中国会社設立の実務手順|社名審査から営業許可・口座開設まで【連載②】

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中国進出 | 連載②

中国会社設立の実務手順 — 社名審査から営業許可・口座開設まで

前回(連載①)で「有限公司・日本法人株主」という形態を固めたら、いよいよ設立の実務です。社名予備審査から営業許可、印鑑、銀行口座、税務・社保・海関登記までの標準フローと、各段階でつまずきやすい論点を解説します。

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会社設立の所要期間(ガント)設立は準備(書類・認証・オフィス、最も時間がかかる工程)→登記(社名申報→営業許可)→登記後の実務(印鑑・口座・税務・社保、数週間)の順。全体は通常2〜3か月、前置許可業種は6か月。会社設立の所要期間時間がかかるのは登記そのものではなく「準備」準備書類・認証・オフィス登記社名→営業許可登記後印鑑・口座・税務ほか最も時間がかかる工程数週間着手1か月2か月3か月全体:通常2〜3か月※前置許可が必要な業種は全体6か月程度
図:会社設立の所要期間 — 通常2〜3か月、長いのは「準備」

01まず期間感を正しく持つ

中国会社設立ロードマップ
図:中国会社設立のロードマップ — ステップ0〜7の全体像

中国の会社設立は「申請したらすぐ作れる」ものではありません。期間は段階で分けて考えるのが正確です。

  • 登記後の実務手続き(印鑑→銀行口座→税務・社保登記):おおむね数週間
  • その前段(書類準備・認証・オフィス確保)まで含めた全体:通常2〜3か月
  • 許認可が必要な業種6か月程度

最も時間がかかるのは登記そのものではなく書類の準備・認証と、登録住所(オフィス)の確保です。ここから逆算してスケジュールを引きます。

登録住所 実体オフィスとバーチャルアドレスの比較
図:登録住所 — 実体オフィス か バーチャルアドレス か

日本側の視点: 親会社の取締役会決議・登記事項証明書の公証・アポスティーユ取得が認証書類に含まれ、日本側の準備が全体スケジュールを左右します。海外進出の稟議・承認タイミングと認証スケジュールを連動させて動かすことが重要です。

02ステップ0:ネガティブリスト(外資参入の可否)

ネガティブリスト3分類
図:ネガティブリスト — 外資参入の可否を3分類で確認

社名審査に入る前に、必ず確認すべき大前提があります。自社の業種が外資で参入できるかです。中国は「参入前内国民待遇+ネガティブリスト管理」を採っており(外商投資法)、外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)に載らない業種は独資(WFOE)で参入できます。リスト掲載業種は次のいずれかの制約を受けます。

  • 禁止分野:外資の参入自体ができない
  • 制限分野:合弁強制・外資出資比率の上限・特定の許認可など

最新版「ネガティブリスト(2024年版)」で制限項目は29項目まで縮小し製造業の制限はゼロになりましたが、付加価値電信業務・ネット視聴・出版・教育・医療などは依然として外資規制が残ります(→連載①)。

03ステップ1〜2:社名審査と書類認証(アポスティーユ)

ステップ1:社名審査

上海市市場監督管理局のオンラインのワンストップ窓口(「一窗通」「一网通办」)で企業名称を申報します。上海は「自主申報・承諾制」に移行しており、システムが既存名称と即時に自動比較し、類似・重複を告知します。

  • 3〜5候補を用意し、既存の類似商号・著名商標との衝突を避ける
  • 名称は「行政区+商号+業種+組織形態」の構成(例:上海○○諮詢有限公司)

自動比較は「類似の可能性」を知らせる補助機能で権利関係を保証するものではありません。商号は後の商標・ドメイン・ブランド戦略(→連載⑨)と連動させて決めるのが望ましいところです。

ステップ2:書類の準備と「認証」— ここが最重要

設立に必要な主な書類は、定款(中国語)・日本本社の登記事項証明書・取締役会決議・授権書・パスポート写し・賃貸借契約などです。そして認証プロセスが2023年以降大きく変わりました。

