非永住者の課税範囲と送金課税|海外送金・海外口座がある社員対応【HR外国籍税務④】
【HR外国籍税務④】非永住者の課税範囲|海外送金・海外口座がある社員への対応ガイド
非永住者に該当する外国籍社員の課税範囲をHR視点で整理。送金課税の判定・年末調整の注意点・実務ミスの防止策を解説します。
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別A:専門家に依頼すべき5つのサイン | 別B:簡易リスク診断
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- 非永住者(在日5年以下)は国外所得のうち日本送金分が課税対象
- クレジットカードの海外口座引落としも「送金」に該当する場合がある
- 居住者区分の変更タイミングをHRが把握し、源泉処理を切り替える
外国籍社員のなかには、税法上「非永住者」に分類される方がいます。非永住者の課税範囲は居住者・非居住者とは異なり、HRが正しく理解していないと源泉徴収や年末調整で誤りが生じるリスクがあります。本記事では、非永住者の定義から送金課税ルール、HR担当者が確認すべきポイントまでを実務目線で整理します。
この記事の内容
1. 非永住者とは ― 定義と判定基準
非永住者とは、所得税法第2条第1項第4号に定められた区分で、以下の2つの条件を両方満たす居住者を指します。
非永住者の定義(所得税法2条1項4号)
① 日本国籍を有していないこと
② 過去10年間のうち、日本に住所または居所を有する期間が5年以下であること
つまり、外国籍の社員が来日して最初の5年間は「非永住者」に該当する可能性が高く、6年目以降は「永住者(通常の居住者)」に移行します。ただし、過去に日本在住歴がある場合は通算されるため、再来日のケースでは注意が必要です。
非永住者は「居住者」の一種です。日本に住所を有する方が対象であり、日本に住所がない「非居住者」とはまったく異なります。混同すると源泉徴収の税率・手続きが大きく変わるため、HR担当者は必ず区別してください。
2. 非永住者の課税範囲 ― 居住者・非永住者・非居住者の3分類比較
日本の所得税法では、個人の納税義務を「居住者(永住者)」「居住者(非永住者)」「非居住者」の3つに分類しています。それぞれ課税される所得の範囲が異なります。
| 区分 | 国内源泉所得 | 国外源泉所得 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 居住者(永住者) | 全額課税 | 全額課税 | 所得税法7条1項1号 |
| 居住者(非永住者) | 全額課税 | 送金分のみ課税 | 所得税法7条1項2号 |
| 非居住者 | 課税 | 非課税 | 所得税法7条1項3号 |
ポイントは、非永住者の国外源泉所得は「日本に送金された部分」だけが課税対象になるという点です。この「送金課税」の仕組みが、HR実務を複雑にしている最大の要因です。
3. 国内源泉所得 vs 国外源泉所得 ― 具体例で理解する
非永住者の課税範囲を正しく判定するには、「その所得が国内源泉所得か国外源泉所得か」を区分する必要があります。所得税法第161条に国内源泉所得の定義が列挙されています。
国内源泉所得の具体例
日本勤務の給与
日本国内で提供した労務の対価。海外本社から支払われていても国内源泉所得。
日本国内の不動産所得
日本に所有する不動産からの賃料収入。
日本法人の株式配当
日本法人から受け取る配当金・利子。
国外源泉所得の具体例
海外子会社からのボーナス
海外拠点での勤務実績に基づいて海外法人が支給するボーナス。
RSU・海外株式報酬
海外親会社のRSUのうち、海外勤務期間に対応する部分は国外源泉所得。日本勤務期間対応分は国内源泉所得。
海外預金の利息
母国の銀行口座で発生する利息収入。
RSU(譲渡制限付株式ユニット)は、付与日からベスト日までの勤務地の割合で国内源泉所得と国外源泉所得を按分します。来日前に付与されたRSUが来日後にベストする場合、全額が国内源泉所得にはなりません。詳細は記事③ RSU・株式報酬の課税をご覧ください。
4. 送金課税ルール ― 国外源泉所得はいつ課税されるか
非永住者にとって最も重要なルールが「送金課税」です。所得税法第7条第1項第2号により、非永住者の国外源泉所得は、日本国内で支払われた分、または日本に送金された分に限り課税対象となります。
送金課税の仕組み
国外源泉所得の特定
社員が得た所得のうち、国外源泉所得に該当するものを特定します(海外口座の利息、海外不動産の賃料、海外勤務対応分の株式報酬など)。
日本への送金の確認
その年中に海外から日本国内の口座へ送金(remittance)があったかを確認します。送金の用途や名目は問わず、金額ベースで判定します。
課税額の決定
国外源泉所得のうち、送金額を上限として日本で課税されます。送金額が国外源泉所得を超える場合でも、課税は国外源泉所得の金額が上限です。
具体例:非永住者Aさんの国外源泉所得が年間200万円、日本への送金額が年間80万円の場合 → 課税対象は80万円。送金しなかった120万円は日本では非課税。
「送金」の範囲
税法上の「送金」は銀行振込に限りません。以下も送金とみなされます。
- 海外の銀行口座から日本の銀行口座への電信送金
- 海外のクレジットカードで日本国内の支出を決済した場合
