外国籍社員の税務を専門家に依頼すべき5つのサイン|費用の目安と選び方

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外国籍社員の税務を専門家に依頼すべき5つのサイン|費用の目安と選び方

「税理士に頼むほどではないかもしれない」——判断を先送りした結果、修正申告・追徴課税・ビザ更新への影響に発展するケースが少なくありません。依頼判断の5つのサインと、費用の目安・依頼範囲・準備資料・依頼フローを稟議に使える形で整理しました。

最終更新日:2026年7月3日

結論から言えば、「RSU等の株式報酬」「非永住者の5年切替」「ビザ更新」「帰任・出国」「過去処理への不安」の5つのうち1つでも該当する外国籍社員がいるなら、外部専門家への依頼を検討すべき段階です。対応が遅れるほど選択肢が減り、是正コストが増えます。本記事では5つのサインの判断基準に加えて、費用の目安・依頼範囲の線引き・準備資料・依頼の標準フローを解説します。

なお、自社のリスク水準をまず確認したい方は、簡易リスク診断ツール(無料・約3分)を先にご利用ください。「リスクの有無を診断する」のが診断ツール、「依頼するか・誰に何を頼むか」を判断するのが本記事という役割分担です。

依頼を検討すべき5つのサイン(総覧)

SIGN 01
RSU・ストックオプションの付与
権利確定(ベスティング)時の按分計算と調書の翌年3月31日提出が発生。
SIGN 02
非永住者の5年切替
過去10年で居住期間が通算5年超になると課税範囲が全世界所得へ拡大。
SIGN 03
ビザ更新が1年以内
更新審査で納税証明書類を確認。未納・無申告は更新申請前に解消。
SIGN 04
帰任・出国が3〜6か月以内
出国90日前を目安に納税管理人・住民税精算などの準備が必要。
SIGN 05
過去処理への不安
税務調査の遡及は3〜5年分。源泉徴収漏れには不納付加算税10%。
専門家への依頼を検討すべき5つのサインと重要期限の一覧図。RSU等の株式報酬は調書提出が翌年3月31日期限、非永住者は通算5年の切替管理、ビザ更新は1年前から確認、帰任・出国は90日前から準備、過去処理への不安は遡及3〜5年・加算税10%
図:専門家への依頼を検討すべき5つのサインと重要期限

01サイン1:RSU・ストックオプションを付与された社員がいる

外国親会社からRSU(譲渡制限付株式ユニット)やストックオプションの付与を受けている外国籍社員が1人でもいる場合、依頼の優先度は最も高くなります。株式報酬は権利確定(ベスティング)時に給与として課税され、付与から権利確定までの期間のうち国内勤務期間に対応する部分を按分計算する必要があります。按分を誤ると源泉徴収から本人の確定申告まで連鎖的に誤ります。

さらに会社側には、「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」を供与等のあった年の翌年3月31日までに税務署へ提出する義務があります(所得税法第228条の3の2)。調書は税務署が申告漏れを把握する端緒でもあり、本人任せにできない論点です。詳細はRSU・株式報酬の課税実務(人事担当者向け)で解説しています。

02サイン2:来日5年前後で非永住者の課税範囲が切り替わる社員がいる

日本国籍を有さず、過去10年以内の国内居住期間が通算5年以下の社員は「非永住者」として課税範囲が限定されますが(所得税法第2条第1項第4号)、通算5年を超えた時点で国外源泉所得を含む全世界所得への課税に切り替わります。判定は通算期間によるため、留学・駐在期間を含む在留履歴を個人別に管理していないと切替時期を把握できません。

切替を知らずに国外の賃料や配当を申告しなければ申告漏れとなり、ビザ更新にも波及します。来日4〜5年目の社員がいる会社では、「5年通算の切替管理」を仕組みとして持てているかが依頼判断の分かれ目です。詳細は非永住者の課税範囲と送金課税をご覧ください。