【2026年の最重要アップデート】認証は「アポスティーユ」へ

書類認証の変化 — アポスティーユで中国大使館認証が不要に 2023年11月7日の中国ハーグ条約加盟以降、日本の書類を中国で使う際の認証が大幅に簡素化。公文書は外務省アポスティーユ1枚で完結。従来の中国大使館・総領事館での領事認証は不要になった。 書類認証の変化 — アポスティーユ導入で1ステップ削減2023年11月7日 中国のハーグ・アポスティーユ条約加盟 → 在日中国大使館の領事認証が不要に 〜2023年11月 旧方式 1 公証役場で公証 私文書は公証が必要 2 外務省で公印確認 外務省の証明(アポスティーユ前) 3 中国大使館で領事認証 時間・費用かかる 廃 止 簡素化 2023年11月〜 新方式 1 公証役場で公証 私文書は公証が必要(変わらず) 2 外務省でアポスティーユ 公文書はこれ1枚で完結 → 完了!中国大使館への持込が不要 ⚠ 注意:中国語訳はなお必要 提出先によっては不慣れな窓口あり → 事前確認を 旧方式:3ステップ(数週間〜1か月以上) 公証 → 外務省 → 大使館
図:書類認証の変化 — アポスティーユ導入で領事認証が不要に(2023年11月7日〜)
書類の種類必要な手続き
公文書登記事項証明書、印鑑証明書、納税証明外務省アポスティーユ1枚(領事認証 不要)
私文書取締役会決議、授権書、定款、声明書公証役場で公証 → アポスティーユ

注意点が2つ。中国語訳はなお必要です。アポスティーユは真正性を証明するだけで翻訳要件は免除しません。②移行期のため提出窓口によってはアポスティーユの取扱いに不慣れなケースが残ります。代理機関を通じて事前確認するのが安全です。

04ステップ3〜4:営業許可・登録資本金・印鑑

ステップ3:営業許可の取得と登録資本金の設計

市場監督管理局で設立登記を行い、営業許可証(営業執照)の交付を受けます。同時に統一社会信用コードが付与されます。

登録資本金は「5年以内に払い込む」前提で決める

登録資本金払込ルール
図:登録資本金の払込ルール — 新会社法で「5年以内」が義務化

2024年7月1日施行の新会社法(第47条)により、有限責任公司は設立から5年以内に登録資本金を全額払い込むことが義務化されました。

  • 新設の場合:「5年以内に現実に払い込める金額」を登録資本金に設定するのが定石
  • 既存会社の場合:3年間の移行期間が設けられ、2027年6月30日までに払込期限を「5年以内」に収まるよう定款調整し、2032年6月30日までに払込完了させる必要があります

登録資本金は、信用・入札・経営管理ビザの要件とも連動します。「大きく見せる」より「無理なく払い込める実額」で設計するのが、新会社法下では合理的です。

日本側の視点: 登録資本金は日本親会社の貸借対照表上では「海外子会社への出資」として資産計上されます。払込予定額・タイミングを資金繰り計画に組み込んでおく必要があります。

ステップ4:印鑑(公章)の作成

中国会社の印鑑4種
図:会社の印鑑4種 — 公章・財務章・法人代表章・発票専用章

営業許可と前後して、公安局指定の工場で会社の印鑑を作成し届け出ます。中国では印鑑が会社の意思表示の要で、日本以上に厳格な管理が求められます。

  • 公章(会社実印に相当)
  • 財務章(銀行・財務手続き用)
  • 法人代表章(法定代表者の印)
  • 発票専用章(インボイス=Fapiao発行用)

印鑑の管理権限は「会社を実質的に支配する力」そのものです。誰が保管しどう使用記録を残すか、ガバナンスの設計を初期に決めておくことを強く推奨します。

05ステップ5〜6:口座開設と税務登記

ステップ5:銀行口座の開設と外貨管理(SAFE)

