません。手続きの日数・要件は提出先当局の運用により異なる場合があります。