03サイン3:ビザ更新が1年以内に迫っている社員がいる

在留期間更新(ビザ更新)の審査では、住民税の課税証明書・納税証明書などの税務書類が確認されます。提出が求められる書類の範囲は所属機関のカテゴリーによって異なり、カテゴリー3・4の企業に所属する社員は原則として納税証明書類の提出が必要です。更新直前に発覚しても、修正申告と納付には時間がかかります。

更新期限の1年前を目安に納税状況の確認を開始し、問題があれば更新申請前に修正申告を済ませるのが実務の原則です。詳細はビザ更新と納税証明の関係で解説しています。

04サイン4:3〜6か月以内に帰任・出国する社員がいる

帰任・出国は税務手続きが最も集中するイベントです。出国の90日前を目安に準備を開始し、出国日までに「所得税・消費税の納税管理人の届出書」の提出要否を判断し、住民税の精算方法(一括徴収か納税管理人経由か)を確定させる必要があります。出国後の発覚では、是正の難易度と費用が大きく上がります。

あわせて、有価証券等を1億円以上保有する社員には国外転出時課税(出国税)の検討が必要です。ただし外国籍社員は、別表第一の在留資格(就労系等)での在留期間が対象者判定の国内居住期間に含まれないため、対象外となるケースも多くあります。該当し得る社員がいる時点で専門家判断に切り替えるべき論点です。手続きの全体像は出国・帰任時の税務手続き帰任・退職時の税務ガイドをご覧ください。

05サイン5:過去の処理が正しかったか自信を持って言えない

「担当者が代わって経緯が分からない」「前任のやり方を根拠不明のまま踏襲している」——それ自体が依頼のサインです。税務調査では通常3年分、更正の期間制限としては原則5年分(偽りその他不正の行為がある場合は7年分)が遡及の対象になります。源泉徴収漏れが調査で指摘されると、本税に加えて不納付加算税10%(調査前に自主納付した場合は5%)と延滞税が課され、その納付義務は本人ではなく会社にあります。

「たぶん合っている」を「確認済み」に変えるには、過去処理の第三者レビューが最も効率的です。基本論点は外国籍社員の給与・源泉徴収・年末調整で確認でき、レビューの依頼は外国籍社員税務レビューで受け付けています。

判断に迷う場合は、まず簡易リスク診断ツール(無料・約3分)でリスク水準を確認できます。

06費用の目安——スポット相談54,000円〜・確定申告代行160,000円〜

当グループがサイトで公表している料金を基準に費用の目安を整理します。単発の論点整理ならスポット相談(メール54,000円〜)、申告作業まで発生するなら確定申告代行(160,000円〜・税別)が起点です。

依頼形態 費用の目安(当グループ公表値) 適する場面
スポット相談(メール) 54,000円 単一論点の確認・セカンドオピニオン
スポット相談(Zoom) 62,000円〜 資料を見ながらの論点整理
スポット相談(対面) 90,000円〜 複数論点・経営層向けの説明
確定申告代行 区分A 160,000円〜/区分B 200,000円〜/区分C 300,000円〜(税別・申告区分に連動) RSU・非永住者等の個人申告
顧問・複数名の一括対応 人数規模により個別見積 複数名・毎年の継続対応

詳細はスポット相談外国籍社員の確定申告代行外国籍人材の税務顧問をご覧ください。加算税・延滞税と担当者の対応工数まで含めれば、事前依頼のほうが総コストは低くなるのが通常です。

07依頼範囲の線引き——会社が頼む論点と本人が申告する論点

見積を取る前に、「会社が専門家に依頼すべき論点」と「本人に申告させる論点」を切り分けます。源泉徴収(按分計算を含む)・年末調整・法定調書(経済的利益に関する調書を含む)・社内体制の構築は会社側の義務であり、会社が費用を負担して依頼すべき論点です。一方、国外所得や送金課税を含む個人の確定申告は本人の義務であり、会社の守備範囲は情報提供と専門家の紹介までが基本です。

依頼範囲の線引き図。会社が専門家に依頼すべき論点は源泉徴収の按分計算・年末調整・法定調書・税務体制構築・社員への事前アナウンス。本人が自ら申告すべき論点は個人の確定申告・非永住者の送金課税・国外財産調書・株式売却益や配当の申告。会社が本人の申告費用を負担すると経済的利益として源泉徴収の対象になる点に注意
図:依頼範囲の線引き——会社が依頼する論点と本人が申告する論点

