非永住者の課税範囲と送金課税|5年ルールの数え方と税額試算
非永住者の課税範囲と送金課税|5年ルールの数え方と税額試算
非永住者に該当する外国籍社員の課税範囲を人事・給与担当者向けに整理し、5年ルールの数え方・送金課税の充当順序・税額試算まで実務に直結する形で解説します。
最終更新日:2026年7月3日
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外国籍従業員の確定申告 代行サービスを見る ▶01非永住者とは ― 定義と判定基準
非永住者とは、所得税法第2条第1項第4号に定められた区分で、以下の2つの条件を両方満たす居住者を指します。
非永住者の定義(所得税法2条1項4号)
① 日本国籍を有していないこと
② 過去10年以内において、国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下であること
来日して間もない外国籍社員の多くは非永住者に該当します。ただし判定基準は「過去10年以内の国内在住期間の通算が5年以下かどうか」であり、「来日6年目から自動的に永住者になる」という年数ルールではありません。過去の留学・駐在等の在住歴も通算されるため、「入社から5年間は非永住者」と機械的に扱うと判定を誤ります。数え方と切替日は次章で解説します。
非永住者は「居住者」の一種です。日本に住所を有する方が対象であり、日本に住所がない「非居住者」とはまったく異なります。混同すると源泉徴収の税率(非居住者は原則20.42%の分離課税)・手続きが大きく変わるため、人事担当者は必ず区別してください。
025年ルールの数え方 ― 通算方法と切替日の判定
人事側で切替日を正確に管理できるよう、通算期間の数え方を整理します。
期間は暦に従い月・日単位で通算する
国内に住所または居所を有していた期間は、暦に従って月単位で計算し、1か月に満たない端数は日単位で数えます。在住歴が複数回に分かれている場合はこれらを合算し、30日をもって1か月、12か月をもって1年と換算します。
通算対象には、過去の留学・前職での駐在・ワーキングホリデー等の在住歴もすべて含まれます。本人の記憶に頼らず、パスポートの出入国スタンプで確認し、スタンプが揃わない場合(自動化ゲート利用等)は出入国在留管理庁への「出入(帰)国記録」の開示請求で正確な履歴を取得します。
切替日 ― 通算5年に達した日の翌日から課税範囲が変わる
在住期間の通算が5年に達すると、その翌日(=5年超となる日)から永住者(通常の居住者)として全世界所得課税に切り替わります。※本記事でいう「永住者」は所得税法上の区分(非永住者以外の居住者)の通称であり、在留資格(ビザ)の「永住者」とは別の概念です。就労ビザのままでも通算5年超で税法上の「永住者」になります。例えば2021年4月1日入国(過去の在住歴なし)で継続居住の場合、2026年4月1日に通算5年に達し、翌日の2026年4月2日以後は国外源泉所得も全額課税対象になります。
年の中途で切り替わる場合 ― 期間を区分して判定
切替は年単位ではありません。年の中途で切り替わった場合、その年分の所得は非永住者期間と永住者期間に区分し、期間ごとに課税範囲を判定します(所得税法8条)。上記の例では、2026年1月1日〜4月1日の所得は非永住者ルール、4月2日〜12月31日の所得は全世界所得課税で判定します。
永住者切替後に生じる新たな義務
国外財産調書:非永住者には提出義務がありませんが、永住者に切り替わった後は、その年12月31日時点の国外財産の合計額が5,000万円を超える場合、翌年6月30日までに「国外財産調書」の提出が必要です(提出漏れは加算税の加重等の不利益あり)。切替時の社員案内に含めてください。
国外転出時課税(出国税):将来日本を離れる際、1億円以上の有価証券等を保有していると国外転出時課税の対象となる場合があります。ただし就労系ビザなど在留資格が出入国管理法別表第一の期間は、対象者判定の「居住期間5年超」に算入されません。詳細は出国・帰任時の税務手続きで解説しています。
03非永住者の課税範囲 ― 居住者・非永住者・非居住者の3分類比較
日本の所得税法では、個人の納税義務を「居住者(永住者)」「居住者(非永住者)」「非居住者」の3つに分類しています。それぞれ課税される所得の範囲が異なります。