- 海外口座から引き出した現金を日本に持ち込んだ場合
- 海外の資産を売却し、その代金を日本で受領した場合
5. HR担当者が確認すべき5つのポイント
非永住者の課税範囲を正しく扱うために、HR担当者が入社時および毎年確認すべき項目を5つに整理します。
過去の日本在住歴を確認する
入社時ヒアリングで「過去10年間に日本に住所または居所を有した期間の合計」を確認します。留学や前職での駐在を含む合計が5年を超えていれば、非永住者ではなく永住者扱いになります。
海外からの収入の有無を確認する
海外親会社からのRSU・ストックオプション、海外不動産収入、海外口座の利息など、国外源泉所得が発生する可能性がないかを確認します。
海外送金の状況を毎年確認する
年末調整時に、その年に海外から日本への送金があったかをヒアリングします。海外クレジットカードの利用も含まれる点を社員に説明する必要があります。
非永住者→永住者への切り替え時期を管理する
日本在住期間が通算5年を超える年を把握し、その年から全世界所得課税に切り替わることを社員に事前に通知します。確定申告の必要性が変わるためです。
年末調整で対応できる範囲を明確にする
年末調整は国内源泉所得(給与所得)が対象です。送金課税が絡む国外源泉所得がある場合は、確定申告が必要になるケースがあるため、社員にその旨を案内します。
入社時ヒアリングシートに含めるべき項目
- 国籍
- 過去10年間の日本在住期間(年月単位)
- 日本以外の国で得ている収入の有無(種類・金額は不問でよい)
- 海外銀行口座の有無
- 海外クレジットカードの日本国内使用の有無
- 海外親会社からの株式報酬(RSU・ストックオプション)の有無
6. よくある実務ミスと対策
ミス①:非永住者を非居住者として処理
「外国籍=非居住者」と思い込み、20.42%の源泉徴収税率を適用してしまう。非永住者は居住者なので、通常の累進税率で源泉徴収を行う必要がある。
対策
入社時に必ず「居住者/非永住者/非居住者」の3分類を判定し、給与計算システムに正しく反映する。判定が難しい場合は専門家に相談する。
ミス②:送金課税の見落とし
社員が海外から生活費を送金していることを把握せず、国外源泉所得の申告が漏れる。海外クレジットカードの利用が送金に該当することも見落としやすい。
対策
年末調整時に海外送金・海外カード利用の有無をヒアリングするフォームを用意する。該当がある場合は確定申告を案内する。
ミス③:5年超過時の切り替え漏れ
日本在住期間が5年を超えたにもかかわらず、非永住者扱いを続けてしまう。結果として全世界所得に対する課税が漏れる。
対策
人事システムに「非永住者→永住者切替予定日」をアラート登録しておく。切り替え年度の前年に社員へ通知し、確定申告の必要性を案内する。
ミス④:RSUの国内/国外按分を怠る
海外親会社から付与されたRSUのベスト時に、全額を国内源泉所得として源泉徴収してしまう。海外勤務期間分は国外源泉所得であり、送金課税の対象となる。
対策
RSUの付与日・ベスト日・各期間の勤務地を記録し、按分計算を行う。国際税務の専門家のサポートを受けることを推奨。
7. 非永住者対応チェックリスト
以下のチェックリストを使って、自社の非永住者対応が適切かを確認してください。
入社時
- 国籍と過去10年間の日本在住歴をヒアリングしたか
- 居住者(永住者)・居住者(非永住者)・非居住者の判定を行ったか
- 海外からの収入源(RSU・不動産・利子等)の有無を確認したか
- 非永住者→永住者の切替予定時期を把握したか
- 給与計算システムに正しい居住区分を登録したか
年末調整時
- 海外からの送金の有無を確認したか(海外カード利用含む)
- 国外源泉所得がある場合、確定申告の必要性を案内したか
- 非永住者から永住者への切り替えが発生していないか再確認したか
- RSU等の株式報酬がベストしている場合、按分計算を行ったか
8. まとめ
非永住者の課税範囲は、HR担当者にとって最も判断が難しい領域のひとつです。特に以下の3点を押さえておきましょう。
- 非永住者は「居住者」の一種 ― 非居住者と混同しない
- 国外源泉所得は送金分のみ課税 ― 送金の範囲にはカード利用・現金持込みも含まれる
- 5年超過で永住者に切り替わる ― 切替時期の管理と社員への事前通知が重要
送金課税の判定やRSUの按分計算は複雑なため、該当する社員がいる場合は、国際税務の専門家に確認を取ることをお勧めします。
フルリモート勤務の外国籍社員への注意
近年増加している海外からのフルリモート勤務の外国籍社員については、以下の点に特に注意が必要です。
- 勤務地が海外の場合:日本の非居住者に該当する可能性があり、源泉徴収率や年末調整の対象が変わります
- 183日ルール:租税条約上の短期滞在者免税の適用可否にも影響します
- 社会保険の適用:海外リモートの場合、日本の社会保険が適用外になるケースがあります
- PE(恒久的施設)リスク:海外で継続的に業務を行うことで、現地にPEが認定されるリスクがあります
→ フルリモート外国籍社員がいる場合は、居住者区分と課税関係の整理を専門家に早期相談することを推奨します。
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※ 記事内容の正確性には最大限注意を払っておりますが、法令改正等により内容が変更される場合があります。