  • 人民元基本口座外貨資本金口座を開設
  • 外貨資本金の登記は口座開設銀行を通じて行う(銀行直接登記)のが一般的(SAFE窓口への直接来訪から簡素化)
  • 口座開設ではKYC(実態確認)が年々厳格化。登録住所の実在性や親会社の信用資料を求められます

払い込んだ資本金は「自由に使える」わけではありません。 人民元に両替した資本金は「真実・自用」の原則で経営範囲内の用途に限定され、市場性のある有価証券投資・非自用の不動産購入・非関連企業への貸付などは制限されます。資金繰り計画では、この使途制限を前提にしてください。

ステップ6:税務登記と「税種査定」

税務上の会社基本情報を登録し、税種査定を行います。ここで会社のその後の税務の枠組みが決まります。

  • 適用税種・税率(増値税、企業所得税ほか)
  • 申告頻度・納期
  • インボイス(Fapiao)の種別・発行枠
  • 増値税の納税者区分:一般納税者か小規模納税者か

納税者区分は初期設計の論点

増値税の納税者区分
図:増値税の納税者区分 — 一般納税者 vs 小規模納税者
  • 一般納税者:現代サービス(コンサル・広告等)の増値税率は6%。仕入増値税の控除が使える
  • 小規模納税者:本則3%だが2027年12月31日まで1%に軽減。月売上10万元(四半期30万元)以下は増値税免除(2027年末まで)。ただし仕入控除は使えない

重要:小規模は「ずっと身軽」ではいられません。 年間増値税課税売上高が500万元を超えると、原則として一般納税者への登記が義務付けられます(根拠は2026年1月1日施行の増値税法・同実施条例+国家税務総局公告2026年第2号)。小規模はあくまで設立初期・売上規模が小さい段階の選択肢です。

06ステップ7と落とし穴:社保・海関・登録住所

ステップ7:社保・公積金・海関登記

  • 社会保険・住宅公積金の口座開設と全従業員の登録
  • 海関(税関)登記・電子口岸カード(輸出入を行う場合)
  • 各種業種別の許認可申請は、この段階で並行して進めます

外国人を雇用する場合の就労許可・ビザは、別建ての重要論点です。これは連載③で詳しく扱います。

設立はゴールではありません。 外商投資企業には、毎年1月1日〜6月30日に国家企業信用情報公示システムを通じて行う外商投資の年度報告など、設立後も続くコンプライアンス義務があります。月次申告・年度監査(→連載④)と合わせ、固定費・工数として見込んでおきます。

ステップ7と設立後に続く義務
図:ステップ7(社保・公積金・海関登記)と設立後も続く義務

落とし穴:登録住所と実態の「一致」

  • 原則は実際の経営場所(実体あるオフィス)での登記
  • 集中登記地(バーチャルアドレス)は、園区・開発区がコンサル等の業種向けに認める制度として存在しますが、製造・物流・飲食・教育など実体必須の業種では使えません
  • 近年は「空殻公司(ペーパー会社)」への取締りが強化され、税務・銀行KYCや実地調査で実態を確認される運用が増えています

「とりあえず安いバーチャル住所で」は、後の税務・銀行対応でリスクになり得ます。園区の正式提携アドレスに限定するか、最初から実体あるオフィスを確保するのが無難です。

日本側の視点: バーチャル住所で設立した場合、日本親会社の税務調査で「中国子会社に実体があるか」(恒久的施設の認定やCFC課税の要否)を問われることがあります。住所と実態の一致は、日中双方の税務リスク管理の基本です。

07次回(連載③)

会社の器ができたら、次はです。次回は外国人の就労許可(A/B/C区分)→ Zビザ → 居留許可の手続きと、「入国後15日/30日」の使い分け、そして駐在員の社会保険・税務の優遇まで解説します。

設立は「順番」と「準備の前倒し」が結果を大きく左右します。自社の業種・スケジュールに沿った設立計画を立てたい方は、ESPERANZA CONSULTING GROUPにご相談ください。日本側と中国側の税理士が、ネガティブリストの確認から書類認証・口座開設の準備・現地同行まで伴走します。

本記事は2026年6月時点の情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の法務・税務助言ではありません。