| 区分 | 国内源泉所得 | 国外源泉所得 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 居住者(永住者) | 全額課税 | 全額課税 | 所得税法7条1項1号 |
| 居住者(非永住者) | 全額課税 | 国内払い+送金分のみ課税 | 所得税法7条1項2号 |
| 非居住者 | 課税 | 非課税 | 所得税法7条1項3号 |
ポイントは、非永住者の国外源泉所得は「日本国内で支払われた分」と「日本に送金された分」だけが課税対象になるという点です。この「送金課税」の仕組みが、人事・給与実務を複雑にしている最大の要因です。
04国内源泉所得 vs 国外源泉所得 ― 具体例で理解する
非永住者の課税範囲を判定する際の軸は、その所得が「国外源泉所得」(所得税法95条1項に規定するもの)に該当するか否かです。代表例を確認します。
国内源泉所得の具体例(送金の有無にかかわらず課税)
日本勤務の給与
日本国内で提供した労務の対価。海外本社から海外口座に支払われていても国内源泉所得です。
日本国内の不動産所得
日本に所有する不動産からの賃料収入。
日本法人の株式配当
日本法人から受け取る配当金・利子。
国外源泉所得の具体例(国内払い・送金分のみ課税)
海外勤務対応分のボーナス
海外拠点での勤務実績に基づいて海外法人が海外で支給する賞与。
海外不動産の賃料
母国等に所有する不動産からの賃料収入。
海外預金の利息
母国の銀行口座で発生する利息収入。
海外親会社から付与されるRSU(譲渡制限付株式ユニット)は、付与日から権利確定(ベスティング)日までの勤務地の期間割合で国内・国外源泉所得に按分し、国外勤務対応分は送金課税の対象になります。按分計算の具体的な手順・源泉徴収の要否はRSU・株式報酬の課税を参照してください(本記事では按分の詳細には立ち入りません)。
個人が母国の家族と送金をやり取りするケースの具体的な線引きは、母国からの仕送りと贈与税・課税リスクの判断基準で詳しく解説しています。
なお、国外にある有価証券の譲渡益は取得時期等により非永住者でも課税対象となる場合があり、判定が特に複雑です。該当者がいる場合は個別に専門家へ確認してください。
05送金課税ルール ― 充当順序と税額試算
非永住者にとって最も重要なルールが「送金課税」です。所得税法第7条第1項第2号により、非永住者の国外源泉所得は、日本国内で支払われた分、または日本に送金された分に限り課税対象となります。
送金課税の仕組み ― 3ステップ
国外源泉所得の特定
社員が得た所得のうち、国外源泉所得に該当するものを特定します(海外口座の利息、海外不動産の賃料、海外勤務対応分の株式報酬など)。
日本への送金の確認
その年中に海外から日本国内へ送金(remittance)があったかを確認します。送金の用途や名目は問わず、金額ベースで判定します。
充当順序を踏まえた課税額の決定
送金額を充当順序(後述)に従って各所得に割り振り、国外源泉所得に充当された金額を上限として課税対象を決定します。
国内源泉所得
日本国内での勤務・事業から得た所得
→ 全額課税
国外源泉所得
海外での勤務・海外資産から得た所得
→ 国内払い+送金分のみ課税
「送金」に該当するもの(見落としやすい例)
海外口座→日本口座への振込
通常の国際送金
海外クレジットカードの日本での利用
引き落としが海外口座 = 送金とみなされる
海外口座でのデビットカード決済
日本国内での支払い = 送金に該当
「送金」の範囲
税法上の「送金」は銀行振込に限りません。以下も送金とみなされます。
- 海外の銀行口座から日本の銀行口座への電信送金
- 海外のクレジットカードで日本国内の支出を決済した場合(引き落としが海外口座)
- 海外口座から引き出した現金を日本に持ち込んだ場合
- 海外の資産を売却し、その代金を日本で受領した場合
充当順序 ― 送金はまず「国外払いの国内源泉所得」に充てられる
送金があれば直ちに国外源泉所得が課税されるわけではありません。所得税法施行令17条4項により、その年に国外から送金があった場合、送金額はまず「国外の支払に係る国内源泉所得」(法文上は「国外源泉所得以外の所得」で国外の支払に係るもの。海外払い給与の日本勤務対応分など、送金の有無にかかわらず課税される所得)に充てられたものとみなされ、それを超える部分だけが国外源泉所得の課税対象になります。