1点だけ注意が必要です。会社が本人の確定申告費用を負担する場合、その負担額は原則として本人への経済的利益(給与)として課税され、源泉徴収の対象になります。負担する場合はグロスアップ計算や手取り保証(タックスイコライゼーション)の設計とセットで検討してください。体制面の整備は税務体制構築ガイドが参考になります。

08依頼前に準備する資料リスト

以下の資料を揃えてから問い合わせると、初回ヒアリングが1回で完結し、見積の精度も上がります。揃わない資料は「無い」と分かっていること自体が重要な情報です。

  • 株式報酬の付与契約書(Grant Agreement)・プラン規程——課税タイミングと按分計算の起点
  • 権利確定(ベスティング)スケジュール一覧——年別の課税額試算と給与反映の設計に必要
  • 対象社員の出入国記録——居住者判定・5年通算・按分計算の基礎資料
  • 源泉徴収簿・給与台帳(直近3年分)——レビュー範囲は税務調査の遡及と同じ3年分が目安
  • 過去の確定申告書・年末調整関係書類の控え——本人保管分を含めて所在を確認
  • 在留カードの写し・ビザ更新スケジュール——納税証明の要否と期限逆算に使用

09依頼の標準フロー——問い合わせから着手まで

標準フローは次のとおりです。他の事務所でも大きな流れは共通です。

依頼の標準フロー(問い合わせから着手まで)
  1. 問い合わせ——フォームから概要を送信(対象人数・該当サイン・希望時期を記載)
  2. 返信——2営業日以内に担当者からご連絡します
  3. ヒアリング——初回相談(30〜60分)で論点と資料の有無を確認
  4. 見積・提案——依頼範囲を「会社の論点/本人の論点」に区分して提示
  5. 契約・着手——調書・ビザ更新・出国など期限のある論点から優先着手

確定申告期(1〜3月)・年末調整期(11〜12月)は繁忙のため、期限が見える案件は90日前より早い問い合わせを推奨します。

10社内に税務担当者がいれば外部専門家は不要ですか?

国際税務は法改正が頻繁で専門性が高く、国内税務の担当者でも対応が難しいケースがあります。RSU課税・非永住者課税・租税条約の適用など、外国籍社員固有の論点は外部専門家への相談をお勧めします。

11外部専門家に相談するタイミングはいつがいいですか?

外国籍社員の採用時・RSU付与時・ビザ変更時・出国・帰任時など人事イベントのタイミングが相談の目安です。問題が発覚してからではなく、事前相談が追徴課税リスクを最小化します。

12顧問税理士に国際税務を相談できない場合はどうすればいいですか?

顧問契約はそのままに、外国籍社員の税務に限って国際税務専門の事務所にセカンドオピニオンを求めるのが現実的です。Esperanza Consulting Groupでは初回相談(スポット相談・30〜60分)で承っています。

13まとめ——診断はツールで、依頼判断は本記事で

  • 5つのサインのうち1つでも該当すれば、依頼を検討すべき段階です
  • 費用はスポット相談54,000円〜、確定申告代行160,000円〜(税別)が目安、顧問・一括対応は人数規模により個別見積です
  • 依頼範囲は会社の論点(源泉・年調・調書・体制)と本人の論点(個人の確定申告)に区分し、申告費用の会社負担は経済的利益課税に注意します
  • 準備資料は付与契約書・権利確定(ベスティング)スケジュール・出入国記録・源泉徴収簿・過去の申告書控えの5点が基本セットです
  • リスクの有無の確認は簡易リスク診断ツール、全体像は完全ガイドをご覧ください

▶ 依頼の前に社内周知から始めたい場合:英語で学ぶ 日本の確定申告セミナーを貴社で無料開催しています(英語・90分)。対象社員が自分の申告義務を理解していれば、その後の個別対応が大幅に軽くなります。

山口 淳也

この記事の監修

公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表

日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。