非居住者株主が日本法人を設立したときに必要な「外為法事後報告」とは?

非居住者株主が日本法人を設立したときに必要な「外為法事後報告」とは?

⚠ 注意喚起:
日本に会社を設立する際、非居住者(外国人株主)が関与している場合には、
外為法に基づく「事後報告」を提出しなければなりません。
しかしこの手続きは設立登記と違い見落とされやすく、未提出のまま放置されるケースが少なくありません。

通常であれば、設立した本人が自ら「各種手続きに漏れがないか」を気にして管理しなければならず、その負担やリスクは決して小さくありません。

はじめに:見落とされがちな外為法手続き

会社法や登記の手続きは比較的認知されていますが、意外と見落とされやすいのが、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく「事後報告」です。

残念ながら、専門家であってもこの規定を十分に理解していないケースは少なくありません。
設立登記時に説明されない、あるいは株主構成を検討する段階で考慮されないまま会社を設立し、結果的に事後報告が未提出のまま時間が経過してしまう事例も現実に見受けられます。

また、設立業務に関しては司法書士・行政書士・税理士といった各専門家が主に関与しますが、残念ながらこの業界のよくないところとして、多くの専門家は自分たちの専門範囲以外には一切関与しない「ノールック体質」を抱えています。
結果として「登記だけ」「設立だけ」で業務を終えてしまい、その後の外為法事後報告のような横断的手続きは誰もフォローしないことが少なくありません。

さらに重要な現実:
日本政策金融公庫の調査によれば、日本の中小企業経営者のうち海外出身の外国人経営者は全体のわずか
0.744%(約2万7,000人)に過ぎません。
つまり、外国人設立登記の案件を日常的に扱っている専門家は非常に少なく、経験不足から見落とされやすいのです。

そのため、特に格安登記センターや低価格の登記請負を行う専門家では、この外為法の観点がまず考慮されていないことが多く、
安さを優先して依頼した結果、外為法違反リスクを抱えたまま会社を運営してしまう落とし穴に陥る可能性があります。

この隙間を埋めるかたちで中国系の仲介業者が活躍していますが、通常あまりに高額であるうえ、
結局は「設立が終わればタッチしない」ため、外為法や税務・労務のリスクが残るのが実情です。

対象となる取引の具体例

非居住者が日本法人を設立すると、結果的に株式や持分を取得することになります。
この場合、外為法上の「対内直接投資」に該当し、会社設立から一定期間内に事後報告を行わなければなりません。

「株式、持分、議決権若しくは議決権行使等権限の取得又は株式への一任運用に関する報告書」
(外為法第55条関係・事後報告)

提出を怠った場合のリスク

  • 外為法違反として罰則や過料の対象となる可能性
  • 銀行口座開設や行政手続での審査において不利に働くケース
  • 将来的なビザ申請や補助金申請における信頼性低下

特に銀行口座開設においては、外国人投資家によって設立された会社はもともと難しい傾向にあります。
そこに事後報告の未提出が重なると、銀行から「制度を理解していない=コンプライアンス不備」と見られ、審査で不利に働く要因となり得ます。

まとめ:外為法手続きは早めに専門家へ相談を

非居住者株主による日本法人設立は珍しくなくなりましたが、外為法事後報告の失念は依然として多いのが実情です。
一度怠ると修復に時間とコストがかかり、場合によっては行政対応に追われるリスクもあります。

「設立登記が完了した=安心」ではありません。
設立とビザの取得は、終わりではなく本当の始まりです。
必要であれば、できるだけ早い段階で専門家に確認しておくことをおすすめします。

当事務所では、
設立前の段階で、数年先を踏まえた各手続きのコンサルティングから、会社設立後に必要となる各種手続きを一切漏れなく、包括的かつ効率的にサポートいたします。
そして、同じ有資格の担当者が責任を持って最後まで対応する決まりなので、設立前から安心感と信頼感をもってスタートが切れることをお約束しております。