例えば、国外払いの国内源泉所得が50万円、国外源泉所得が200万円ある年に80万円を送金した場合、送金のうち50万円はまず国外払いの国内源泉所得に充当され、国外源泉所得のうち課税対象となるのは残額の30万円だけです。海外払い給与がある社員では、この順序を知らないと課税額を過大に見積もりがちです。
税額試算 ― 送金80万円でいくら課税されるか
試算の前提
非永住者Aさん。国内給与により課税総所得金額(所得控除後)が900万円超1,800万円以下のレンジ(所得税の限界税率33%)。国外源泉所得200万円(海外不動産の賃料等・総合課税の対象)、日本への送金80万円、国外払いの国内源泉所得はゼロ。必要経費・外国税額控除は考慮しません。
概算税額
課税対象に上乗せされる国外源泉所得は80万円 →
・所得税:80万円 × 33% = 264,000円
・復興特別所得税:264,000円 × 2.1% ≒ 5,500円
・住民税:80万円 × 10% = 80,000円
追加税負担の概算合計:約35万円。送金しなかった120万円はその年は課税されません。
送金額しだいで数十万円単位の追加税負担が生じるため、仕組みの説明資料を整備しておくと、外国籍社員からの問い合わせに一貫した対応ができます。
確定申告での対応 ― 「居住形態等に関する確認書」の添付
送金課税は年末調整では処理できず、確定申告での対応になります。非永住者であった期間を有する社員が確定申告を行う場合、確定申告書に「居住形態等に関する確認書(確定申告書付表)」を添付します。国籍・在留資格・過去10年の入出国履歴・送金額等を記載する様式で、申告期限は翌年3月15日(3月15日が土日の場合は翌開庁日。令和7年分は2026年3月16日(月))です。
裏付けとなる送金記録(海外口座の取引明細・海外カードの利用明細等)は本人に保存を依頼してください。税務調査で送金額を問われた際、記録がないと不利な認定を受けるおそれがあります。
06HR担当者が確認すべき5つのポイント
非永住者の課税範囲を正しく扱うために、人事担当者が入社時および毎年確認すべき項目を5つに整理します。
過去の日本在住歴を月単位で確認する
入社時ヒアリングで過去10年以内の国内在住期間の合計を月単位で確認します。留学・駐在歴も通算し、パスポートの出入国記録で裏付けを取ります。合計が5年を超えていれば永住者として扱います。
海外からの収入の有無を確認する
海外親会社からのRSU・ストックオプション、海外不動産収入、海外口座の利息など、国外源泉所得が発生する可能性がないかを確認します。
海外送金の状況を毎年確認する
年末調整の時期に、その年に海外から日本への送金があったかをヒアリングします。海外クレジットカードの国内利用も送金に含まれる点を社員に説明する必要があります。
切替日を日付で管理する
通算5年に達する日を社員ごとに把握し、その翌日から全世界所得課税に切り替わることを事前に通知します。切替年は期間区分での判定になるため、確定申告の要否も含めて個別に案内します。人事システムへのアラート登録が有効です。
年末調整で対応できる範囲を明確にする
年末調整は国内で支払われる給与所得が対象です。送金課税が絡む国外源泉所得がある年は確定申告(翌年3月15日期限)と「居住形態等に関する確認書」の添付が必要になる旨を、社員に早めに案内します。
入社時ヒアリングシートに含めるべき項目
- 国籍
- 過去10年以内の日本在住期間(月単位・留学/駐在歴を含む)
- 日本以外の国で得ている収入の有無(種類・金額は不問でよい)
- 海外銀行口座の有無
- 海外クレジットカードの日本国内使用の有無
- 海外親会社からの株式報酬(RSU・ストックオプション)の有無
自社の非永住者対応に漏れがないかは、外国籍社員の税務対応 簡易リスク診断ツールで3分程度で確認できます。
07よくある実務ミスと対策
ミス①:非永住者を非居住者として処理
「外国籍=非居住者」と思い込み、20.42%の源泉徴収税率を適用してしまう。非永住者は居住者なので、通常の累進税率で源泉徴収を行う必要がある。
対策
入社時に必ず「居住者(永住者)/居住者(非永住者)/非居住者」の3分類を判定し、給与計算システムに正しく反映する。判定が難しい場合は専門家に相談する。
