人事が押さえるべき論点:外国人労働者の「業務委託か雇用か?」誤分類と税務リスク
※本記事は、外国人社員の税務対応に関する基礎編として、人事担当者が押さえておきたい要点を解説します。
はじめに:見落としがちな契約リスクと背景
外国人のフリーランスを業務委託契約で受け入れている企業にとって、見落としがちなのが「実態は雇用だったのでは?」というリスクです。契約書のタイトルが「業務委託」でも、実態が社員同様であれば、税務署や労働基準監督署は“雇用”とみなします。すると、源泉徴収漏れや社会保険の未加入、入管法上の責任まで企業側に波及する可能性があります。
本コラムでは、「業務委託か雇用か?」の判断基準と、誤分類による税務・労務・入管リスクを整理し、適切な対策とともにご紹介します。
業務委託と雇用契約の判断基準
以下のような条件に該当する場合は、たとえ「業務委託契約書」を交わしていても、実態としては雇用契約と判断される可能性が高くなります。
- 指揮命令を受けて働いている
- 勤務時間・場所が指定されている
- 月給・時給など定額制で報酬を受けている
- 自社の備品・システムで働いている
- 他社の仕事をしていない(専属)
行政や裁判所は「形式」よりも「実態」で判断するため、契約書の文言だけではリスク回避できません。
誤分類が招く主なリスク
① 税務リスク(源泉徴収・損金否認)
外注費として処理していた支払いが給与扱いと判断されると、源泉所得税の納付漏れを指摘され、数年分の追徴課税が発生します。また、損金算入や消費税の仕入税額控除も否認される可能性があります。
② 社会保険・労務リスク
実質的に雇用と判断されれば、健康保険・厚生年金の加入義務が発生します。労災や残業代未払いなどで後に訴訟に発展したケースもあります。
③ 入管(ビザ)リスク
契約内容が在留資格の範囲を超えていたり、本人が税務申告できていなかったりすると、ビザの更新に支障が出ることがあります。企業が“事実上の雇用主”と認定されると、不法就労助長の責任が問われることも。
実例:税務調査で業務委託が否認されたケース
ある外資系企業では、外国人デザイナーに業務委託契約で報酬を支払っていました。ところが税務調査で「就業実態は社員と同じ」と判断され、数年分の未納源泉税と加算税を追徴。さらに、年金事務所から社会保険未加入の是正を求められ、結果として数百万円規模の支出と社内対応コストが発生しました。
こうしたリスクを防ぐためのチェックポイント
- 業務指示が具体的すぎないか?
- 就業時間や場所を指定していないか?
- 報酬が固定(月給)になっていないか?
- 自社のメールアドレス・設備を与えていないか?
- 他社との業務を制限していないか?
一つでも該当する場合は、契約の見直しを検討すべきです。
企業が今すぐできる実務対策
- 契約書の記載内容と運用実態を統一する
- 請求書による支払い、成果物ベースの対価設定へ見直す
- 非居住者には20.42%の源泉徴収を適切に行う
- 社内で「指揮命令しない」運用ルールを明確化
- 在留資格の範囲内で業務を委託しているか確認
- 必要に応じて社労士・行政書士とも連携して法令順守
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