外国人起業家シリーズ 第1回:なぜ今、日本で起業するべきか――その魅力と全体像

外国人起業家シリーズ 第1回:なぜ今、日本で起業するべきか――その魅力と全体像

海外在住の皆さん、日本で起業することを考えたことはありますか?近年、日本はグローバルな起業家にとって注目すべきフィールドとなりつつあります。第1回となる本稿では、「なぜ今、日本で起業するべきなのか」「日本で起業する魅力とは何か」を俯瞰し、これから日本で挑戦しようとする外国人起業志望者に向けて全体像を解説します。

経営管理ビザ取得を前提とした会社設立から事業開始までの大まかな流れにも触れ、シリーズ後半で詳しく解説する各トピックへの予告も交えながら、皆さんの行動意欲を高めていきます。

世界第3位の経済規模と安定した市場環境

日本は世界第3位の経済大国であり、一人当たりGDPも高水準にあります。1億2千万以上の人口を抱える国内市場は規模が大きく消費意欲も旺盛で、製品・サービスを提供する土壌として非常に魅力的です。

また法制度が整い治安も良く、知的財産の保護もしっかりしているため、ビジネスを展開する上で安定感と信頼性のある環境と言えます。さらに近年は円安傾向も相まって、海外から見て日本の物価や人件費が相対的に割安となり、事業コスト面でのメリットも感じられるでしょう。

こうした安定市場と経済規模の大きさは、日本で起業する何よりの土台となります。

人口減少社会が生むビジネスチャンス

日本は現在、少子高齢化による人口減少という大きな社会課題に直面しています。2024年には、日本人の人口が前年より約89万人も減少し、1950年以降で最大の落ち込みを記録しました。

労働力人口の縮小により、さまざまな業界で人材不足が深刻化しており、その一方で高齢者向けの医療・介護・生活支援などの需要は右肩上がりです。つまり、この構造的課題そのものが、新たなビジネスチャンスを生み出しているのです。

外国人起業家は、自国の視点や経験を活かし、日本の市場にはまだないサービスや技術を提供することで、こうした社会課題を解決する存在になり得ます。課題=機会。それが、今の日本のリアルです。

政府のスタートアップ支援強化と“今”だからこその追い風

日本政府は近年、スタートアップ支援に本腰を入れています。スタートアップ育成5か年計画では、2027年までにスタートアップ投資額を10兆円規模に拡大し、ユニコーン企業100社の創出を目指しています。

こうした中、外国人起業家を受け入れる制度も拡充しています。なかでも代表的なのが「経営・管理ビザ」で、事務所契約・資本金500万円・法人登記・事業計画書といった条件を整えることで、日本で法人を設立し、自ら代表者として長期在留することが可能になります。

補足として「スタートアップビザ」という制度も存在します。これは一時的にビザの要件を緩和し、起業準備のための最長2年の在留を可能とする制度ですが、あくまで一部自治体の支援事業であり、最終的には経営・管理ビザに切り替える必要があります。

つまり、日本政府は本気で「起業しやすい国」を目指しており、今まさに外国人起業家にとって“歴史的な好機”が訪れているのです。

外国人だからこそ活躍できるビジネス領域

外国人起業家には、日本人にはない語学力・ネットワーク・異文化理解という武器があります。これを活かせる分野は非常に多く存在します。

たとえば、日本企業と海外人材を結ぶグローバル人材紹介は、人手不足の日本において最も注目されている分野のひとつです。実際に外国人による人材紹介会社が増えており、母国語・文化理解・採用支援ノウハウを持つことで、日本企業との信頼関係を築きやすいのです。

また、コロナ禍以降急増しているのがインバウンド観光・地域ツーリズムです。外国人観光客の急増により、多言語対応ガイド・地域体験ツアー・グローバル向け宿泊施設など、外国人目線でのビジネスが歓迎されています。

その他にも、海外商品を日本市場に紹介する輸入ビジネス、自国文化を活かした飲食・教育・語学スクールなど、外国人だからこそ差別化できるモデルが多数存在します。

つまり、日本市場では「外国人であること」が明確な競争優位性になり得ます。あとは、それを事業計画と許認可・ビザ要件に沿った形で実行できるかが鍵となります。

日本で起業するまでのステップ(全体像)

このシリーズの第2回以降では各ステップを詳しく解説しますが、ここでは経営・管理ビザを取得して日本で事業を始めるまでの全体像を簡単にご紹介します。

  1. 事業計画の準備:ビジネスの内容・対象顧客・収益モデル・3年分の財務計画などを策定。
  2. 日本法人の設立:株式会社または合同会社を設立し、資本金500万円以上を払い込み、事業所を確保。
  3. 経営・管理ビザ申請:会社登記後に必要書類を揃え、在外公館または入管に申請。
  4. 事業開始:許認可、税務署・年金・保険の届出を行い、事業を本格スタート。

補足として、もし法人設立や拠点確保が困難な場合は「スタートアップビザ」という制度を使い、起業準備期間を設けた上で正式なビザへと移行する方法もあります(ただし利用可能地域・審査基準に制限あり)。

専門家との連携が起業成功の鍵

ここまで読んで「手続きが多くて不安だ」と思った方、ご安心ください。今では、外国人起業家をワンストップで支援できる士業チームが多数存在しています。

会社設立、ビザ申請、事業許可、税務署対応、社会保険、労務体制整備……これらを1つの窓口で一貫してサポートすることで、あなたは本来注力すべき「ビジネス構築」に集中できます。

逆にこれらの対応を怠ると、ビザ更新に失敗したり、思わぬ税務ペナルティを受けたり、許可が下りずに営業停止という事態にもなりかねません。餅は餅屋。日本での起業は、専門家とタッグを組んでこそ成功します。

まとめ:日本市場での挑戦に、いまこそ踏み出そう

日本市場は、安定性・変革機運・政府支援・社会課題という4つの要素が重なり、外国人起業家にとって今が最良のタイミングです。

本シリーズの次回からは、経営・管理ビザの実務(第2回)会社設立と許認可(第3回)設立後の運営と顧問体制(第4回)と続きます。

あなたの挑戦が、日本と世界をつなぐ新たな架け橋となることを、私たちも心から願っています。