ミス②:送金課税の見落とし
社員が海外から生活費を送金していることを把握せず、国外源泉所得の申告が漏れる。海外クレジットカードの国内利用が送金に該当することも見落としやすい。
対策
年末調整時に海外送金・海外カード利用の有無をヒアリングするフォームを用意する。該当がある場合は充当順序を確認のうえ確定申告を案内する。
ミス③:5年超過時の切り替え漏れ
在住期間の通算が5年を超えたにもかかわらず非永住者扱いを続けてしまい、全世界所得に対する課税が漏れる。「来日からの年数」だけで数え、過去の留学・駐在歴の通算を忘れるのも典型例。
対策
切替日(通算5年に達した日の翌日)を人事システムにアラート登録する。切替年は期間区分での判定になるため、前年のうちに社員へ通知し、確定申告の必要性を案内する。
ミス④:RSU等の国内/国外按分を怠る
海外親会社から付与されたRSUの権利確定(ベスティング)時に、全額を国内源泉所得として処理してしまう。海外勤務期間対応分は国外源泉所得であり、送金課税の対象となる。
対策
付与日・権利確定日・各期間の勤務地を記録する。按分計算の具体的な方法はRSU・株式報酬の課税を参照し、必要に応じて国際税務の専門家のサポートを受ける。
08非永住者対応チェックリスト
以下のチェックリストを使って、自社の非永住者対応が適切かを確認してください。
入社時
- 国籍と過去10年以内の日本在住歴を月単位でヒアリングしたか(留学・駐在歴含む)
- パスポートの出入国記録等で在住期間の裏付けを確認したか
- 居住者(永住者)・居住者(非永住者)・非居住者の判定を行ったか
- 海外からの収入源(RSU・不動産・利子等)の有無を確認したか
- 非永住者→永住者の切替日(通算5年に達した日の翌日)を把握し、システムに登録したか
- 給与計算システムに正しい居住区分を登録したか
年末調整・確定申告時
- 海外からの送金の有無を確認したか(海外カード利用・現金持込み含む)
- 国外源泉所得がある場合、充当順序を確認のうえ確定申告(翌年3月15日期限)を案内したか
- 非永住者期間がある社員に「居住形態等に関する確認書(確定申告書付表)」の添付を案内したか
- 非永住者から永住者への切り替えが発生していないか再確認したか(切替年は期間区分で判定)
- RSU等の株式報酬が権利確定している場合、按分計算を行ったか
- 永住者切替後、国外財産5,000万円超の社員に国外財産調書(翌年6月30日期限)を案内したか
09まとめ
非永住者の課税範囲は、人事担当者にとって最も判断を誤りやすい領域のひとつです。特に以下の3点が実務の要点です。
- 非永住者は「居住者」の一種 ― 非居住者と混同しない
- 判定は過去10年以内の在住期間の通算 ― 通算5年に達した日の翌日から全世界所得課税。年の中途の切替は期間区分で判定
- 国外源泉所得は「国内払い+送金分」のみ課税 ― 送金はまず国外払いの国内源泉所得に充当され、カード利用・現金持込みも送金に含まれる
送金課税の充当順序・RSUの按分・切替日の管理は互いに絡むため、該当する社員がいる場合は確定申告期限から逆算して早めに国際税務の専門家へ確認することをお勧めします。
なお、海外からフルリモート勤務する外国籍社員は、そもそも非居住者に該当して源泉徴収・課税関係が本記事の前提と大きく異なる場合があります。該当者がいる場合は出国・帰任時の税務手続きと税務体制構築ガイドを参照のうえ、早期に専門家へ相談してください。
※ 記事内容の正確性には最大限注意を払っておりますが、法令改正等により内容が変更される場合があります。個別の税務判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。
よくある質問

公認会計士・税理士・行政書士 山口 淳也/ ESPERANZA CONSULTING GROUP 代表
日本および海外のBIG4監査法人・税理士法人・FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)にて、クロスボーダー税務・M&A・海外進出支援・国家プロジェクトなどの実務に従事。セミナー登壇多数。税務・会計・法務の専門的観点から、企業のグローバル展開や経営課題を多面的にサポート。


